表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/48

友達

 異世界の冥界の神が去った後、私達はゆっくりと話し合っていた。


「わたし、最初は帰りたかった。でもね、シャロンさんがわたしのために頑張ってくれて、もっと一緒にいたいって思ったんだ」


「私は……ナコはずっと帰りたいんだと思ってた。だが私はナコと一緒にいたかった」


 一緒にいたい。私が初めて言葉を交わした人間。


「私はずっと独りで、狭い場所に閉じ込められていた。だからナコが私を召喚してくれた時、やっと外に出られた、やっと自由になれたと思ったんだ」


「わたしも独りぼっちだった。友達が欲しくても、みんなわたしを気持ち悪いって、化け物だって」


「何故? ナコは普通の人間だろう」


 そう聞くとナコは首を振った。


「わたしはさわらなくても物を動かせた」


「魔法?」


 普通じゃないのか?


「わたしの世界では魔法は想像の中にしか無かった。だからわたしは気味が悪い、化け物だって言われた」


 ナコの表情は段々と暗くなっていく。


「ならもう大丈夫だな。この世界では魔法は普通のものだし、私が友達になるさ」


 ナコの表情は晴れない。


「本当?」


「私も化け物と呼ばれていた。実際そうだったのかも知れない。だが、ナコが変えてくれたんだ」


 体も心も。


「だから友達、いいだろう?」


 ナコの表情は晴れないどころかくしゃくしゃに歪んだ。


「ナ、ナコ?」


「うん、友達……私の、初めての友達は……シャロンさんだよ」


 泣きながら笑おうとして変な顔になっている。


「ああ、私の初めての友達はナコだ」


 それからはまた抱き合って泣いていたが、しばらくするとナコのお腹がなった。


 --キュルル~。


「うっ」


「お腹が減ったのか?」


「……うん」


「とりあえず上に行ってみようか」


「うん……ひゃあっ!?」


 お姫様抱っこで階段を上っていく。悲鳴をあげても気にしない。階段を上りきり扉を開け放つと、部屋に居た人々の視線が集まりざわざわと騒がしくなり始めた。

 コツコツと歩いて冠を戴いた人物、王に近付いていく。妙な気配は感じないので神はもう居ないようだった。

 鎧を着た兵士に槍で止められ立ち止まる。


「コラッ、止めんか、止めんか!」


 王が兵士を叱りつけ、兵士は困惑しながらも槍を下ろした。王が頭を下げるとさらに周囲が騒がしくなった、……が。


 --キュルルル~。


 騒ぎの中でお腹の音が妙に大きく聞こえた気がした。

 ナコの顔は真っ赤で爆発しそうだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ