1. 彼女の告白
よろしくお願いします
煌びやかな装飾も
艶やかに着飾る人々も
見つめ合い踊る恋人達も
楽隊の奏でる素晴らしい音楽も
美味しいお酒とお料理も
この夜会が終われば一度領地に帰る私は最後かもしれない景色を眺めていた
「こんな所にいた」
諦めたいのに諦めきれない人が話しかけてきた
「次の曲が最後だから…踊ってくれないかな」
13歳で知り合って
最初はきれいな男の子だなぁとしか思ってなかったのに
男の子達といる時の笑顔に惹かれ
女の子らしくないと笑いながらも乗馬に付き合ってくれて
困った時にはさりげなく助けてくれて
…希望はないとわかっていても好きになってしまった人
数いる女の子達の中で一番親しくはしていたとは思うけど
あくまでもそれは友達の枠を出ることはなくて
下手に想いを告げて気まずくなるよりも
隣で過ごすことを選んだ私は
やっぱり臆病者なのかしら…
慣れ親しんだリードに身体を預けて
切ない気持ちを隠して微笑みながら
彼と過ごす時間が名残惜しくて
手を離すことができなくて
言わないつもりだった想いが溢れて…
「あなたの事が好きでした。お返事はいりません」
なんて言ってしまったのだけれど…
ここがダンスホールの真ん中で
今年最後の夜会のラストダンスで
もう曲は終わっていて
そんな事を思い出したのは
湧き上がる歓声が聞こえてからで
「ちょっと待って」
そう言う彼の手を離して会場を後にした
うわぁ…私ったらなんて事言っちゃったんだろう…
もう無理、どんな顔して会えばいいのかわからない
というか、みんな見て聞いてたのよね
どうしよう、もうここに居られない…恥ずかしくて死んじゃう!
そうだ、予定より早いけど領地に帰ろう
夜明け前なら人目につかないわよね
帰ったら馬の準備をお願いして…
そうして私は夜明け前には大門を抜けて領地に向かったのだった
そろそろ婚約とか結婚とか決まりだすお年頃
彼のほうが身分は上