穏やかなカフェで、あーん
カフェは客の派手な服装以外は落ち着いた静かな店だった。店内窓側の席に座り、一息つく。
「やっぱ緊張するよ、こんなお店初めてだし」
「わ、わたしも」
ナコとマリーは緊張して固まっているが、ファルナは優雅にくつろいでいる。私はいつも通りだ。
「何を頼もうかしら」
「私はわからないからファルナに任せる」
「ナコちゃんは?」
「あ、わたしも任せるね」
「あたしはこれにしようかな」
「それじゃ注文するわ」
ファルナがウェイトレスを呼び、料理と飲み物を注文した。どんな物が来るのだろうか?
「ファルナって本当にお嬢様だったんだ、ちょっとお嬢様っぽいなって思ってたんだけど」
「私はなるべく普通に見えるようにしていたのだけれど、だめだったかしら」
「あたしもファルナみたいにお金持ちだったらなぁ」
「マリーの家は裕福では無いのか?」
「うん、あたしの家は貧乏だからちゃんとした仕事に就きたくて学院に入ったんだ」
「マリーはもっとのんびりすればいいのに」
「あたしはファルナみたいに才能もお金も無いからそんな暇は無いの」
「もう少しくらいのんびりでもいいと思うけど」
「将来稼いだら今の分ものんびりするからいいの」
マリーはしっかり将来の事を考えているようだ。
しばらく話していると、料理と飲み物が運ばれて来た。
「美味しそう……」
「でも、高いんでしょ?」
「気にしなくていいと言っただろう」
「うん、でもやっぱちょっとは気になるよ」
「美味しいわね、家のメイドが淹れたものを思い出すわ」
「高級店に来てその感想、さすが」
私もファルナの見よう見まねでカップを口元に運ぶ。
「シャロンもお嬢様感が出てる……居心地が……」
ナコが私の皿を見ているな。
「ナコ、これを食べてみるか?」
「いいの?」
「ああ、口を開けてくれ」
「え!?」
「ほら」
ナコの口の前へ持っていくと、ナコは口を開けた。
「う、うん……あーん」
「美味しいか?」
「うん、美味しい」
「頬に付いてしまった」
指で取ってやる。
「ありがとう……し、シャロンもわたしの食べる?」
「ああ、貰おう」
「じゃあ、はいあーん」
「あーん……うむ、美味しい」
「な、なんだこの圧倒的微笑ましさは居心地がさらに侵食されてもう消えたい」
「マリー、どうしたの?」
「おかしくなってしまったようだ」
「それは元からよ」
「それはもういいよ……」
「戻った?」
「うん、でさファルナ……あたしの、食べる?」
恥ずかしがるようにマリーが言う。
「は?」
しかしファルナはいらなかったようだ。
「ごめんなんでもない」
「何でそんなことを急に言い出したの?」
「いや、場に馴染もうと」
どうやらマリーは本当に居心地が悪いらしい。早めに出ようか。
「次はどこに行こうか」
「そうね……」
カフェを出た後、雑貨屋やアクセサリーの店を回ったり、公園などで休憩を挟みつつ王都のほんの一部を見て回った。学院に帰ったのは日も暮れる頃だった。




