第2話
あれから三日たった。その間全くダンジョンに来たやつはいない。誰でもいいから来て欲しい。だんだん寂しくなってきたぞ。
魔力の感覚が掴めるようになってきた。俺がやった練習方法はシノの《トリツク》を利用したものだ。HPも減るがMPも減る。その魔力が減っていく感覚を何度も何度も体感していくうちに魔力をハッキリと感じれるようになった。そして昨日、脳内で
―《魔力感知:D》を習得しました。
こんな感じで俺のスキルが増えたんだ。その魔力を動かせないか試している。魔力が動く感覚も何となくだが分かるんだ。まぁ、あれだけ魔力を吸収されれば嫌でも覚えるだろう。そしてほんの少しだが自分の魔力を動かすことにも成功した。成功したと言っても魔力をつついたくらいしか動かせてないんだがな。それでも
―《魔力操作:D》を習得しました。
大丈夫だったらしい。スキルを手に入れた。今はその魔力操作がもっと動かせないか必死に試しているわけだ。感覚が忘れそうなときはシノに頼んでもらっている。
ちなみにこれしかすることがないから魔力操作しているだけなんだがな。この三日間でいろいろ分かった。今の俺は食事も必要ないし、睡眠も必要ない。いや、寝ようと思えば寝れるんだが時間がもったいないと思ってしまうのだ。
「ん?」
魔力操作の練習を少し中断してノートパソコンを見てみるとRPGでよく出てくるゴブリンらしき生物が侵入してきた。しかも妙に数が多い。
「1、2、3、……………22体か。少し多いな。しかも、傷だらけのやつが多いし」
ゴブリンの住みかを襲われてここまで逃げて来たって感じか?だが、良い暇潰しが来た。お前らの境遇には同情するが世の中弱肉強食だ!俺の経験値になれ!っとインプたちがとりついた。
―――……………………………………は?
インプたちがとりついたんだが一体のゴブリンに十体くらい入っていったんだが。え?一体につき一体じゃなくて何体でも入れるの?えーと、だいたい一体で一週間で相手を殺すことが出来るって書いてあったから十体だと…………………16.8、約17時間で死ぬ計算だ。まぁ、22体向こうにはいるからもう少しかかると…………………
「あれ?あのゴブリン死んでね?」
傷だらけのゴブリンはインプがとりついたと思ったらすぐに死んでしまった。ああ、そうか!もうすでにHPが少なかったのか!なんかあれだ。ゴブリン達、何が起きてるのか分からず戸惑ってるな。ま、いきなり白い人魂が現れたと思ったら自分達の中に入ってきて仲間のゴブリンが死んだんだから当たり前か。もうすでにゴブリンの数は10体に減ってる。いやまだ生きてるな。立ってるやつが10体しかいない。他はもう立つ体力もないらしい。
結局、10分くらいでゴブリン達は全滅した。数は力だ!っていった人物の気持ちがよく分かる戦い、もう殲滅戦だったな。とりあえず、ゴブリン達の死体を吸収するか。
キュイィィィン
ゴブリン達は粒子になって消えていった。綺麗だった。人生で初めて美しいと素直に思えた。
まぁ、これでDPポイント112増えた。俺はすぐにノートパソコンでインプを召喚し始めた。ちなみにレベルは上がらなかった。どのRPGでもそれくらい倒せばレベル上がるのにな。
……………
………………………………
…………………………………………………………
インプを100体召喚し終わったんだが、シノみたいなインプは出なかった。シノがインプのレアってゆう仮説がまた高くなったな。
俺はノートパソコンを開くと落とし穴をオンにした。ゴブリン達を殲滅している時に思い出したのだ。そういえば落とし穴、オフにしてたなって。それから俺はすぐにマップを選び入り口を見る。
「まだ来てないな」
恐らくだがあのゴブリン達は追われていたのだろう。何に追われていたかは分からないがな。なら、ここにも追ってくるやつも来るんじゃないかと思ったのだ。
久々に楽しかったからもっと来て欲しい。この調子でどんどん来い!それまでは魔力操作の練習でもしてるからな。
……………
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「おっ!」
キタキタキタッ!狼が来た!しかも赤い!しかもでかい!バイクくらいの大きさだな!これは結構強いんじゃないか!普通がどれくらいか知らんけどな!しかし、一時間くらいで来るとは思わなかったな。いや、狼だから鼻が効くか。納得。おっ!!俺のインプ達がとりついた。
「ん?おおう!?」
299体のインプ全部とりついたのに元気だ!?どんだけHPあるんだ!こっちの方向に走ってきた。あっ。
―――ドカンッ!
音がしたと思ったら落とし穴が発動して落ちた。
「キャァァァァァアアウウゥゥゥッッッ!!!」
落ちて狼が地面の着地に失敗して体が地面にぶつかると狼が咆哮した。悲鳴とも言えるな。でも、まだ生きてる。しぶとすぎだ。普通299体もインプにとりつかれたら10分もしたら死ぬぞ。もうとっくに10分は過ぎてる。
「ガウッッッ!!」
跳んでるな。届いてないがな。つーか、4メートル近く跳んでるぞ。いくら狼でも跳びすぎじゃね。まぁ、落とし穴の深さは5メートルくらいだから大丈夫だが。
よし!この調子なら見なくても大丈夫かな。練習の続きやろ。
………………
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一時間後
おっ。ちょっと掴んできた。やっと多少動かせるようになってきた。魔力が動いてく。ほんの少ししか動かせないが動かし続けられる!…………そういえば狼どうなったんだ?えーと、
「ハッ…ハッ…ハッ…ハッ…」
メッチャ疲れてんな。もうジャンプはしてないけど、まだまだピンピンしてる。まぁ、気長に待つさ。
………………
……………………………………
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三時間後
「ふぅ、疲れた。ちょっと休憩」
さすがに三時間も集中しっぱなしだとかなり疲れる。動かす感覚は完全に掴んだと言っても過言じゃない程度には出来るようになった。
―《魔力操作:D》から《魔力操作:C》に成長しました。
「……これで確定したな。後ろにあるアルファベットはスキルの高さを示してる」
何となくそんな感じはしていたが、これで確定した。恐らく、D、C、B、A、S、この順に能力が高いんだろう。S以上があるかはまだ分からない。まぁ、BもAもまだ出たことはないけど。
さて、狼はどうなったかな。
「……………」
落とし穴の底で立ってるんだけど、そこから身動き一つとってないぞ。あれ、立ったまま死んでるのか?いやいや、アニメや弁慶じゃあるまいし無いか。
んじゃあ、休憩終わり。続き続きっと。
…………………
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五時間後
そろそろ死んだかな。見てみるか。
死んでたな。さすがに五時間は無理だったか。この赤い狼、かなり強かったな。俺は戦ってないけど。まぁいいか。それじゃあ、お楽しみの吸収をしよう!どれくらいDP手に入るかな。ちょっと楽しみ。
吸収開始っと。
―ポーン
「は?」
吸収した直後、気の抜けるような音がした。と思ったら
―レベルが上がりました。第二層ができます。第二層をこの中から選んでください。
・草原
・洞窟
・森
・山
「はぁ?」
俺は意味があまり理解できなかったのでとりあえず"草原"を選んだ。
ガコンッ
洞窟の奥の方で大きな音がした。
「まさか………」
ここまできて何となく第二層の意味が理解できてきた。俺はすぐさま洞窟の奥に向かうとそこには階段が出来ていた。
「いやいや。マジで………」
階段を上がっていくとそこには草原が広がっていた。
「……………マジだったよ。草原が広がってる。しかも太陽まである」
それにしても凄い。凄いとしか言いようがない。何で太陽あるんだよ。目の前にあるのに信じられないくらいだ。それにしても太陽が懐かしく感じるな。何だかんだで三日間も暗い洞窟で過ごしてたからな。よく俺、あんな空間に耐えられたな。普通なら精神に異常をきたしてもおかしくないのに。人間じゃなくなったからか?まぁ、インプ達はここには入れないな。日に弱いし。
まぁ、驚いてばかりもいられないな。まずは草原にも家を作ろう。ここなら気持ちも良いだろうし。ノートパソコンを持ってこよう。しばらく拠点は草原に移す。
問題が起きた。いや、問題と言うほどのことじゃないんだがシノが草原に行ってほしくないような行動を起こし始めた。具体的に言うとノートパソコンを持って階段を上がろうとすると立ちふさがるように俺の行く道に行くんだ。まぁ、人魂だから簡単に通ることも出来るんだけどな。しかし、このままじゃシノはグレる。どうしたものか。そう思っていると、シノは洞窟の入り口の方へ向かっていった。
「諦めたのか?………ちょっと気になるな」
俺はシノの挙動に少し違和感を感じたので気になってシノのあとを追ってみた。するとインプ達が待機しているところで止まり、そこでシノの体?が輝きだした。
「!?何だ!?」
輝きだすと同時に他のインプ達も輝きだし、シノに向かっていく。幻想的な光景だ。暗い洞窟だから本当に美しく儚い光景に拍車をかけている。俺がゴブリン達を吸収して粒子になった光景が美しいと思ったが、これはそんな比ではない。この世で一番美しく光景だと言われても納得できてしまう。それほどに美しい光景だ。
やがて、全てのインプ達がシノに集まった。すると目を開いていられないほど輝きが増した。
―――眩しいっ!
目を瞑って輝きに耐えていると徐々に輝きが収まっていった。目を開けるとそこには
10歳くらいの黒髪黒目の可愛い幼女がいた。
「お兄ちゃんっ!!」
―――全裸で