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第一章:忘れなれない人
小春は時々あの日々を思い出す事がある。
切なくて恋い焦がれるあの日々を…
もう10年以上も前の事だ。
大好きだった高校の先輩と音信不通になってしまったが
また会える事を祈って色褪せたノートを捲る…
春の風が少しだけ冷たく感じる朝だった。
数日ぶりの出勤。インフルエンザにやられてしまい、寝汗と熱でぼーっとした頭を抱えていた日々がようやく終わった。
「うわ…メール100件…あいなに怒られそう…」
デスクに座ると、山積みの書類の上に、小さな手土産の箱と1枚の付箋が目に入った。
── “神崎さん、お身体大丈夫ですか?
お会いできず残念でしたが、またご一緒できる日を楽しみにしています。佐藤友也”
「え…さとう…ともや?」
その名前に、ふと鼓動が跳ねる。
見慣れたような、懐かしいような字の形。
思わず付箋を手にとって、じっと見つめてしまう。
この筆跡、どこかで見たことがある──