表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/23

第十九章:覚悟


昼休み、給湯室でお湯を注いでいると

後ろから低い声がした。


「……お前、最近ぼーっとしてるぞ。ミスするなよ」


その声に振り返ると、甲斐部長が缶コーヒー片手に立っていた。


「えっ、えへ……すみません……気をつけます……」


気まずそうに頭を下げる小春に、部長は少しだけ目を細めて言った。


「まぁ……誰かのことを考えてたら、そうなるか」


「えっ……?」


「――俺も若い頃は、あったよ。仕事中にぼーっとして、先輩に怒鳴られてさ。……好きな子のこと、考えてた」


意外な言葉に、小春は一瞬だけ目を丸くした。


「……え、部長にもそんな時代が……?」


「あるよ。人間だからな」


缶コーヒーをひと口すすり、甲斐部長はちらりと小春の顔を見る。


「……お前、朝、6階にいたろ」


小春の心臓が、一気に跳ね上がった。


(え、なんで……!?)


「お前の足音、俺と佐藤、気づいてたよ。

……でも、来なかったな」


「……ご、ごめんなさい……」


「いや、いいんだ。聞かれたくない話だったからな」


少しの沈黙のあと、甲斐部長はぽつりと言った。


「佐藤、ずっと誰かのこと引きずってたみたいでさ。

……それが、誰かは、俺からは言わないけど」


小春の指先が、ぎゅっと紙コップを握る。


「ただな、最近ようやく、その誰かに――気持ち、向ける覚悟ができたみたいだ」


その言葉が、胸にじんわりと広がっていく。


「お前にも、覚悟が必要かもしれんな」


缶コーヒーを飲み干した甲斐部長は、それだけ言うと

「じゃ、先戻るぞ」と言って給湯室を出て行った。


小春はその場に立ち尽くしながら、手にした紙コップの温かさを胸の前にそっと引き寄せた。


(覚悟、か……)


そっと目を閉じて、自分の中にある気持ちを見つめる。


――でもやっぱり、好き。

苦しくても、叶わなくても、ちゃんと伝えられる自分になりたい。


いつか、先輩の隣に並ぶためにも…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ