第十一話
※本作は一部にAI支援による描写補助を含みます(戦闘描写・用語の検証・構成整理など)。執筆・編集・全体設計は作者本人が責任をもって行っており、AIは補助的な道具として活用されています。
ハクたちは荷物の山の陰に身を潜め、様子を伺っていた。
搬入口は広い。
天井の照明が煌々と灯り、荷台が積み上げられた空間を照らしている。
武器や道具が散乱し、木箱や樽が無造作に置かれていた。
ハクは敵の配置を確認する。
正面奥、双剣を構えた男——リーダーだ。
その両脇に、盾を持った槍使いと剣士。
右手の荷台の影に、弓兵の姿。
(俺で四人……対応)
視線を三人の方へ移す。
高所の荷台に、もう一人の弓兵。こちらはアリアを狙っている。
地上には、盾を持った剣士、斧使い、鎖使い、双剣使い。
そして後方に銃兵。
(六対三……アリアが一番狙われるか)
ベルが低く呟く。
「……囲まれたら、終わりね」
チャックが槍を構え直す。
「こっちは広すぎる。狭い場所に引きずり込めれば良いんだが……向こうもそれは分かってる」
アリアが剣を握り締める。
手が震えていた。
(怖い……)
心臓が早鐘を打つ。足が竦む。
(……ここで死んだら)
ミスティアの顔が浮かんだ。
(何も恩返しできない……)
アリアは歯を食いしばり、前を向いた。
(……まだ、戦える)
沈黙。
風が吹き抜け、荷箱を軋ませる。
リーダーがゆっくりと手を上げる。
包囲の合図だ。
ハクは手を地面に置いた。
足元から、四つの人型が立ち上が先程出していた影と違いそれぞれが武器を持っている。
「頼むよ」
盾を構える影。
大剣を持つ影。
剣を持つ影。
そして弓を構える影——細身で、女性的なシルエット。
大剣の影がチャックの方へ滑るように移動していく。
剣の影がアリアの方へ。
弓の影が荷台へ駆け上がる。
盾の影がハクの横に立った。
ハクは短剣を逆手に構える。
リーダーが笑った。
「さあ、始めようか」
その瞬間、戦いが始まった。
――
リーダーが地面を蹴った。双剣が閃き、ハクの首を狙う。
ハクは短剣で右の剣を弾いた。火花が散る。
左の剣が脇腹を狙ってくる——ハクは身を沈めてかわした。剣が髪を数本切り落とす。
紙一重。
リーダーが笑みを浮かべる。
「やるな!」
間髪入れず、双剣が襲いかかる。
右、左、右、左——止まらない。
ハクは短剣で弾き、かわし、反撃した。短剣の一閃がリーダーの頬を裂く。
血が一筋、流れた。
リーダーの笑みが深くなる。
「いいじゃねぇか……! もっと速く!」
双剣の速度が上がる。
さらに速く、さらに鋭く。
背後から槍が迫る——
盾を持った影が横から飛び込んだ。盾が槍を弾き、火花が散る。
槍使いが驚いて後退した。
影は即座に反撃する。拳が槍使いの顔面を叩き、男がよろめいた。
右手の荷台から矢が飛んでくる。
盾の影が即座に反応し、盾を構えて矢を弾いた。
ハクはリーダーとの戦いに集中できた。
短剣と双剣が交錯する。
火花が散り、金属音が響く。
リーダーの双剣が速度を上げ、閃光のような連続攻撃を繰り出す。
ハクは短剣で弾き、かわし——
服の裾が裂ける。頬が掠める。
全てが紙一重だ。
ハクは反撃した。短剣がリーダーの腕を狙う——
リーダーは紙一重でかわす。
二人の速度が、さらに上がっていく。
――
その頃、三人への襲撃が始まっていた。
盾を持った剣士と斧使いが、ベルへ突っ込んでくる。
ベルが盾を構える。
「来なさい!」
剣士の剣が盾に当たり、金属音が響いた。
斧使いが左から斧を振るう。ベルは身を捻ってかわすが、その隙を鎖使いが狙った。
鎖がベルの足へ伸びてくる——ベルは盾で叩き落とした。
ベルがアリアから離れた隙を狙って、高所の弓兵がアリアへ矢を放ち始める。
アリアは右へ跳んでかわしていく。
だがその先——荷箱の陰に、双剣使いが待ち構えていた。
アリアの足が止まる。
(しまった……!)
それを見越したかのように鎖使いが鎖を振るい、鎖がアリアの足に絡みついた。バランスを崩して転ぶ。
「っ!」
双剣使いが踏み込んできた。
双剣が閃き、アリアの首へ狙いを定める。
アリアは後退しようとするが、足が動かない。
刃が迫る——避けられない。
(死ぬ……!)
その瞬間、剣を持った影が横から飛び込んだ。
剣と双剣が激突する。火花が散り、金属音が響き渡った。
アリアは息を呑んだ。
目の前で、影が自分を庇っている。
「邪魔だ!」
双剣使いが影を押し返そうとする——だが、影は一歩も引かない。
その間に、アリアは鎖から抜け出し、体勢を立て直した。
影はアリアの前に立ち、双剣使いを睨んでいた。
その時——影の動きが変わった。
さっきまでの守勢から一転、紙一重で双剣をかわし始める。
足運びが鋭くなり、相手の死角を突く動きへ変わっていく。
双剣使いが顔をしかめる。
「……何だ? さっきと動きが違う……!」
影は無言のまま、双剣使いを押し始めた。
アリアは剣を構え直す。
(……守られてばかりじゃ、駄目だ)
――
荷台の上へ、細身の影が駆け上がっていく。
弓を構え、矢を放った。
矢が高所の弓兵の頬を掠める。
弓兵が顔を引っ込めた。
「ちっ……!」
弓の影は荷台から荷台へ、軽やかに飛び移る。
箱を蹴り、宙を舞い、着地と同時に矢を放った。
矢がベルを押さえていた剣士の肩に突き刺さる。
「ぐっ……!」
剣士が思わず後退し、ベルはその隙を見逃さずに踏み込んで剣士を突き飛ばした。
弓の影は荷台の上から盾を見つけ、剣士の影へ視線を向けた。
影同士で意思疎通をしたかのように——弓の影が盾を投げる。
盾が回転しながら落ちる。
剣の影がそれを空中で掴んだ——まるで何度も繰り返したかのように、息がぴったり合っている。
そのまま双剣使いへ体当たりした。
双剣使いが顔をしかめる。
「なんだこいつら……!」
――
リーダーが叫ぶ。
「弓兵、狼族を狙え! あいつが一番弱い!」
高所の弓兵が即座に反応し、アリアへ矢を放つ。
「鎖使い、足を止めろ!」
鎖使いが鎖を振るう。
だが——矢が空中で弾かれた。
リーダーが眉をひそめる。
「……正確すぎる」
荷台の上、弓の影が矢を番えている姿を見た後、リーダーの視線がハクに戻る。
ハクは短剣でリーダーの双剣を受け止めながら、戦い続けている。
影を操る素振りは、一切ない。
リーダーの目が細くなる。
(……まさか)
「お前……影を操ってない……?」
ハクは答えない。
短剣が閃き、リーダーの腕をかすめた。
リーダーが後退する。
(自律してる……だと。なんでこんな奴がここにいやがる)
リーダーは苛立ちを覚えながらも、盾持ち影に視線を向けた。
影は槍使いと剣士を相手にしているが、常に人間と同じ急所を守る位置に立っている。
特に頭、首を。
頭部以外の攻撃は顧みず、部下たちと戦っていた。
「……なるほど。弱点は首か」
リーダーが笑う。
――
ベルは盾を構え、剣士の剣を受け止めた。金属音が響く。
高所から矢が飛んでくる。ベルは盾を上げて矢を防ぐが、その隙を左の斧使いが狙った。
ベルは咄嗟に身を捻る。斧が肩を掠め、血が滲んだ。
「っ……!」
銃声が響く。弾丸が盾に当たり、亀裂が走った。
(遠距離を……どうにかしないと……!)
細かい傷が増えていく。
腕、脚、脇腹——血が滲み、服を汚していく。
剣士が再び斬りかかってくる。ベルは盾で受け止めたが、もう腕に力が入らない。
視界が揺れる。呼吸が荒い。
(もう……長くは持たない……)
その時だった。
荷台の上の弓の影が動いた。
爆薬を投げる——同時に、矢を番える。
銃兵は爆薬と気づき、瞬時に魔力で障壁を張った。
だが——
矢が、爆薬の穴を正確に貫いた。
障壁を破り、爆薬ごと矢が銃兵の肩に深く刺さる。
爆発。
神業だった。
ベルはその一瞬を目撃してしまう。
「……え?」
荷台の上、弓の影が次の矢を番えている。
その動きは流れるように滑らかで、一切の無駄がない。
(冗談でしょ……並の腕じゃあんな芸当できない)
考える暇はない。
剣士が再び斬りかかってくる。
――
チャックが槍を構える。
前方には、斧使いと槍使いが立っていた。
「二人か……厄介だな」
チャックが突進した。槍が槍使いへ向かう——
槍使いが槍で受け止める。金属音が響く。
その隙に、右から斧使いが斧を振るった。
大剣の影が割り込む。大剣で斧を受け止め、火花が散った。
チャックが槍を引き、槍使いの脇腹へ突き込む。
槍が肉を貫いた。
槍使いが怯む——その隙にチャックは一気に距離を詰めた。
背中に隠していたナイフを抜き、首へねじ込む。
「一人!」
斧使いが反撃に転じる。振り下ろされた斧が大剣を弾き、影の体勢が崩れた。
チャックが前に出て槍で防ごうとするが、柄に亀裂が走る。
「くそっ……!」
大剣の影が大剣を投げ捨てた。地面に転がっていた折れた槍を拾い上げる。
そのまま斧使いの胸へ突き刺し、斧使いが崩れ落ちた。
チャックが息を吐く。
「頼もしいな!」
影は何も答えず、次の敵を見据えていた。
――
弓兵が攻撃してこないことに気づいたベルは、前衛を押しのけてアリアのフォローへ向かった。
「アリア!」
だが、双剣使いが突っ込んでくる。
双剣が閃き、アリアを狙っており、ベルは強引に間へ割り込んで盾で受け止めた。
金属音が響くが、盾が真っ二つに裂けた。
「っ……!」
ベルが後退する。
(不味い……)
双剣使いは迷いなく踏み込んでくる。
双剣が閃き、ベルの首を狙った——
その時、剣が飛んできた。
双剣使いが咄嗟に剣で弾くと、その隙にベルは後方へ距離を取る。
剣を持った影が、剣を投げたのだ。
影は持っていた盾を、ベルへ投げ渡す。
ベルが空中で盾を掴み、構え直した。
「……ありがとう」
剣の影は既に双剣使いへ向かっていた。素手で。
双剣使いが苛立ちを覚える。
「こいつら何なんだ!」
双剣で何度か斬撃を浴びせるが、影はかわしてしまう。
影は手首を狙って拳を叩き込んだ。双剣使いの片手から剣が落ちる。
そのまま、双剣使いへ頭突きを食らわせた。
「ぐっ……!」
双剣使いが怯む——その隙に、影は落とした剣を奪い取り、ベルは武器を持った片腕を切り落とした。
影は拾った剣を首に押し込み、双剣使いが崩れ落ちる。
影は地面に転がった剣を拾い、双剣になった。
その時、背後から鎖が飛んできた。
鎖使いが、隙を狙って鎖を振るったのだ。
影は身を捻ってかわし、剣を宙へ投げると空いた片手で鎖を掴み、そのまま引き寄せる——鎖使いが体勢を崩す。
影は投げた剣を掴むと前へ踏み込み、鎖使いの喉を切り裂いた。
大剣の影は大剣を捨て、折れた槍を手にしていた。
二つの影が、それぞれ武器を変えながら戦い続けている。
まるで戦場で生き延びてきた兵士のように。
――
リーダーが舌打ちする。
「ちっ……数が減りすぎた」
リーダーは判断した。
三人を先に片付ける方が早い。
リーダーが地面を蹴り、三人へ向かって走り出した。
「おい、待て……!」
ハクが追おうとするが——
盾持ち影の前に、リーダーが立ちはだかる。
斬撃が盾持ち影の盾を両断し片腕を切り落とした。
影の片腕が霧散していく。
リーダーはそのまま、三人の元へ向かう。
ハクが追いかけようとするが、弓兵と剣士が邪魔をする。
矢が飛び、剣が閃く。
ハクは短剣で弾くが、足止めされた。
ハクの近くに居た盾持ち影が、突然盾を剣士に投げつけた。
剣士が盾を防ごうとする——
その隙に、ハクと盾兵の影が背中を合わせる形で入れ替わった。
盾の影が、即座にハクの意図を察したかのように、剣士と槍使いの二人を引きつけ始める。
盾兵の影は、入れ替わった際にハクのポーチから爆薬を抜いていた。
影は剣士へ突進する。
剣士が剣を突き刺し、影の胴を貫いた。
「っ……!」
だが、影は構わず前衛の服に爆薬を差し込む。
「なっ……!?」
影は剣士を蹴り飛ばした。
剣士が壁にぶつかる——
爆発。
轟音と共に、壁が崩れる。
足場が崩れ、残っていた弓兵の足元が崩れていく。
落ちた弓兵が立ち上がろうとするが、弓の影が矢を放ち、弓兵の喉を貫き、弓兵が動かなくなった。
ハクは残っていた槍兵へ駆け寄り、一気に近づくと短剣で首を切りつけ周囲に血が飛来した。
盾兵の影は役目を終えたかのように、ゆっくりと霧散していく。
――
リーダーがアリアへ迫る。
「お前が最初だ!」
双剣が振り下ろされる——
ベルが盾で割り込む。
金属音が響くが、ベルは受け流しきれず押し込まれてしまう。
チャックが左から槍を突き出すが、リーダーは片方の剣で弾き、槍が折れた。
「っ……!」
チャックが後退する。
その時、高所の弓兵がアリアを狙って矢を番えた。
チャックがそれに気づく。
「アリア、伏せろ!」
チャックは考えるより先に動いていた。
折れた槍の先端を掴み、弓兵へ投げつける。
だが、その瞬間——
弓兵の矢が放たれた。
チャックは咄嗟にアリアの前に飛び出し、矢が胴に突き刺さる。
「っ、ぐ……!」
痛みが走る。呼吸ができない。
だが、チャックの投げた槍の先端は弓兵の足を貫いていた。
「ぐあっ……!」
弓兵がバランスを崩し、荷台から落ちる。
その隙を見逃さず、弓の影が矢を放った。
矢が弓兵の胸を貫く。
チャックは膝をつく。
胴から血が流れ、地面を濡らしていく。
(……やべぇな……防具代ケチるんじゃ無かった)
視界が揺れる。
リーダーは大声で怒鳴りながら、チャックとベルを掻い潜った。
「お前ら邪魔なんだよ!」
双剣がアリアを切り込む——
大剣を持った影が飛び込んだ。
影がアリアを庇う。
リーダーの双剣が、影の胴を貫いた。
影の身体に亀裂が走る。
影は動きを止めない。
片手でリーダーの腕を掴みながら、もう片方の手で折れた槍を構えた。
リーダーが眉をひそめる。
「……しぶといな」
リーダーの双剣が影の首を切り落とした。
影の首が落ち——
影は、煙のように、ゆっくりと霧散していく。
アリアは息を呑んだ。
(……っ)
足が動かない。
身体が震える。
恐怖が、全身を支配する。
(……動けない……)
剣を握る手が震え、涙が溢れた。
言葉が出ない。
ただ、竦んでいるだけだった。
――
ハクがリーダーの元へ追いつく。
その表情は、わずかに険しかった。
視線が、大剣の影が消えた場所へ向く。
「……すまない」
ハクの小さな嘆きが、唇から漏れた。
ハクの短剣が閃く。
リーダーが双剣で受け止める。金属音が響いた。
「お前さえいなければ……」
リーダーの顔には焦りが浮かんでいた。
「さっさと死ねよ!」
双剣が閃くが、ハクは全て紙一重でかわす。
反撃の短剣がリーダーの首を狙った。
リーダーが後退しようとするが、後方からベルが体当たりで押さえ込む。
短剣がリーダーの喉を切り裂き、リーダーが崩れ落ちた。
リーダーが倒れたことで、残った兵士たちの連携が崩れた。
チャックとベルが、それぞれ残った兵士を倒していく。
剣の影と弓の影が、二人を援護する。
やがて、最後の兵士が倒れた。
静寂。
戦場には、血の匂いだけが残った。
アリアが剣を杖代わりにして立ち上がる。
「はぁ……はぁ……」
息が荒い。手が震えていた。
チャックが肩で息をしながら笑う。
「……生きてるな」
胴の傷から血が流れ続けているが、それでも立っている。
ベルが血に濡れた盾を見つめる。
「……どこに雇われた連中よ」
ハクは短剣を振って血を払い、鞘に戻した。
剣の影と弓の影が、音もなく霧散していく。
ハクは倒れた男に向かって小言を言う。
「冥土の土産は無いの?」
リーダーの男は辛うじて生きていた。
血を吐きながら、皮肉めいた笑みを浮かべる。
「……お前、変な奴だな……」
男はポケットから一枚の通貨を取り出すと、それをじっと見つめた。
「……仕方ない。御駄賃代わりだ」
男は自分の腰に付けていたナイフに、通貨を勢いよく突き刺した。金属音が響く。
通貨に穴が開き、刃に固定される。
「……礼だ」
男は小さく笑い、力尽きて崩れ落ちた。
ベルが通貨を刺したナイフを拾い上げ、光にかざす。
表面に刻まれた紋章——見覚えはあるが、思い出せない。
「……通貨を刺すなんて……」
チャックが眉をひそめる。
「自分の国を呪ってるのか? それとも、敵対してるって意味か?」
アリアが覗き込み、首を傾げる。
「見覚えある気がするけど……何処だっけ」
ベルが小さく息を吐く。
「……後で調べましょう。今は、持って帰るだけ」
ハクは静かに頷き、通貨を布に包んだ。
風が吹く。
血の匂いと、焼けた薬莢の匂いが混ざる。
誰も言葉を交わさないまま、戦場には静寂だけが残った。
――
※本作は一部にAI支援による描写補助を含みます(戦闘描写・用語の検証・構成整理など)。執筆・編集・全体設計は作者本人が責任をもって行っており、AIは補助的な道具として活用されています。




