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恋人?

 ナコが起きたのは日が沈んだ頃で、私達はそれから浴場へ案内された。

 入浴が終わったら城の中を近衛騎士団の団長が案内してくれるらしい。

 ナコは大きな風呂があるということや、城を見て回れるということに驚いたり喜んだり、とにかくはしゃいでいた。

 巨大な風呂を沸かせるのに宮廷魔道士を呼びつけるという王を面倒なので説得して自分で沸かしたが、風呂というのは良いものだ。

 じんわりと体の芯から暖まるような感覚は気持ちが良い。


「しかし、二百年か……」


「わたしの世界も二百年経ってるのかな」


 どうやらこの世界は魔神が倒されてから二百年経っていたらしい。

 人間の寿命は長くて百程度だと知っているので、二百年が長いことはわかる。

 昔二百年生きたという老魔道士に会ったことがあるが、特殊な魔法を使っているようだったし、それでも寿命は限界のようだった。


「やっぱり帰りたかったか?」


「ううん。……シャロンさんは、わたしが居ても邪魔じゃないの?」


「そんなわけが無いだろ、ナコと私は友達だからな。ナコがしたいようにすればいい」


「シャロンさんも、もっとしたいこととか言ってよ」


 したい事と言われてもな。

 出来ることもわからないのにしたいこと何て思い付く筈もない。

 なんにせよ知識が足りなさ過ぎる。


「うむ……では私の事をさん付けで呼ばない、とかどうだ?」


「えっと、じゃあシ、シ、シャロン……?」


「よし、その調子だ」


「他には何か無いの?」


「他は……もっとこの世界を知りたいな」


「この世界を知る?」


「ああ、それにはどうしたらいいと思う?」


「ええと……本を読んだり、色んな場所に行ってみたり?」


「なるほど」


 本と旅、か。後で王に聞いてみるか。


「シャロンさんってほんとに綺麗だよね」


「綺麗?」


「お肌がすべすべで、髪はさらさらで……胸が、大きくて……め、目の色もなんか、不思議なかんじでっ!」


「そ、そうか」


 すごい剣幕だ。胸の大きさが気になるのか?


「ナコも綺麗だと思うぞ」


「ほんと!? ……お世辞だよね」


 ぶくぶくとお湯に潜ってしまった。お世辞ではなく髪も肌も目の色も綺麗だと思うのだが。……お、出てきた。


「ぷはっ、わたしもいつか大きく……」


「そんなに胸が気になるのか?」


 大きくても邪魔にしかならないと思うのだが。


「何をしたらそんなに大きくなるの?」


 気が付いたらこうなっていたのだが……。


「そんなに気になるなら触ってみるか?」


「えええ!? さ、触るってなんで!?」


 ふむ、触ってみたかったわけではないのか。


「そういえば、私達の関係は友達だと言ったが、それ以上では無いのか?」


「そ、それ以上?」


「ああ、愛というやつだ」


 冥界の神だかが言っていたな。


「あああ、愛!?」


「うむ」


「愛っていうのは男の人と女の人が……でもおんなじ同士でもあるって聞いたことが……でもでも……」


 急にどうしたんだろうか。


「シャロンはわたしの事、好き?」


「もちろん」


「ふぇぇ!? ま、まって、じゃあ愛してる?」


「うむ、愛してる」


 多分。よくわからないが。


「あ、あれ……、心臓がばくばくして、顔が熱くて、も、もも、もしかして……わたし…」


 何かぶつぶつと呟きだしたが、顔が真っ赤だ。

 風呂に長く居すぎただろうか。


「そろそろ出るか」


「はひっ!」


 ……大丈夫だろうか。

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