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眠り姫

 そういえば、ナコからは返事を貰っていないのだったな。ナコはわたしの事をどう思っているのだろうか。

 ナコの寝顔を覗き込むが、まだ起きそうに無い。部屋の中を確認しておくか。

 机の上には『この部屋の中の物はご自由にお使い下さい』と書かれたメモがある。引き出しの中は、ノートとペンか。学園の物とは少し違うようだ。他には特に気になる物は無い。

 ノートに何か書いて時間をつぶすことにしよう。何を書こうか。ナコを描こうか。




 ナコの寝顔を描いていたら、ナコが目を覚ましたようだ。


「おはよう、ナコ」


「おはよう。……あれ、ここどこ?」


 ナコが慌てて目を擦る。

 起きて見知らぬ部屋にいたら、驚くのは当然か。


「ここは日ノ下の国だ」


「あ、わたしまた寝ちゃって……」


 運び方がお姫様抱っこだったということは黙っておこう。


「疲れていたんだろう」


「そうかな? でも、朝起きてからあんまりたってないのに、立ったまま寝ちゃうなんてあるのかな?」


「私が無理をさせてしまっていたんだろうか?」


 魔力を使わせたのが良くなかっただろうか。それとも、私といると疲れるのだろうか。


「違うよ、シャロンのせいじゃないよ!」


「本当にそうか?」


 無理をしているんじゃないのか?


「わ、わたしのことが、し……」


 言葉に詰まって、顔も若干赤い。やはり具合が良くないのか?


「信じられないの?」


 !


「すまない、ナコ。そんなつもりはなかったんだ。許してくれ」


 最大限の謝罪の意を込めて額を床につける。私としたことが、失敗してしまった。


「あ、ええっと、わ、わたしもそんなつもりじゃ、なくって……言ってみただけで……えっと……」


 ナコを困らせてしまった。怒っていた訳では無いようだが、どうするべきだろうか。


「あれ、これってわたし?」


 ナコが手に取ったのは先程のノートだ。描きかけだったのだが。


「すごい、シャロンって絵も上手なんだ」


「そうか? まだ描きかけなのだが」


 絵を描いておいてよかった。


「描きかけでこんなに? すごい、けど……」


「ん、どうしたんだ?」


 何かおかしなところがあっただろうか。


「わたしが寝てるの、ずっと見てたの?」


「ああ、寝ている間は見ていたが」


「うぅ……変なこととか言ってなかった?」


 変なことか、言っていたな。


「魔法少女ラブリーナコが……とか、怪人ワルモノーめ……とか」


「忘れて!」


「ナコ?」


 布団に潜ってしまった。……言わない方が良かっただろうか。



 布団から出てきたナコに話を聞くと、魔法少女の夢を見て寝言を言っていたらしい。

 魔法少女……好きなのだろうか。

 ナコの知っている魔法少女は妖精に力を借りて変身していたらしい。


「つまり、ナコも魔法少女ということか」


 妖精ではないが、召喚した兎に力を借りて変身していたしな。


「でも、そしたら世界がピンチってことなのかな?」


「なぜそうなるんだ?」


 なんだかぼうっとした顔をしているな。まだ眠たいのだろうか?


「えっと、世界がピンチだから魔法少女が生まれたって」


「それはその物語の中の話なのだろう?」


「あ、そっか。なんかまだ夢を見てるみたい……」


 世界の危機など二度と起きては欲しくないな。


「大丈夫か? もう少し休んでいた方がいいんじゃないか?」


「ううん、ちょっと顔を洗いに……あっ……」


 ナコが立ち上がろうとしてふらついた。


「おっと、連れていこう」


 倒れそうだったのを支えて、そのままお姫様抱っこをする。


「うん、ありがとう」


 本当に大丈夫だろうか? ……シチを呼ぶか。

 鈴を鳴らすと、いきなり戸が開いた。まるで鈴が鳴るのを待っていたかのようだ。


「呼んだかな?」


「速いな」


 鳴らした直後に出てくるとは……。すぐそこにいたのだろうか? 気配に気付かなかったからわからないな。


「どうしたのかな?」


「ナコが顔を洗いたいと言ってだな。連れていこうにも場所がわからないから、シチに聞こうと思って鈴を鳴らしたんだ」


 この城はかなり広いようだ。迷いはしないとしても、目的地を探し出せそうにない。


「それはいいけど、ナコちゃん寝てるみたいだよ?」


「なに」


 本当だ。私の腕のなかで眠ってしまっている。いったいどうしたのだろうか。

 愛を伝えた後に特に酷くなってしまった。ということは、私のせいだろうか?


「……シャロン。気になることがあるから、ナコちゃんを調べさせて欲しいんだけど、いいかな?」


「気になる事とは何だ」


「もしかしたら、眠っているのには理由が有るかもしれないんだよ」


「どんな理由が有るんだ?」


「ナコちゃんの体は、たぶん、自分の力に耐えられてないんじゃないかな」


「……どういう事だ?」


「詳しいことはちゃんと検査しないとわからないよ」


 正直、シチやイヴのことは完全に信じている訳ではない。検査と言って何をされるかわからない。

 この国は王国よりも遥かに大きな得たいの知れない力を持っているようだし、警戒は必要だろう。例えナコと同じ世界から来たものがいるとしても。


「このままでは危ないのか?」


「その可能性は高いかな」


 だが、このままでは本当にナコが危ないかも知れない。もしかしたら眠ったままになってしまうかも知れない。


「……見張っているから、おかしな事はするなよ」


「アハハ、ボクは争いごとは苦手なんだよ」


 どうだかな。得体の知れない奴だ。


「妙な真似をしなければいいさ」


「うん。せっかく会えたから、キミに手伝って欲しいことが有るんだ」


 交換条件というやつか?


「ナコを助けてくれれば、何でもするさ」


「アハハ、よろしく頼むよ」


「あまり妙な事でなければいいがな」


 ナコ……大変な事にならなければいいが……。

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