今度は本当の愛を
今日は日ノ下の国へ行く日だ。皆ともしばらくお別れだけど、またいつかここに来たいな。
学院の寮にいる最後の時間に、少ない荷物をゆっくりまとめながらシャロンと話していた。
「ねぇ、シャロン」
聞いていいのかわからないけど、わたしには少しだけ気になることがあった。
「なんだ?」
「昨日の夜、どこに行ってたの?」
目が覚めたらシャロンがいなくて、わたしはこわくなった。そんなわけ無いのに、シャロンがわたしをおいて行っちゃったとか、世界にわたし一人だけになったような気がした。
「すまない」
「あっ、えと、怒ってるんじゃなくて……」
さみしかったとか、一人がこわいなんて恥ずかしくて言えない。
「本を読みに行っていたんだ。お陰で色々わかったし、もうこんな事はしないと約束する」
「……ごめんなさい」
「どうして謝るんだ?」
「わたし、シャロンがやりたいことをやってほしい」
でも、わたしは邪魔ばっかりで、役に立ててない。……涙が出てきちゃった。
「ど、どうしたんだ、ナコ?」
今もこうやってシャロンを困らせて、どうすれば良いんだろう。
「なあナコ。私がやりたいことはな、ナコと一緒にこうやっていられるだけで良いんだ」
「でも、うく、でも……しゃろ……」
ちゃんと喋れないよ。
「前に城の風呂で、私がお前のことを愛していると言っただろう?」
あのとき……うぅ、顔が熱くなってきた。
「あの時私は、愛の意味なんて知らずに適当に答えてしまったんだ」
「そ、そうなん……だ……ひっく」
それじゃあ……。
「だから、もう一度言わせてほしい」
「え?」
「ナコ、愛しているよ。今度こそ、本当に」
「わたし、……わたしは、シャロン……」
ああ、もう口が開かない……ちゃんと言いたかったのに。こんな……ときに、ねむ……。
「だからもっと頼って、甘えてくれ」
わたしが倒れると、シャロンはやさしく受け止めてくれた。シャロンは強くて、優しくて、かっこよくて……。
いつかわたしも言わないと。
でも、まだ少しだけ勇気が出るまで待っていてほしい。もう少しだけ、甘えさせて……。




