ステータスと召喚術
何を見ているのか、と聞くと『ステータス』だ、と返ってきた。
どうやらそこには自分の能力が数値化され、使える魔法などがわかるようになっているらしい。
聞いたことが無いが、私が知らなかっただけなのだろうか。
「それはどうすれば見れるのだ?」
「見たいと思えば見れるんだけど、見れないの?」
「ああ、全く」
「この世界はなんかゲームみたいで、変な感じ」
「ゲームとは何だ?」
「ええと……なんて言えば良いのかな……」
「いや、無理に答えようとしなくても良いんだ」
「ごめんなさい。わたしも少し見たことがあるだけだからよくわからないんです」
ふむ、結局私もよくわからないが、まあいいだろう。
「じゃあ……あ、そう言えば名前……わたしの名前はトウドウ・ナコです、ナコって呼んでください。あなたは?」
名前か。私には名前なんて無いが、それは人間だとするとおかしいのだろう。どうするか。
……遠い昔にシャロンと呼ばれていたような気がする。
どういう意味かは知らないが、それでいいだろう。
「私の名はシャロンだ」
「シャロンさんですか、なんだか綺麗な名前ですね」
で、服をどうするかだが。
「召喚術で服を呼び出したり出来ないのか?」
召喚術というのは聞いたことも無いが、一体どういうものなのか。
「はい、なんかキャパシティっていうのが一杯で召喚出来ないみたいです」
「私以外にも何か召喚したのか?」
「いいえ、シャロンさんだけです……あっ!」
そこで少女は何かに気付いた風だった。
「あの、突然召喚してしまってごめんなさい!」
ふむ。
「私は気にしていない、それどころかむしろ……いや何でもない」
もしかしたらナコのお陰で出られたのかも知れない。
仕方無いと諦めていたが、一度外に出られたのだ。
やはりもう戻る気はしないな。
「?」
「さて、そろそろ本気で考えないと不味いな。ナコは疲れているんだろう? 休んでいるといい」
「で、でもわたし……」
ナコの様子は見ていて何だか、もやもやするのだ。胸の辺りが。
「見ず知らずの私が信用出来ないのはわかるが――」
「違います!」
「大丈夫、私がこの状況を何とかして見せる。だから無理をせず休んでいろ」
「……わかりました、お願いします」
何とか説得できたか。人と話すと言うのは少し疲れるな。だがまあ、やはり悪くは無い。
「少し外を見てくるから寝ているといい」
洞窟に籠っていても仕方が無いだろう。
外には何か有るかも知れないし、単純に『外の世界』に興味も有る。
そしてどうやらその行動は当りだったらしい。
慣れない沢山の気配に戸惑いつつも、見つけた。
人の気配のようだ。が、なにやら様子がおかしい。