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第一話:始まりの日

こちらAIの補助を使った作品になり、カクヨムでも掲載しております。

事前に活動報告にAIの比率など記載しております。



湿気った匂いのする薄暗い夜の森で、四十路を過ぎたフォルは血塗られた処理用のナイフを器用に使い、魔物の残骸を黙々と処理していた。

 内臓特有の臭気が鼻腔をくすぐり、ぬるりとした感触が手袋越しに伝わってくる。日々の糧を得るための、この単調で血生臭い作業。しかし、その日はどこか違っていた。

 妙に静かな夜だった。

 このエリアではありえないほどの静寂が、森に不気味な重さを落としていた。風は止まり、虫の音すら消えていた。


 その静けさの中、フォルは頭にバンダナを巻き、マスクで顔を隠しながら黙々と手を動かしていた。全身を覆う迷彩の防具に、背中にはクロス状に固定された二本のマチェット。彼の装備は長年の経験で磨かれた生存技術そのものであり、何より目立たず、気配も少ない。


 その静寂を破ったのは、空に打ち上がった一本の信号弾だった。

 燃えるような深紅の光。

 それは、この地の冒険者なら誰もが知る、最悪の合図。

名付きネームドの魔物が出現した証だった。


「……冗談だろ?……本当に、出たのか」


 背後で見張りをしていたシェードが低く呟いた。

 黒いコートを羽織り、長剣を背負ったその男は、フードの奥から目を細めて空を睨みつける。


 フォルも顔を上げた。

 その赤は、彼らのすぐ近く――ほんの数ブロック先から放たれていた。


「……ここで出た事あったか?。名付き(ネームド)が出るエリアじゃねぇ」


「討伐部隊が今日、街から出てたんだろ? SとAの混成チームだったか。確か、ギルドの上層部が直接選んだメンバーだったはずだ」


「エーラのパーティ連中か? ……だとしたら、街の反対側に向かったって聞いたぞ。ここからじゃ反対方角だ」


 シェードが短く鼻を鳴らす。


「じゃあ、あれは誰だ?」


 言葉が宙に浮く。


 今日この近辺にいたパーティは――そう多くなかった。フォルとシェードは、この森の南端で素材回収任務に入っていた。

 確かに先ほど、別のパーティとすれ違っていた。5人組で、装備もそこそこ整った連中だった。


 その時、再び空が染まる。今度は青――

 無事を知らせるはずの信号弾が、遠く離れた上空でいくつも連続して打ち上がった。


「打ち上がってるな……けど、数が少ない。あっち側にいた冒険者たち、もう少しいたはずだろ」


 シェードが眉をひそめ、フォルも顔をしかめる。

 反応が鈍い。光が足りない。

 青信号が途切れ、あたりの森は再び沈黙に包まれた。


「ちょっと待てよ……」


 フォルが立ち上がり、肩を払う。


「……さっき、すれ違った連中。あれ、何分くらい前だった?」


「おそらく二十分前後。野営の準備をしてたな。確か五人組だったはずだ」


「地図、出せるか?」


 シェードは頷き、腰から小さな筒を取り出す。

 中には魔力を感知しない特殊加工が施された布製の地図。広げると、魔力に反応した薄光が浮かび上がる。


「……信号の痕跡、ないな。近辺では俺たちだけが打ち上げたことになる」


「もっといるだろう、巡回してる連中も上げてないぞ。」


「とにかく走るしかねぇ」


 二人の目が自然と向いたのは、この森の北寄りに設置された小型シェルター。いざというとき、冒険者が駆け込む緊急用の避難施設だ。


 フォルは地面に転がる魔物の死骸を一瞥する。


「魔石は抜いてある。素材も惜しいが……仕方ねえな」


 肩をすくめると、静かに言った。


「シェルターに行くぞ。あの赤は、近すぎる」


 そのとき、右手の森の奥――


 ズバンッ!


 再び、赤い閃光が夜空に弾けた。


 今度はより近く、ほぼ目前と言ってもいい位置だった。


「……今のって、避難ルートのど真ん中だぞ」


 シェードの声が低くなる。


「誰かが今、逃げてきてる――!」


 フォルとシェードは無言で頷き合い、夜の森へと駆け出した。


 突如それまで異様なまでに静まり返っていた木々の間から、突如として慌ただしい足音と叫び声が響く。


「さっきまで何も聞こえなかったぞ、何か来る……!」


 シェードが低く唸るように言い、フォルも反射的に構えを取った。


 木立を割って飛び出してきたのは、一人の細身の戦士だった。肩は血に濡れ、意識を失った魔道士を必死に抱え込んでいる。

 その後方から、治癒師、大盾を持つ戦士、そして派手な柄のコートに身を包んだ銃使いの男――計三人が、息を荒げて走ってくる。


「追われてるな」


 フォルが呟いた瞬間、木陰から巨大な狼の群れが姿を現した。通常個体より一回りも二回りも大きく、異様に膨れた筋肉と濁った眼を持つ魔物たち。


「援護する!」


 フォルが叫び、マチェットを抜いて駆け出す。シェードも無言で並走し、抜き身の剣が月光を反射するように煌めく。


 一頭目が跳躍した瞬間、シェードの剣が水平に走る。狼の喉元に斬撃が深く入り、獣は地面を転がるように崩れ落ちた。


 二頭目がシェードの背後を狙うも、フォルが素早く割り込み、マチェットで足首を切り裂く。バランスを崩した隙を逃さず、シェードが後方から斬りつけ、動きを止めた。


 三頭目が低く唸りながら突進してくる。銃使いの男が「任せとけ!」と叫び、腰のホルスターから連射銃を抜く。

 しかし、肩を撃ち抜くも致命傷には至らず、狼は構わず突進してきた。


「やるしかねぇ!」


 前衛の大盾の戦士が盾を突き出す。巨体を活かしたぶつかり合いにより、狼の突進が止まる。


「フォル!」


シェードはフォルへと叫ぶ。


「わかってる!」


 フォルが投げたマチェットが狼の首に突き刺さり、戦士が渾身の力で押し込むようにねじ伏せた。


 一瞬の連携。

 その場に、わずかに安堵の空気が流れる。


「まだいるぞ!」


 シェードが声を上げる。

 フォル、シェード、大盾の戦士が自然と横一列に並び、背後では治癒師が魔道士に魔法を施し、剣士が護るように立っていた。

 銃使いは戦列のやや後方から援護に回る。


「立て直すぞ!」


 フォルの一声で、三人が狼の群れに立ち向かう。

 盾を軸に、銃撃と斬撃が呼吸を合わせる。三体が地に伏したとき、希望は確かにあった。


 だが、それは一瞬で終わった。


 最後の二体を目前にして、大盾の戦士が突如、叫びながら前に出た。


「おい、下がれ!」


 フォルが叫ぶも間に合わない。


 ――瞬間、何かが閃いた。


 盾を構えたままの男が宙を舞い、次の瞬間には胴が真っ二つになっていた。


 濡れた音が地に響く。

 誰も、何が起きたか分からなかった。


「っ……まさか……!」


 フォルの目が見開かれる。


 そこに立っていたのは、異様な風格を纏った狼――名付き(ネームド)


 深い黒の体毛と、知性を宿した双眸。ゆっくりと一歩を踏み出すその動作に、周囲の空気が凍るような圧を孕んでいた。


 フォルが恐れず切りかかるも、マチェットは見えない壁に弾かれ、火花を散らす。


「……障壁か!」


「俺が削ります!」


 銃使いが立ち位置を変え、弾を集中して撃ち込む。

 障壁に亀裂が入りかけた瞬間、シェードがそこへ斬り込む。刃が通り、ネームドが初めて唸り声を漏らした。


 その途端、周囲の狼が連携したように動き出し、四方から襲いかかってくる。


「この動き……指示してる。こいつ名付き《ネームド》だ、群れを完全に制御してる!」


 シェードの声が怒気を帯びる。

 フォルも即座に体勢を整え、逃走の準備を始める。


 その瞬間――音が、消えた。


 風の音も、草の揺れる音も、仲間の声すらも聞こえない。


 フォルは横から飛びかかってきた狼に対応し、辛くもマチェットを突き立てたが、どこかおかしい。ネームドの姿がない。


(なにかがおかしい……どこだ……!?)


 本能が警鐘を鳴らす。フォルは後方を振り向く――


 銃使いがいたはずの場所に、影があった。


 銃使いの男が、悲鳴すら上げる間もなく、名付き(ネームド)の牙に捕らえられていた。


 肩から胴体にかけて食い破られ、血飛沫が静かに宙を舞う。


 それは“無音”の死だった。


 目が合った瞬間、シェードが即座に撤退のサインを送る。


 フォルは腰のポーチから閃光玉を取り出し、躊躇なく投げつけた。

 弾ける光。沈黙の空間に、白い閃光が染み込むように走った。


 直後、催涙弾も投げ込む。強い刺激臭が辺りに立ちこめ、狼たちの動きが乱れる。


(戻った……音が、聞こえる!)


「退け! 逃げろ!」


 前方では、剣士が魔道士を担ぎ再び走り出す。

 治癒師は腰を抜かし、立ち上がれずにいた。


「任せろ!」


 フォルがその身体を抱え上げ、走り出す。


「俺が最後尾を守る。行け!」


 シェードが剣を構え、逃げる仲間の背を守るように一歩前へ出た。


そして、森の奥へと、一行は命からがら撤退するが、簡単には逃してくれないらしい。


 「無理だ。シェルターに着くまでには追いつかれる!」


 シェードは思わず叫んだ。

 すでに体力も限界に近く、仲間たちの足取りも重くなっているのがわかる。


「このままでいい、真っ直ぐ走り続けろ!」


 フォルが前を走る戦士に向かって叫ぶ。

 だがその先にあったのは、深く切り立った崖だった。


 戦士は足元の崖縁で一瞬だけ躊躇する。

 その背後から、フォルの怒鳴り声が響いた。


「飛べっ!!」


 その一声に突き動かされるように、戦士は魔道士を抱えたまま身を躍らせた。

 それに続いて、フォルも治癒師を抱えて跳躍する。


 重力が身体を引きずり下ろす感覚と共に、景色がぐるりと回転する。

 直後、足場となるはずだった地面が砕け、腐った根と土が崩れ去る。

 フォルは斜面を転がり落ち、抱きかかえた治癒師ごと大木へと背中を叩きつけられた。


「ぐッ……!」


 肺が押し潰されたような衝撃と共に、視界が一瞬で白く染まる。

 その刹那、フォルの目に映ったのは――喉元を喰い千切られた魔道士だった。

 彼女の身体はまるで糸が切れた人形のように力なく横たわり、血が地面を濡らしていく。


(……畜生!)


 考えるより早く、異変が襲う。


 牙が、空気を裂いた。

 巨大な狼――名付き(ネームド)が、まるで闇から現れたかのように、音もなく迫っていた。

 その顎が、フォルを挟み潰すように襲いかかる。


 だが、狼の勢いは強すぎた。

 斜面の崩れた地形が幸いし、狼の牙はフォルの背後の大木にまで深く突き刺さる。

 大木が軋む。幹が半ばまで抉れた。


 フォルは咄嗟に、背負っていたマチェットの一本を抜き放ち、狼の口の中に差し込んだ。

 歯茎の隙間に刃を押し込み、喉奥を強引にこじ開けるように固定する。


(またか!何も聞こえなかったぞ。こいつ…まさか音を…)


「ぐあ……ッ!」


 だが、牙の圧力は止まらない。

 防具が砕け、肩が脱臼する感覚と共に、肉に牙がめり込む。

 治癒師を庇った両腕には、万力のような激痛が走る。


 息が吸えない。気管が潰されるような圧迫感と、血の味が喉奥を満たす。

 その全てが、死の匂いを纏って迫っていた。


(まだ……死ねねぇ……こんな所で……!)


 フォルは、必死に思考をつなぎ止める。


 動かせる右手。腰のナイフ。――それしかない。

 無意識のうちに体が動いた。

 ナイフを引き抜き、狼の歯の隙間――粘膜の間へ、何度も、何度も突き立てた。


 ぬるりとした感触。

 肉を裂く音。狼の顔が歪む。


 そしてようやく、狼が小さく呻いた。


 だが、フォルの力は尽きかけていた。



(……見えねぇ)


 シェードの視界を覆う土煙と崩れた土砂で、辺りの輪郭は霞んでいた。

 湿った土の匂いと、焦げたような金属臭が鼻を突く。

 だが、シェードの目は捉えていた。崩れた地面の奥――フォルが、狼に喰われかけている。


「……クソが……!」


 地を蹴る。剣を構え、全速で駆ける。


 しかし、その前に――2頭の狼が、牙を剥いて現れた。


「邪魔だ……!」


 1頭目は真っ直ぐに飛びかかってきた。

 シェードは踏み込み、狙いを口腔へ。

 咄嗟に突き立てた長剣が、狼の口内を貫き、喉元へ深々と刺さる。

 狼の巨体が跳ねるように崩れ落ちると、次の個体が低く構えて飛びかかってきた。


 右腕を差し出す。鋭い牙が袖を裂き、肉に食い込む――だが、そこには金属板があった。


「金属の味はどうだ? ……クソ狼が」


 痛みを押し殺して蹴り飛ばす。体勢を崩した隙に、再び長剣を握り直し、喉元へ斬り込む。

 鉄臭い返り血が、顔を斜めに汚した。


「くっ……!」


 狼の死骸を飛び越え、フォルのもとへ駆け出す。だがその刹那――


 世界が、白に染まった。


 空気が震え、視界の奥で青白い閃光が迸る。


「がッ……!」


 雷撃。全身を焼くような電流が、シェードを地面へと叩きつけた。

 指が、脚が、動かない。視界の隅で、もう一体の名付き(ネームド)が、毛並みを逆立ててこちらを見下ろしている。


「2体だと……色付き……ユニーク……っ」


 苦痛と驚愕が交差する中、シェードは震える手で剣を探す。

 だが、地に落ちたそれには手が届かない。

 代わりに、腰のナイフに手をかけ、構える。


 このまま――せめて、一矢報いる。


 その時だった。


「伏せろッ!!」


 鋭い声とともに、風を切る重い音が響いた。


 その声に反応するより早く――


 ズバァン! と、何かが空気ごと裂くような音が響いた。


 シェードの目の前を、何か重厚な影が通り過ぎていく。

 それが何なのか理解する前に、視界の端で、ネームドの巨体の一部が宙を舞っていた。


 右前脚――関節ごと、綺麗に切断されていた。


「……っ!?」


 血飛沫の中に立っていたのは、一人の男だった。

 黒髪をなびかせ、手には異様に長く、重そうなハルバードを構えている。

 その装いは戦場の泥臭さとは不釣り合いなほど洗練されていた――

 まるで貴族のような気品すら漂わせる、漆黒と銀の服。だが、その瞳には鋼のような冷たさと、獣を狩る者の集中が宿っていた。


 彼は一歩も止まらず、地を蹴った。


 名付き(ネームド)が、咆哮と共に牙を剥く。

 だがその瞬間、男の身体が一瞬霞んだ。


「ハァッ!」


 雄叫びと共に振り下ろされたハルバードの刃が、ネームドの下顎を豪快に弾き飛ばす。


 咄嗟に体をよじったネームドは、そのままよろめき――

 崩れかけていた斜面ごと、ずるりと滑り落ちていった。


 しかし、男は止まらない。


 その鋭い視線は、今なおフォルに喰らいつこうとしている、もう一体のネームドを正確に捉えていた。


 叫ぶでもなく、怒鳴るでもない。

 ただ静かに、大地を蹴った彼の動きには、一切の無駄がなかった。


 ――ズシャッ!


 重厚な金属音とともに、名付き(ネームド)の首が斜めに切り裂かれた。

 紙を裂くような鋭さ。

 断面からは赤黒い液体が噴き上がり、残された身体が反射的に暴れる。だが、既に遅い。


 死んだ。


 あの、化け物が。


 圧倒的な力で。


「…………」


 静寂が降りた。


 あれほど喧しく、命を削るような殺意に満ちていた空気が、まるで嘘だったかのように沈黙する。


 そして、狼たちが逃げ出す。

 我先にと、森の奥へ消えていく。

 残されたのは、斃れた二体の名付き(ネームド)と、倒れ込んだ仲間たち、そして、ハルバードを構えたまま微動だにしない男だけだった。


(……凄いな、こいつ……)


 シェードは、焼け付くような全身の痛みの中で、ただその背を見つめていた。





ここまで読んでいただきありがとうございました。


こちらカクヨムにも載っています

理由やAIの比率等はは活動報告に載せています。


初作品になります。

(るびを振り直すと誤字やミスを見つけて、結構やらかしていた事に気づきました…)



※本作は一部にAI支援による描写補助を含みます(戦闘描写・用語の検証・構成整理など)。執筆・編集・全体設計は作者本人が責任をもって行っており、AIは補助的な道具として活用されています。


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