8話
さて、結構な大事が起こっているが、
このまま主人公が目覚めたら事件を振り返りつ日常パートからの立志編……とはいかない。
なぜならば、この日、世間を揺るがすもう一つの大事件が起きたからである。
そのもう一つの大事件の方が世間に与えた衝撃は強大だった。
当然、新聞。メディアへの扱いは大きく。
夢見学園の襲撃事件を一面で扱わない新聞なども存在したぐらいだ。
学園にテロリストまがいの人間が入り込み、教師達を虐殺した。
さらにあろうことか神聖不可侵であるドリーム能力を盗むという信じられない大罪を犯しながら。
これを超えるような出来事。
新聞の一面から追い出すような出来事。
それは……。
三人の中で一番先に目が覚めたのは桐野だった。
目覚めた先は病院であり、大部屋に入れられていたためテレビもあった。
桐野は目が覚めるなり、そのテレビから流れてくる映像に釘付けになった。
「うそだろ……」
画面には緊急速報という大きな文字が躍っていた。
そこから流れていたニュースをまとめるとこうなる。
夢見学園の襲撃犯が犯行声明を出したのだ。
そして彼らはあろうことか、とんでもない手土産まで携えて来た。
後にグラウンドゼロと呼ばれ、世間を揺るがす一大事の発端となる手土産を。
テレビからは犯行声明を一部抜粋して放送されている。
神経質そうな男性の声が機械から流れる。
内容はこうだった。
「我らドリームキャッチャーの目的は才能の民主化だ。無名無産と蔑まれた無能力者たちよ。夢見人に憧れながら足蹴にされてきた者たちよ。諸君に我らと同じ志あらば寄って立て、来たりて取りたまえ」
後に続く無味乾燥な英字の羅列はおそらくはサイトのURLだ。
時を同じくしてこの犯行声明と同じものがネット上にも溢れた。
出典は誰も知らないが、コピーされ無限に増殖した。
そしてそれにも同じようにサイトへのURLが添付されていた。
サイト上に簡単な合言葉「来たりて取れ」を入力すると
とある3Dプリンター用ダウンロードできるようになる。
そしてそのデータの中身がとんでもないものだったのだ。
ニュースでは実際にデータをダウンロードして物品を作った様子だ。
桐野は目を剥く。
先ほど嫌というほど見せつけられたアレをなぜ見間違えようか。
テレビ画面越しにテーブルの上に置かれた拳銃のようなもの。
桐野は思わず身を起こして大声を上げる。
「ドリームキャッチャーだと!」
桐野の大声に病室の皆が振り返った。
しまったと思った桐野は皆に謝るように身を屈める。
桐野はその場で何とか己を落ち着かせようとしたが無理だった。
「アイツに伝えねぇと」
桐野は疲労で動かぬ体を何とか起こそうとする。
彼は四苦八苦しながら同じ病院に搬送されているはずの友人。コーシの元に駆けつけるのだった。