第11話 小さな冒険という名の迷子。
さて、小さな姉妹の冒険が幕を上げます。
フレデリアに連れられてものの数分。俺たちは恐らく迷子というやつになっていた。
「フレデリアはトイレの場所本当に分かってるの?」
「今回は少し道を間違えただけだわ!それに私のことはお姉ちゃんと呼んでちょうだい!」
「わかったよお姉ちゃん」
「うん、私に任せて頂戴!」
自信ありげに話しているが、これ絶対トイレの場所分かってないんだよね。まあ、近いトイレには行けなそうだけど練り歩けばどこかのトイレには辿り着くだろう。
それまで俺の膀胱は耐えてくれるだろうか。いや、男としてここは耐えるしかない。ここで漏らすのは人生の黒歴史として大きくなったときネタにされかねない。マジで頼むよマイお姉ちゃんよ。
「じゃあ次はこっち行くわよ!」
「うん」
手前の角を右に曲がり更に左、右と曲がっていく。すると、その道を通せんぼうするように、学校の関係者らしき女性が立っていた。見張り役だろうか?だとしたらここから先生徒が出入りするところか、試合を見に来た冒険者が出入りする場所なのだろう。
奥の方にチラッと冒険らしき姿がみえたので恐らく後者だろう。
「あら、珍しいお客さん。ここから先は危ないかもしれないから通ったらダメよ」
「ごめんなさい」
「私たちトイレ探してるの!」
「トイレ?トイレならあっち側にも近くにあった筈なんだけど……しょうがないか、トイレだけならそこを曲がればすぐにあるから済ましたら急いで戻ってきてね」
「「はーい」」
やっとトイレに行ける。漏らさずに済みそうだ。
フレデリアと共に小走りでトイレに駆け込んだ。
「ちょっと、こっちは男子トイレよ!」
「……ごめんつい」
幸いな事に誰もおらず、気を取り直して女子トイレに入った。
「ふぅ……」
間に合った……。
二年と半年ほどが経ってこの感触にも慣れたものだ。それでもこうやって平地になった自分の股を見るとたまに虚しくなる時が無くなった訳ではない。
下着を履き直し、水を流してから個室から出る。
「お姉ちゃん、先にでてまってる」
「分かったー」
先に手を洗い、水気を軽く払ってからトイレを後にした。
そのまま先程のお姉さんのところまで戻って待とうと思ったが、俺たち以外の誰かの足音が近くに二つほど聞こえた気がしたので、心配からトイレの中に戻って待つ事にした。
その足音の正体である二人は男子トイレの方へ入った音がしたので、取り敢えずばたりと出くわすことは無さそうだ。
「シトレア待たせたわ」
「シアでいいよ」
「そう、シア戻るわよ!」
「うん」
見張りをしていた女性に御礼を伝えてから、来た道を手を繋ぎながら戻る。
(さっきの二人、トイレの中で魔法を使用した痕跡があった。少し気になるな)
二人いるなら一つや二つ会話があってもいいだろうに。トイレに入る音がしてからまるで何も音がしなかった。まさか遮断魔法でも使ったか?
「何かあったの?」
「うん、けど大丈夫」
「そうなのね。あ、みて、ママたちがいるわよ!こっちよ、ママ!」
やっとフレデリアが道を知らないことに気づいたか。安心した様子のガーネットをみて、何故か一人だけ俺に抱きつきながら泣いているティアを泣き止ませるのに俺はすごい手を焼いた。
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