魔神とは、救世主とは
その後一通り城を回った私達は晩餐に呼ばれ、昼とは違った料理にまたもてなされつつ、王に聞きたい事を聞いていた。
「魔神が倒された後、どのようにこの世界は元に戻ったのだ?」
「神の奇跡と言われております。しかし元に戻ったのは大きな都市と一部の土地のみで、世界のほとんどは荒れ果てたままだったと言われております」
ふむ……。
「人々は少しずつ世界を復興させて行きましたが、今もかなりの場所が荒れ果てたままで、今もそれに尽力している最中でごさいます」
なるほど、しかし二百年経ってもまだ完全に元通りでは無いのか。
「では、そもそも魔神は何故、どこから現れた?」
ナコは料理を食べながら話に耳を傾けていた。
しかし暫くするとまた料理に顔を突っ込みそうになっていたので、今は私の腕の中で眠ってもらっている。
「それが……わからないのです。なにせ二百年前の事ですし、世界は滅んでいましたから、誰も知るものは居ないと言われております」
なるほど、あまり詳しい事はわかっていないようだ。……もしもう一度魔神が現れたら、また同じように倒せるだろうか。私の中に感じられる『根源』の力はかなり弱まっている。このままで大丈夫なのだろうか。
「何かもっと詳しくこの世界を知ることの出来る場所は無いのか?」
「……それでしたら、王立魔道学院へ行かれてみてはどうでしょう。そこの学院長は元主席宮廷魔道士で、博識ですので」
「なるほど、行ってみる価値はあるか」
「では紹介状を書かせて頂きます。それと、あやつは変人ですので、くれぐれもお気をつけ下さい」
変人……危険人物なのだろうか。不安だが、学院という場所の長なら大丈夫、か?
「頼んだ」
「それから、救世主様方は城への出入りは自由ですので、私や書庫に用のある時も無い時も、好きなときに来てください」
「ああ、ありがたい」
ありがたいが、いいのだろうか。それほど救世主という肩書きは重いのだろうか。
「そういえば、何故私達が救世主だとわかったのだ?」
「それは神託があったからです。玉座でうたた寝をしていたとき、夢に神様が出てきて、教えて下さったのです」
なるほど、多分冥界の神がやったんだろう。
依代にされていた事は覚えていないのか。
しかし玉座でうたた寝を……。
「では、私達はもうそろそろ寝たいと思うのだが、良いだろうか」
まあ、きっと冥界の神の仕業だろう。
「もちろんです、救世主様は何でも自由にしてくだされば」
少しばかり過剰な信仰心のようなものに引きつつナコを抱えて部屋に戻り、就寝用の服に着替えて眠りにつく。
ナコはもう大丈夫だろうか。明日早速、王立魔道学院とやらに行ってみたいのだが。




