14話
一方そのころ。
今度は敵陣営でもひと悶着あった。
バンビとローレルが揉めていたのだった。
揉めた原因となる物体を握り締めながらローレルは言う。
「なんだこれは? 夢見学園の教師陣に植物具現化能力持ちはいないぞ。……どこで手に入れた? ……説明しろ!」
もめごとのきっかけになったベイリーフ。
弾倉のような部分に装填する能力発動の種のようなもの。
それを握り締めながらローレルはバンビを睨む。
バンビはとっさに出まかせを言った。
「そっ……それは……。……能力者狩りで手に入れたのだから、関係な……」
ぱあん。という音と共にバンビの体が宙に飛ぶ
バンビは地にぺたりと腰をつけて、頬を押さえていた。
平手打ちを喰らったからだ。
「能力者狩りで手に入れたものでも報告書を書くように。そう言っているよな私は。事実他のものの報告は受けている。なぜこれだけ無いんだ?」
ローレルは冷たい目で見下ろす。
バンビはあの時とは全く違う様子で、まるで怯えた小鹿のようにプルプル震えながら言った。
「ごめん。言ってなくてごめんなさい」
学園で生徒から手に入れました。
怒られるかと思って。
そう言ったバンビにローレルは怒りをぶつけた。
「当たり前だ! 私の言ったことを覚えていなかったのか!」
覇気にバンビは怯えて縮みあがる。
それでも何とか言った
「『生徒には手を出すな。教師は好きにしていい。存分に暴れてこい』そう言ってた」
「よろしい。私の言ったことを覚える頭はあるようだな。だがね」
ローレルはもう一度平手を繰り出す。
ぱちん。という音が暗い建物内に響いたのち、彼は言った。
「理解できる頭が無いというのは困ったものだな」
完全に怯えているバンビに対し、少しは気が済んだのかローレルは言う。
「生徒には手を出すな。というのは殺すなということも当然含まれる。だがそれで十分ではない。能力を奪うなという意味もある事には気づかなかったのか?」
「ごめんなさい。ごめんなさい」
恐怖から会話も出来なくなったバンビにローレルは呆れたように言った。
「私は気づかなかったかどうか聞いているのだがね。……教育というのは難しいな」
まあ仕方のないことだ。
あの比類なき最上位の異能持ちである彼が
同じ能力者相手であっても苦労し骨を折っていたのだから。
無能力者の私には当然及ぶべくも無いか。
そう1人で結論づけたローレルは言う。
「もういい。これは私が返却してこよう。お前には任せられん」
それから。
ローレルは懐から出した拳銃のようなものの引き金を引いた。
それはバンビの持っているものとよく似ているが、いくつかの違いがある。
バレルに当たる部分が動かなかったのだ。
そして弾倉に入るベイリーフ。
能力の種も一つだけ。
つまり込められている能力はただ一つだけのタイプだ。
その能力を使用して、バンビの頬の傷を治したのだった。
彼は言う。
「お前はこのことは忘れてくれていい。次の指示があるまで待機しておけ」
ローレルは特に変装もせず、そのまま外へと出ていくのだった。