なんとなく嫌だ
「先生。どうですか?」
そう問われて私は弟子が『素晴らしい機械』と呼ぶものを嫌々使ってみた。
無論、便利なのはわかる。
はっきり言って紙とペンだけて必死に作品を書いていた私からすれば、今回の機械どころかペンを使わずに書けるパソコンだけでも衝撃の発明でいまだに『大したものだ』と感嘆しているというのに。
「むむ……これは確かにすごいな」
今や『書かずとも書ける』時代なのだと改めて驚いてしまう。
驚きすぎて夢でも見ているようだ。
「すごいでしょう? 先生の文体も真似ているんです」
確かにそこはかとない雰囲気はある。
今、出力されたものを見たから『これは違う』と分かるが、何年も前の作品に混じっていたら私とて見分けがつかないかもしれない。
「先生も是非使ってください!」
*
などと言われて残された機械。
それを見つめて随分と経っているが、私はどうにも使う気になれず、かといって捨てるのも忍びなく……けれど使う気にはなれない。
「君はそのうち私よりも優れた作品を書けるようになるかもな」
独り言にするのは恥ずかしい。
そう思いあえて機械に声をかけてみたが機械が答えるはずもなし。
しかし、きっとそのうちに本当に私より上手い文章も書けるようになるだろう。
そんな確信がある。
そうなれば積極的に使う人はもっと出てくるかもしれない。
あるいは全ての作品を機械が作る日も来るやもしれない。
だが、それが。
「私はなんとなくやだなぁって思うんだよ」
独り呟き笑う。
未来を思い、未来を夢想し、そうして出た結論。
作家よりも優れた作品を機械が息をするように作れるようになったとして……。
作家が書く価値が事実上なくなる時代が来るとして……。
そうなった時、私は『なんとなく嫌』なのだ。
「なんとなく、か」
白黒が必ずはっきり出る機械にはない発想。
存在し得ない状態。
「案外、それが最後に残るものなのかもなぁ」
そう呟いて。
私はとりあえず、自分の手には余るような機械を封印するように引き出しの中に押し込んだ。
お読みいただきありがとうございました。
エッセイっぽい感じになってしまいました。
モチーフは言うまでもなくAIですが、皆様は世間を賑わせるAIをどのように思っていますか?




