第18話 前夜祭。
二日ぶりです。
さて、邪竜の牙が盗まれるという事件があったものの、街はそんなことがなかったかのように盛り上がりを見せていた。
そう、明日から一年に一度だけ行われる豊穣祭が行われるからだ。裏腹にヨメナたちは少し忙しそうではあったが、俺は協力しようにも出来ないので、事件が解決することを祈るばかりだ。
既に俺も含めてフレデリアたちも出かける準備はできているみたいだ。一体準備をして何処に行こうとしているんだと疑問に思うことだろう。豊穣祭は明日だというのに。
実は豊穣祭は明日なのだが、この豊穣祭には前夜祭というものが存在して、街のみんなが明日の祭りを盛り上げるために英気を養う意味合いで行われている。なので発祥当時は街の人のみだけの集まりだったが、今では外の人にもこの情報が知られていて、前夜祭から祭りを楽しもうと早めにやって来る人たちは少なくない。
しかし基本は明日からなのでやっている店が少なかったり、やっていても他に出向いていたりと結構ルーズなところもあるが、こうやっていざ外に出てみるとそれでもかなり盛況しているようだった。
「わぁ……凄いわっ!」
王都などでも滅多にお目に掛かることのない盛り上がりようをみてフレデリアは目をキラキラさせている。それを見てガーネットは微笑みながら話し始めた。
「この景色を観るのも久しぶりねー」
「そこまでじゃない?冒険者学校時代にみんなで花火見たじゃない」
「そりゃヨメナはエルフだから価値観も違うか……まあ、私たち人間にとってはそれでも結構昔なんだよ」
「なんかごめんなさいガーネット」
「謝る必要なんかないぞ。私はいかなる方法でも使ってヨメナたちエルフみたいに千年とかは無理でも獣人たち並みに生きるって決めてるんだ」
「確かにガーネットならいけそうな気がするわ」
「おうっ、将来楽しみにしといてくれよ」
「ふふっ、楽しみにしとくわ」
そう言ってヨメナは再び歩き始めた。それに付随して俺たちもセットで歩き出す。
それにしても目立つ集団だこと。ヨメナとガーネットだけで集客効果は抜群なのに、その二人に似た子供二人に可愛らしいメイドが三人もいるとなると、まさに鬼に金棒だ。
これが居酒屋であればその居酒屋は大成したに違いないだろう。
「シアは気になるお店とかある?」
「うーん、特にない。フレデリアは?」
「私はあの店が気になるわ!」
そう言って指を刺した店を見ると、武具や防具を取り扱っているお店だった。まあ、フレデリアのことだから見るまでもなくこういうお店だと分かっていたが……性格が俺よりも男らしく、もしかして前世が男だったのって俺じゃなくてフレデリア!?なんて疑ってしまいたくなる。
そんな冗談はそこまでにして。
この店に置かれている品は天下一品とまではいかないものの、祭で出しているのもあって中々の品が揃っていた。
此処にあるものであれば一般的な冒険者ならば、手入れを怠らなければ長く使い続けることが可能だろう。
流石にフレデリアが扱うには時期尚早な気がするが。
「ママ、寄ってみても良い!?」
明日また同じくらいの時間帯に投稿出来ればと……