街に出よう
整理された街を行き交う多くの人々や、活気のある店の様は王国の明るさと豊かさを感じさせる。
「どこ行こっか?」
「最近美味しくて雰囲気のいいカフェが出来たらしいんだけど、行ってみない?」
カフェか、いいんじゃないか?
「そこって庶民の学生が入れるようなカフェじゃないって」
高級な店なのだろうか。
「そうかしら?」
「ファルナみたいなお嬢様は良いけどあたしは無理なの!」
「え? ファルナってお嬢様だったの?」
私も初耳だ。
「確かに家は貴族だけど、それは学院にいる間は関係無いわよ」
「貴族?」
「いや、明らかに金銭感覚とかおかしいから」
「そうかしら?」
「相変わらず自覚なし……」
うむ、マリーはなんだか苦労していそうだな。
「お金なら私が払うから皆で行きましょう?」
「だからそれがおかしいって」
「金なら私が出すから行こう」
「え、シャロン!?」
実は王からいくらかの金貨を受け取っていた。根源の門を守っていた頃は金を目当てに私の元へ来るものも多かったので、なるべく目につかないように隠し持っていたのだ。
もちろんナコは知っていたが、管理は私に任されていたので、今日は一部を持ってきていた。
「どの程度あれば足りるんだ?」
「四人ならそうね……」
このくらいだ、とファルナが教えてくれる。
「ふむ、余裕で足りるな……」
とりあえず王国では滅多なことでは金に困ることは無さそうだ。
「やっぱり高いなぁ……じゃなくて!!」
急にどうしたのか。
「なんで出してくれるの? っていうか行くのは決定なの?」
「もちろん行くよな、ナコ」
「え? う、うん」
「じゃあもう行くのは良いけど、腹をくくるよ? でもなんでお金を出してくれるの?」
理由か、それは……。
「学院にいる間は色々と世話になったからな、少しは礼をさせて欲しいんだ」
「あ、わたしもお礼したい!」
「そう、じゃあ断れないわね」
「そっかぁ、お礼とかは別に要らなかったんだけどなぁ」
「まあ、あまり気にするな」
私もそのカフェには少し興味がある。
「ありがとう、ナコちゃん、シャロン」
「ありがとね」
「どういたしまして」
「さて、それじゃあ行くか」
道端でずっと話している訳にもいかないだろう。
「楽しみね」
「やっぱ緊張してきた……」
いまさら遅い、腹を括ったなら諦めろ。




