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終章正妃として

アンことメアリアンは二十歳の年の冬、十二月頃にヴェルナード公国皇太子、サミュエル・ヴェルナードの正妃として後宮に改めて迎えられる。この時、サミュエルは二十四歳になっていた。

正式に皇太子妃になり、大公妃としての教育を新たに受ける事になる。皇太子妃となったアンは公務をこなし、サミュエルをよく助けた。

父のガレスに代わり、長兄のエドワードが新たにシンフォード公爵に就任した。それを受けて、リナリアの婚約者に彼が選ばれた。これにはエドワードもジェイミー、アンなどシンフォード家の人々は大いに驚いた。

一番に衝撃を受けていたのはリナリアの兄、サミュエルであったが。アンは一応、自分がいるから安心したらいいと慰めた。

「…メアリはわかってない。私の妹の中で一番仲が良くて可愛がっていたんだ。それなのに、まさか、君の兄君に嫁ぐなんて。年がただでさえ、離れているのに」

「……確かにリナリア様とエド兄様とは七歳程は年が離れていますね。それで、反対されていたのですか?」

「そうだ。それに、君の兄君は双璧の貴公子として有名だからね。他のご令嬢方から、妹が大層恨まれているという話だ。嫌がらせを受けないか心配だ」

成る程とアンは納得した。サミュエルが反対してなおかつ、心配していたのはこれが理由だったのかと思い至った。

仕方なく、アンはこの間から少しずつ編んでいた膝掛けを自室の棚から出してきた。こうする事で機嫌を直してくれたらという気持ちがあったからだ。

既に完成していたのでサミュエルの側まで歩いてそっと、彼の目の前で広げてみた。驚いた顔になったのを見てアンはにっこりと微笑んだ。

「これをサミュエル様にと思いまして。ここまで仕上げるのに一年近くかかりました。後、手袋も作ったんです。まあ、公都の一流品には敵いませんけど。使っていただけたら、嬉しいのですが」

そう言うとサミュエルはすうっと顔を赤らめた。

「…君、いくら何でもそれは反則だろう。まさか、私の為に膝掛けや手袋を作るなんて」

「……いけませんでしたか?」

「別にいけないとは言ってない。むしろ、嬉しいよ。こんな手作りの物を貰うのは初めてだからね」

そうですかと言えば、サミュエルは小さくありがとうと礼を述べてくれた。それに今度はアンが顔を赤らめてしまう。二人して笑い合いながら、夜は更けていった。




そして、あれから、三年が経った。ヴェルナード公国の第十五代大公ウエルシス・ヴェルナードは息子で皇太子のサミュエルに大公の位を譲り、退位した。

サミュエルは第十六代大公となる。そして、この年の春の四月に妹のリナリア公女が大公妃のメアリアンの実家であるシンフォード公爵家に降嫁した。相手は嫡男のエドワード公爵であった。

公爵はこの時、三十歳でリナリア公女は二十三歳だったが。二人には後に三人の子が生まれる。一人の娘と二人の息子であった。

娘は成長して、政権交代したスルガ国の皇太子の元へ嫁いだという。スルガ国は自身の好きなように国政を執っていた先代の王と息子の王の元、国の中枢は腐り果てていた。賄賂や専横が横行し、政治は王に気に入られていた貴族達の思いのままになっていた。

そんな国の有様に将来を憂えた宰相や反国王派の貴族達が反旗を翻した。そして、その反国王軍により、革命が行われる。先代の王と息子の王は捕縛されて、その場で処刑、専横を行っていた貴族達も処刑されたり財産を没収、幽閉されたりした。

そして、新国王として即位したのは処刑された王の弟であった。彼はこの時、既に二十五歳の年齢になっており、息子が二人いた。この内の長男が新しい王太子に選ばれる。

王太子はまだ、この時は八歳程であったが利発な少年であったと後の歴史書は記していた。

さて、ヴェルナード公国の新大公になったサミュエルは皇太子時代に正妃であるメアリアンとの間に二人の子をもうけていた。一番目に生まれたのが息子で名をシグルと名付けられ、彼が皇太子に選ばれた。

二番目が娘で名をカタリナといった。シグルは黒髪に紫がかった青の瞳の公子で後に神秘的と称される美丈夫に育つ。




後に歴史書ではサミュエル大公は善政を敷き、賢公と讃えられた。メアリアン大公妃はそんな彼をよく支え、二人は終生、夫婦仲が良かったという。

二人の間には合計して七人もの子が生まれて歴代の大公の中では子沢山だと言われた。

息子が四人、娘が三人であった。皆、父の大公をよく支えて助けた。

メアリアン妃はその後、先立った夫に代わり、若くして大公になったシグルの後見人として彼を補佐した。

そして、たくさんの孫達に囲まれて彼女は楽しく、余生を過ごした。

長生きをして、彼女は静かに息を引き取った。享年は八十四歳であった。

終わり

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