第13話 酒場。
眠いです……。
「ぷはぁ、最高っ!店員さんおかわり!」
「かしこまりましたー」
すぐに専用の樽から麦酒を注ぎ満杯になったジョッキがガーネットが一瞬で空にしたジョッキと交換された。新しくなったジョッキの淵から溢れてくる泡は麦酒だけの醍醐味である。
「ごゆっくりどうぞ」
「うん、ありがとねー」
お辞儀して戻るところを手を振って送り返す。その店員はカウンターに戻り、別のテーブルの料理を運び始めた。
ガーネットはそのまま二杯を飲み干す勢いで飲み始めたが、ヨメナによってそれは叶わなかった。
「ちょっと、飲み過ぎよ。久しぶりに会ったけど飲みっぷりに関しては相変わらずね」
「そうでしょ?これでも子育てやらなんやらで意外と久しぶりなんだけどね」
「へー、意外、冒険者時代は依頼後に酒場でよく同業者とかと飲んでたのに」
「まあね、だから今日くらいはいいでしょ?」
「明日も用あるんでしょ?ほどほどにして頂戴」
「りょーかい」
そう言いながら再びジョッキを握り飲み始めた。
「ねえ、シア、このお肉美味しいわよ!食べてみなさい!」
「う、うん」
「では私が取り分けるので」
そう言ってティアが食べやすい大きさに切ってくれた肉をフォークで刺して口に入れた。うん、うまい。しっかりと臭みが消えていて子供でも食べやすい塩見加減となっている。
「おいしいよ、フレデリア」
「そうよね!じゃあ私のお肉も少し分けてあげる!」
俺の為に自分の皿にある肉を小切りにして、その一枚をフォークで俺の口元まで持ってくる。謂わゆるあーんというやつだ。
確かに美味しけど、少食なのでこればかり食べてると他の料理が食べられなくなってしまう。
まあ、一枚くらいいいか。こんなにキラキラした目で見られたら断れないし。
「ありがと」
お礼だけ言って目の前にあるお肉にかぶり付いた。フレデリアはそれを見て満足したのか、嬉しそうにお肉を頬張り始めた。
あの後は何もないままヨメナの依頼も無事に終わり、この通りみんな揃って地元民ならではの穴場である酒場で飯を食べている。ゲオイル先生やリデアを誘ったが何やら用があるみたいで、ゲオイル先生は不参加、リデアは後に遅れて合流する形となっている。
なのでこの場にいるのは酒を飲むガーネット、それを見張るヨメナ、そして三歳とは思えないほど運ばれた料理を食べまくるフレデリアと俺、その面倒をみるティアとミラのメイド二人、計六名である。
「フレデリア様、もっと行儀良くお食べください、口にソースが付いてますよ」
ミラが口についたソースをナプキンで拭き取る。しかし再び食べ始めると頬にまたソースやらなんやら付いて汚れるので、随分と手間が掛かりそうだ。
それを眺めて苦笑いしていると、ティアが目の前に取り皿をおき、スプーンとフォークを手に取る。
皿の中は色とりどりになっていて、野菜やお肉、魚なども小分けにして盛られていた。うげっ、俺の苦手な野菜も入ってる。
しかし俺の胃の容量を考慮してあり、食べ切れる分にしっかりとなっている。
「シア様はしっかりお野菜も食べてくださいね」
「むむ、わかってる。でもしっかり食べたらあまいものたのんでいい?」
ここは漬け込むように可愛くおねだりだ。これで甘いデザートやお菓子が食べれるなら安いものだろう。
「っ!分かりました。しっかり食べてくださいね」
「わーい!ありがとう!」
やった甲斐があったもんだ。俺はティアからフォークを握り、上手い具合に苦手なものを避けながら食べ進めた。
「シア様、トマトだけ避けないでください」
「ぐぬぬ」
「そうなの?私はちゃんと食べれるわよ!」
そう言いながら別の皿に盛られていた一口サイズのトマトをぱくりと口に放り込んだ。
「でもフレデリア様はサラダに入っているコーンが苦手ですよね」
「ちょっ、言わないでよミラ!」
「大丈夫ですよ、シア様もコーンは苦手ですから」
「そうなのね、私たち同じね!」
「う、うん」
しかしどうしたものか。このままお姉ちゃんだからって食べてくれるのを期待していたのに。目の前にあるテカテカした身がぎっしり詰まっているトマトと睨めっこする。
いざ勝負っ!
口に放り込むと同時にトマトの果汁がぷつりと潰れて口一杯に広がった。ティアが前もって用意してくれていた水を口直しで懸命に流し込んだ。
「ぷはぁ……」
「シア良くできました」
涙目の俺を見てティアは頭を撫でてくれた。
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