ナコの異変
部屋に戻ると、ファルナとマリーが額に汗を浮かべながら空中に魔方陣を描く練習をしていたが、まだ上手くいかないようだ。
魔方陣を描けても、それを保ったまま発動に必要な魔力を送らなくてはいけないのだ、先は長いだろう。
ウサギはナコと一緒に寝ているようだ。
「あ、お帰り」
「あの二人はどうしたの?」
「宿をとって、国王に会いに行った」
「お、王様に?」
「あの王冠って、本物だったのかしら……」
少し可哀想になるな。
「おはよう……」
ん、起きたか。
「ナコ、大事な話があるんだ」
「なに?」
「ファルナとマリーはもう戻ってもいいぞ」
「わかった、また何かあったら呼んでよ」
「またね、ナコちゃん」
「うん、バイバイ」
さて、これで二人きりだ。
「実はイヴの国には日本の事を知っている者がいるらしい」
「日本の? 本当?」
やはり故郷とは懐かしい物なのだろうか?
「その人物がナコに会いたがっているらしくてな」
「わたしに?」
「ああ、それでその国へ来て欲しいと言っていた」
「でも、学校は?」
「ナコがしたいことをすればいい」
「わたし……わからない」
「わからない?」
「まだ一日だけだけど、ファルナとマリーはすごく仲良くなれたし、他にも友達がたくさんできた。授業も楽しかった」
「じゃあ、行かないのか?」
「でも、日本のこととかわたしに会いたがってる人のことも気になる」
「うむ……別に今すぐ決めなくてもいいと思うぞ、明日イヴはまた来ると言っていた」
「うん、イヴさんにちゃんと聞いてから決める」
「ところでナコ、この魔方陣に触って魔力を流してくれないか?」
前と同じテスト用の魔方陣を展開する。
「え? でもわたし変身しないと魔法使えないよ?」
「いや、今のナコからは確かに魔力を感じるんだ、確認したいからやってみてくれ」
どういうことか、ナコは確かに魔力を持っていた。起きたウサギはナコの足元で首をかしげている。
「わかった。んん……!」
ナコが触れると白かった魔方陣が青く光り輝き出した。確かにナコは魔力を持っているようだ。
「なんで……あ、まりょくきかん?」
「なんだそれは?」
「他にもたくさん、スキルが増えてる」
スキル……ステータスに書いてあるのか?
「他にも何かあるのか?」
「うん、いつの間に増えたんだろう」
「何か他に変わったことは無いか?」
「うーん……体が軽いような?」
見た目は全く変わっていないが、何が起きているのだろうか?
結局詳しいことは解らず、この日は早めに休むことにした。
私はナコが寝た後に学院の図書室で調べものをしていたが、欲しいと思っていた情報はあまり見つからなかった。しかし常識的な知識は少しは身に付いたはずだ。
次は城の書庫に行くか。




