結婚しよう
「シャロンのこと……好き」
俯いたナコが赤くなった顔を隠しながら呟く。
小さな声だったが、確かに好きと聞こえた。
とても嬉しい。しかし、この喜びをどの様に表現すれば良いのか、まだよくわからない。
「そうか」
「うん」
ナコと見つめ合っていると、なんだか胸のあたりが熱くなって来た。……私の顔も赤くなっていたりしないだろうか。
「死んでも生まれ変わってもずっと一緒に居てくれるか?」
「うん、シャロンとずっと一緒に居たい」
良かった。今度は無事にナコを助けられる。それに、ナコとまだずっと一緒に居られる。
「この指輪を受け取ってくれ」
「指輪って、それってぷ、プロポーズ!?」
プロポーズ……そういえば、結婚を申し込む時には指輪を贈るらしいな。結婚というのはつまり一生を共に過ごし、愛し合うという誓いらしい。
ふむ、まあ魂を繋ぐというのは、一生か永遠かの違いはあるが、結婚することと似たようなものだろうか。
「この指輪をナコが着けると、私とナコの魂が繋がれる」
「魂? それってどうなるの?」
よくわからないといった様子でナコが首をかしげた。
「ずっと、永い間離れられなくなるが、ナコが急に眠ってしまう事は無くなる」
「それでわたしがシャロンのこと好きか聞いたの?」
「それもあるが、純粋に確かめたかったからでもある」
この気持ちは本物だ。
「私はナコが好きだ」
「う、うん」
またナコが顔を赤くしている。どうやら好きだと言われるのがとても恥ずかしいらしい。
「ナコ、結婚しよう」
「え!? 本当に結婚指輪だったの?」
「私の妻になってくれるか?」
勢いに任せて言ってしまった。
「お嫁さんに、なれるの……?」
「ああ、二人で幸せに成ろう」
「お、お願いします」
ナコのことはきっと幸せにしてみせる。
「さあ、それじゃあキスをしようか」
「き、き、キス!?」
「結婚の時にするものだと……」
本で読んだが間違っていただろうか?
「えっと、でもまだ心の準備が、えっと、あの……」
「無理にとは言わないが、私とするのは嫌か?」
「そうじゃなくて……あの、ね……」
ナコは大きく首を振ると一歩近付いて来た。
密着しそうなほど近付いて、ナコの顔が見えなくなる。
「キス、して?」
顔を上げ、上目遣いに見つめられて、何だか頭が沸騰した様な感覚になる。
ナコの事しか考えられない。
もっとナコの事を考えていたい。一緒に居たい。抱きしめて離したくない。
ナコが背伸びをして顔を近付けてくる。
私もナコを支えながらゆっくりと顔を近づけていく。
目を閉じたナコと唇を重ね合わせる。
唇と唇が触れ合った瞬間、そのあまりの柔らかさに全身の力が抜けそうになる。
「んっ」
漏れた吐息が唇を撫でた。
ずっとこうしていたい。そうできればどんなに良いだろうか。
「…………」
しばらくすると、ナコが唇を離した。
抱き合ったまま見つめ合う。
「シャロン、好き……」
その言葉にまた何かが込み上がってきて、もう一度、今度は少し激しく唇を押し付けた。
「んんっ、しゃろ……んっ!」
ナコが少し苦しそうに動いたので力を弱めたが、今度はナコが強く抱きついてくる。
本当に、何時までもこうしていられれば良いのに。
その後しばらく続けていたが、やがてナコが眠りについてしまった。
指輪の事など完全に忘れてしまっていた。
勝手に着けてしまっても良いのだろうか。
やはり起きてからにするべきだろうか。
しばらく悩んでいると、部屋の扉がノックされた。




