プロローグ
「死」はすべての動物がどんな犠牲を払っても避けたい……。いや、すべての動物ではない。
自殺傾向、自分の命を絶つ行為は「人間」と呼ばれる動物の特有の行動だ。
絶体絶命の時が来る、死がその動物たちを呼んでいるかのような。しかし、もちろんこれは絶対的な本能ではない。自殺した動物は他にもある、でも……人間ほど多くはない。それでもこの問題はタブーとみなされ……人間や他の動物からも触れないようにしている。
だから僕は、普通のキツネとして、自分の知り合いにそんなことが起こるとは思ってみなかった。
ドアを開けた瞬間……古臭い空気漂い、まるで存在しないパンチでお腹を殴られたような気分になった。
本能的に、息を潜めた。
「間違っている……本当に何かが間違っている……!」と思った。
あの刹那、たくさんの考えや非常識な理想が頭に浮かんでいた。神の存在への疑問からこの世がなぜ複雑なのかという疑問へと思考が移り変わる。
もしも生きる意味は生き残りと生殖することなら、どうして耐え難い苦痛があるのだろう。
もしも生きる意味は幸せになることならば、どうして忌まわしい罪があるのだろう。
「痛み」、それは世界の方法だ。
うん、それは真実だ……。考えられる唯一の合理的な結論だ。
数日後今でも、まだパウロの死を悲しんでいる……。あるいはこの事変が僕の中で何かを呼び覚まし、今になってそれに気づいたのかもしれない。
「ブルーノくんは行方不明です」コーディネーターが話し。
「……え⁉︎」
その瞬間、「寝ちゃったのかな」と思った。




