謎の爆発
次の日、爆発音で目を覚ました私は音の発生源へと目を向ける。
窓の外、高い壁で遮られた向こう側で何かが起きたようだ。
ナコを起こして状況の確認に向かおう。
「ナコ」
「……すぅ」
「ナコ」
「うぅ……くぅ」
「……ナコ」
起きない。揺さぶっても軽く叩いても起きない。
「ナコ!」
「……すや……すや……」
駄目だ、諦めよう。
「救世主様!」
近衛騎士団長がドアを叩いているようだ。
「何だ、入ってもいいぞ」
「はっ、では失礼します」
入ってきた近衛騎士団長は完全装備できっちりと決めていた。
「先の爆発についてですが……トウドウ様は?」
「このままでいい」
「……こほん、では。どうやら魔道学院で爆発があったようで、只今犯人を捜索中です」
「魔道学院で?」
「はい、幸い犠牲者はいないとの報告が入っております。犯人は不明ですが、かなりの手練れのようです。今騎士団が捜索中ですが、まだ捕まりません」
「私も手伝おうか?」
「……よろしいのですか?」
ナコの方をなんとなく不安そうに見ながらそう言われた。
「ナコを必ず守ってくれるなら、手伝おう」
「はっ、では信用できる部下を警備に付けます」
なら問題無いか?
「わかった、では少し行ってくる」
窓を開け放ち、ジャンプする。身体能力や魔力はこの体でも劣ったりはしていないようだ。
壁の上に着地すると、騎士に追われる黒ずくめの人間を見つけた。
迷路のような路地を逃げ回っているようだが、上からなら丸見えだ。
もう一度ジャンプして追われている人間の前に着地する。
「チッ、邪魔だ」
腰に下げた剣を抜き、こちらに突っ込んでくるのはどうやら男のようだった。
手練れと聞いていたが動きが粗い、こいつではなかったか。
こう人が多いと目的の一人だけを見つけ出すのは難しいな。
「邪魔なのはお前だ」
突き出された剣をつまみ、手からもぎ取る。その剣の柄で鳩尾を突いて倒すと後から来た騎士団達が捕縛した。
「ご協力、感謝いたします」
「いや、ところでこいつは魔道学院の爆破と関係があるのか?」
「いえ、こいつは別件で窃盗を犯した者です。それと……その……ちゃんとした服を着た方がよろしいかと」
そういえば寝間着のまま飛び出して来ていたな。
またナコに怒られてしまう。一度戻るか。
今度は三度の跳躍で帰ると女騎士がナコの服を脱がせていた。
二人以外には部屋に誰もいないようだ。
「何をしている?」
「こ、ここ、これは違うんです、着替えを手伝って欲しいと言われて、けけけ決して無理矢理とか、そういうのでは無くてですね」
何故慌てるのか。
「シャロン、パジャマでどこ行ってたの?」
まずい。
「え、えーと、それはだな……、と、とにかく私も着替えさせてくれ」
「は、はひっ! お手伝いしますっ!」
「ふぁ……眠い……」
まだ眠り足りないのか。……誤魔化せたか?
「シャロン」
「な、何だ?」
「着替え、手伝うね……」
半分寝ているのか。
「ああ」
「くぅ……」
着替えを手伝うと言いながら私に抱き付いて寝てしまった。犯人探しに行きたかったのだが、まあ仕方無いだろう。向こうは騎士団がなんとかするはずだ。
「可愛いです……」
女騎士はうっとりとしている。おかしなやつだ。
しかし可愛いというのには同意する。




