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『北風と太陽と速記者と原文帳』

作者: 成城速記部

北風と太陽が、どちらが強いか、勝負をすることになりました。

すると、一人の男が歩いてきましたので、あの男が手に持っている紙束を手放させたほうが勝ちということになりました。

いかにも変な勝負ですが、当人たちの取り決めですから、仕方ありません。

先攻は北風です。アルファベット順です。

北風は、男にびゅうびゅうと吹きつけました。紙束を手離させるのですから、妥当な戦術です。ところが、男は、意外なほど抵抗します。絶対にこの紙束だけは手離さないという決意があるかのようです。

実は、この男は速記者でした。さっき、仕事で速記をしてきたばかりで、家に帰ってすぐに反訳にかかれるように、読み返しをしながら歩いてきたところ、急に風が強くなったので、絶対に原文帳だけは手離さないという決意をしたのでした。

速記者は、亀のような形になって、原文帳を守り続けましたから、北風は疲れてしまい、太陽に順番を譲りました。

太陽は照りました。みりんを塗られたら照り焼きになってしまうのではないかというくらい、照りに照りました。

速記者は、暑くてたまりません。とめどなく汗が流れます。汗をふくものが何か…おお、原文帳があるではありませんか。速記者は、原文帳で汗をふき始めました。

 北風に飛ばされないよう、必死になって守った原文帳で、汗なんかふいていいのでしょうか。もちろん、いけません。速記者だって、そんなことはわかっています。速記文字が書かれたところを丁寧に取り除いてかばんに入れ、真っ白なところだけで汗をふきました。立派です。速記者のかがみです。あ、いや、そうでもないです。本当の速記者のかがみは、白いところでも、汗なんかふきません。

 速記者は、すっかり汗を吸って、どうしようもなくなった原文帳を、その辺に捨てて、再び歩き始めました。勝負がついたので、太陽は、いつもの照りに戻りました。



教訓:いい大人は、手ぬぐいとかハンカチ持とう。


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