友達
異世界の冥界の神が去った後、私達はゆっくりと話し合っていた。
「わたし、最初は帰りたかった。でもね、シャロンさんがわたしのために頑張ってくれて、もっと一緒にいたいって思ったんだ」
「私は……ナコはずっと帰りたいんだと思ってた。だが私はナコと一緒にいたかった」
一緒にいたい。私が初めて言葉を交わした人間。
「私はずっと独りで、狭い場所に閉じ込められていた。だからナコが私を召喚してくれた時、やっと外に出られた、やっと自由になれたと思ったんだ」
「わたしも独りぼっちだった。友達が欲しくても、みんなわたしを気持ち悪いって、化け物だって」
「何故? ナコは普通の人間だろう」
そう聞くとナコは首を振った。
「わたしはさわらなくても物を動かせた」
「魔法?」
普通じゃないのか?
「わたしの世界では魔法は想像の中にしか無かった。だからわたしは気味が悪い、化け物だって言われた」
ナコの表情は段々と暗くなっていく。
「ならもう大丈夫だな。この世界では魔法は普通のものだし、私が友達になるさ」
ナコの表情は晴れない。
「本当?」
「私も化け物と呼ばれていた。実際そうだったのかも知れない。だが、ナコが変えてくれたんだ」
体も心も。
「だから友達、いいだろう?」
ナコの表情は晴れないどころかくしゃくしゃに歪んだ。
「ナ、ナコ?」
「うん、友達……私の、初めての友達は……シャロンさんだよ」
泣きながら笑おうとして変な顔になっている。
「ああ、私の初めての友達はナコだ」
それからはまた抱き合って泣いていたが、しばらくするとナコのお腹がなった。
--キュルル~。
「うっ」
「お腹が減ったのか?」
「……うん」
「とりあえず上に行ってみようか」
「うん……ひゃあっ!?」
お姫様抱っこで階段を上っていく。悲鳴をあげても気にしない。階段を上りきり扉を開け放つと、部屋に居た人々の視線が集まりざわざわと騒がしくなり始めた。
コツコツと歩いて冠を戴いた人物、王に近付いていく。妙な気配は感じないので神はもう居ないようだった。
鎧を着た兵士に槍で止められ立ち止まる。
「コラッ、止めんか、止めんか!」
王が兵士を叱りつけ、兵士は困惑しながらも槍を下ろした。王が頭を下げるとさらに周囲が騒がしくなった、……が。
--キュルルル~。
騒ぎの中でお腹の音が妙に大きく聞こえた気がした。
ナコの顔は真っ赤で爆発しそうだった。




