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1話


この世界でのクリエイターは我々の世界とは別の意味を持っている。

まさしく直訳である創造主と呼ばれるに足りる上位の存在だ。

無から有を作り出すその様は、神の御業の再現と言っても全く過言ではない。


さて、ここにそんな傲慢な神のごとき彼らからその神の御業を盗む道具があったとしたら。

貴方は何に使いますか?



どこかの倉庫の中なのだろうか。

暗がりのアジトの中で木のテーブルの上に何かが置かれている。

拳銃。のようにも見えるが。少し違う。


そして拳銃のようなものが置かれたテーブルを挟んで二人の人間が対峙していた。

片方は金髪の少年兵のような小柄な人間。

少年だろうか。少女だろうか。

どちらにも見える。

頭には悪魔の角のような装飾を付けていた。

着脱式で外せるようになっている。


もう片方は屈強な男。

鉢巻には「無能力者解放同盟」と書かれている。

腕を組み難しそうな顔で向かい合っている少年兵を見る。


テーブルの上の銃を指さしながら少年兵の方が言った。


「お前ならこれをどう使う?」


いわゆるボブカットの髪に角が覗く、少年か少女かも区別のつかない華奢な体。

そんな彼(あえて彼と呼ばせてもらうが性別は分からないままだ)は悪魔の様な意地悪な笑みを浮かべる。

服装は幼い見た目とは反対に軍隊ででも使うかのような重厚なジャケットとズボン。そしてブーツだ。

ズボンには両側にホルスターがかけられ、今テーブルの上に置かれているものと同じ銃型の機器がおさまっている。

その少年か少女か分からない相手に、取引相手のいかつい男は言った。


「馬鹿馬鹿しい」


そう言ったら君はどうするかね?

1人でやってきているボブカットの小柄な少年兵とは違い。取引相手の後ろには私兵と思われる屈強な男たちが控えており、ニヤニヤと笑っている。

馬鹿にしている様子の相手を見た彼は言った。


「アンタ。戦場では真っ先に死ぬタイプだね。考えが浅すぎる」


取引は無しでいいかな。ローレルにはそう言っとくよ。

そう言って立ち上がった少年兵に対し、相手の男は慌てて非礼を詫びてくる。


「待ってくれ。それだけは困る」


彼の道具あってこその我々なのだから。

ローレルの名の強大さに彼は舌打ちした。


「はぁ。またローレルローレルって。やっぱ名前がカッコイイからかな~。僕もそういう名前にすればよかった」


そう言った彼は自分の名前を出す。


「ちなみに僕はバンビ。さっきも言ったけどもう一度言わせてもらおうかな。君が恐れるローレル様の忠実なる部下だよ。覚えといて欲しいな」


そう言われた相手は怯えている様子だ。

まあ忠実な部下ってのはフカシなんだけどね。忠実って柄じゃあないし、そもそも僕はせいぜい駒だ。

あの人にとって組む相手は僕でなくてもいい。

けど、それは今この目の前にいる捨て駒たちも同じことだ。

ローレルにとってはすべてが等しく駒。

僕とこいつになんの違いもありはしない。

そこまで考えたことを口には出さず。

胡散臭い笑みを作ってバンビは言った。


「じゃあ引き受けてくれるってことでいいのかな? それともデモンストレーションが必要かい?」


一人か二人か。射的の的として提供してくれるならこれの中身を見せるけど。

バンビの言葉に男は首を振る。

拒否されたバンビは残念そうに言った。


「はあ。ならアンタでいいや。って普段なら言うところなんだが。ローレル様の怒りを買うのは僕も嫌だからね。やめておくよ」


だからこの机で勘弁してやる。

そう言うが早いか、バンビは机の上にあった銃型の機器を手に取り、銃ならば上部にあるスライドに当たる部分を開いた。

銃であればそこから打ち終わった後の空薬莢が出てくるのだが、そこにあったのはまるでライトのような銀色の光だった。

そしてそのスライド部分を机に向けると銃部分の引き金を引く。

ライト部分の光によって『中身』を放ったのだ。

彼はよりによって放ってから言った。


「おっと、言い忘れていた。君たちはすぐに離れたまえ。巻き込まれたらおおごとだぞ」


バンビの口にはいたずらっぽい邪悪な笑みが浮かぶ。

対応はまちまちだった。急ぎ離れるもの、ぽかんとしている者。怯えてその場を動けないもの。

だが時は待ってくれない。

彼の言葉と共に机に変化が現れた。


始めは金粉を噴くように黄金が散り、ぱりぱりと音がして木の机が黄金に変化していく。

そしてそれは近くに居た人間にも影響があったのだった。


「ああ! 足が! 足が黄金に! なんで!」


「手が! なんだ! なんだこれは!」


あーごめんね。

始めて使ったから加減ちょっとわからなくてさ


バンビは全く申し訳ないと思っていない様子で言う。


「まあ。見れば分かると思うけど一応説明するね。この中身の弾は変化形の能力で変化先モチーフは黄金。だから『ミダス王の手』って勝手に名付けてたりするんだけど」


まあ聞いてないか。

バンビはつまらなそうに言った。

阿鼻叫喚そのものの状態である相手はそれどころではない。

そんな超常現象が起こっているのもさることながら。

狼狽する理由はもう一つあった。

手を黄金に変えられてしまった相手の指導者らしき男が言う。


「お前もドリーマーなのか! なぜ我々にこんなことをする!」


「うーん。さっき説明したでしょ?」


面倒になったのか、バンビはもう一度引き金を引く。

すると能力は解除され、黄金に変えられた机と手足はすべてが元に戻った。

彼は説明を続ける。


「こいつはその憎きドリーマー共から能力を奪えるの。それどころかこうして自由に使うことも出来る」


信じてもらえた?

恐怖からか首を縦に振ることしか出来なくなった相手の指導者の男に、バンビは言った。


「名付けてドリームキャッチャー。ああ、これはローレルが命名した名前だから。ダサいって思っても口に出すのは止した方がいいよ」


殺されちゃうかもね冗談じゃなく。

そう言ったバンビは続けて言う。


「さて、君たちには使い方も覚えてもらわなきゃだから。もう少し説明するね」


計画のためにせいぜい頑張ってくれよ。

こうして暗い倉庫の中でバンビの下賤な笑いが響くのであった。


***

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