DQN団地乗っ取り計画~最後の戦い~
俺たちの町で、一際迷惑な連中ばかりが集まる通称「DQN団地」。
その扱いに手を焼き、DQNを一掃して全部を売り払い、再開発したいというのがオーナーの意向であった。
そしてそのDQNをどうにかする仕事を、現代人基準では「DQNなんか可愛く見える」鎌倉武士が行っていた。
聞くに、鎌倉時代は「税を取り立てようとしたら、寺に逃げて僧兵を連れて来たり、一斉に山に籠ったり、動物の死骸を撒いて『死穢があるので納税出来ません』と言ったり、隣の領土をわざと荒して争乱を引き起こして有耶無耶にしようとしたり、もっと(物理的に)面倒な者ばかり」だったそうで、現代のDQNなんかは赤子の手をひねるようなものだそうで。
だが、鎌倉武士と似たり寄ったりのヤバい者も、この現代社会には棲んでいる。
外国人だ。
先進国とか西側と呼ばれる国でなければ、海外は今も鎌倉時代、下手をしたら呪いや迷信が色濃い上に軍閥がただの野盗でしかない平安時代並の国が残っている。
そんな中で、日本に働きに来るのは上澄みも上澄み、相当に行儀が良い人たちが多いのだが、中にはその近さ故に密入国をし、日本国内で非合法活動に手を染める連中もいる。
日本にも「ヤ」の付く特殊自営業が、そういった連中を抑え込んでいた。
しかし対策法が出来た後は弱体化し、自国基準で「盗む時は行き掛けの駄賃で殺しをする」とか「殺した人になり済まして、一切合切を奪い取ってしまう」という事をやってのける凶暴さに、太刀打ち出来なくなって来た。
日本人はお上品過ぎて、外国人の凶暴さに負けてしまっている。
……80年前までは、彼等がチビって逃げ出すような戦闘民族だったのに、戦後教育が実に効力を発揮したようで。
今、DQN団地に居座っている最大の敵が、その外国人なのだ。
密入国させた同胞を密かに住まわせる、密集して住まわせた弱い立場の同胞を3Kと呼ばれる職場にほぼ人身売買で売り渡す、この団地で性的サービスをさせる、犯罪の結果逃げている者を密出国までの間一時的に隠しておく、等等治外法権な事をしていた。
鎌倉武士の倅・六郎同様に、何部屋も、違う棟までも所有している。
目立たないよう表立っては行動していないが、既に警察からは目をつけられていた。
そこに鎌倉武士が入居し、日本人の「まだしも可愛い」DQNを追い出し終わった後は、この凶悪な連中と血で血を洗う抗争を繰り広げていたのだ。
実は鎌倉武士側も、雑色が何人か暗殺された「ようだ」。
伝聞なのは、死体も生体も見つからないまま消息不明となっているからである。
まあ鎌倉武士からしたら、名も無い雑色が居なくなった所でどうとも思わなかったりする。
「何ですか?
日本の法律が通じない外国人の犯罪者たち。
そしてどういう訳か過去から現れた日本の法律の適用外の武士たち。
そんなのが争っているんですか?
この先、一体どうなるんですかね?」
「勝った方が我々の頭痛の種になるだけだ」
これは警察内で交わされた会話だ、とまことしやかに囁かれている。
「銃とか撃って来たら、流石の鎌倉武士でも死ぬしなあ」
一般市民が少なくなった事で、かえって抗争が過激になったDQN団地。
たまに銃声が聞こえるとか、切り落とされた腕が落ちているとか、爆弾が使用されたとか、兎に角本格的に危険になっている。
一部屋ごとに戦闘が発生しているとか、どこのスターリングラードだよって様相だ。
俺も簡単には出向けなくなった為、いつも通り俺の家でくつろいでいる譲念和尚に話す。
あそこには身体的にはハンディキャップがある慈悟僧侶も住んでいるし、あそこまで物騒になれば避難させた方が良い。
しかし
「武士が敵に背を見せる事はならぬ」
とか言ってる。
いや、あの人はあんたと同じ出家の僧侶だから。
武士とか言っちゃダメでしょ。
「ところで、この吉良は上野介と言うておるが、上総介の誤りではないか?」
親父と忠臣蔵の放送を見ていた譲念が聞いて来る。
「え?
吉良は上野介ですが?」
「はて?
三河の吉良殿であろう?
なれば上総介じゃ。
弟ならば左馬四郎と名乗っておるしな。
して、何故に斯様な仕儀に至った?」
討ち入りのシーンである。
まあ戦闘法がなっていないとか、太鼓を鳴らすとは言語道断とか、ブツブツ文句を言っている。
それは芝居だから!
あと、
「合戦なれば、まずは付け火をして、慌てた敵が門より出るを後ろから射殺す。
退路を断てば死に物狂いになる故、あえて正面は空けてみせ、逃げたるを後ろより易々と殺す」
とか具体的な戦術指南、聞いてませんので!
とりあえず、忠臣蔵に至る事情を説明した。
フィクションの話と、最近の吉良上野介に同情的な話も交えて話すが、
「大石とやらが正しい」
とどっちの説でもそう言っていた。
「主君が腹を切ったのなら、仇を討つのが当然の事。
むしろ一年も時を掛けたのが女々しい。
お家再興等、邪念も良いところ。
恥をかかされたなら、即座に討つべし!」
こんな事言ってやがった。
その日はDQN団地の話はちょっとしただけで、忠臣蔵論議をして譲念は帰っていった。
俺は気づくべきだった。
あいつらが赤穂浪士以上の危険な存在で、ヒントを与えたらやってしまう事に。
DQN団地で敵は、既に外国人のヤバい奴等のみ。
六郎は任された以上自分でやり遂げる気で、報告・連絡・相談をあまりしていないようだ。
俺から事情を聞いて
「そいつらさえ始末すれば良いという事か」
なんて譲念が頷いていたし、物騒な予感はしたよ。
しかし彼等は即日動いた。
0時を回り、夜明け前よりもう少し早い深夜、彼等はもう攻撃に打って出た。
誰もが寝静まっている中、DQN団地に火の手が上がる。
今動員出来る戦力全部を使って、彼等はDQN団地に討ち入りをしたのだ。
そして真っ先に火矢を放つ。
弁慶七つ道具のような巨大木槌でドアと言わず、窓でもどこでも破壊して開ける。
中に斬り込みなんかしない。
松明を投げ込み、矢を射る。
「九郎判官殿の如き戦をしたのみ」
後からそう聞いたけど、確か義経の戦術って鎌倉武士は嫌がっていなかったか?
「何を言うておる?
九郎判官殿を嫌うたのは、手柄を独り占めされたからじゃぞ。
戦ぶりは皆が認め、今でも手本としておる」
そうだったのか、意外な事実。
まあ、この人たちだけかもしれないから、割り引いて聞いておこう。
兎に角、義経流の「奇襲を掛け、相手が冷静になる前に皆殺しにする」を全軍で徹底して行った結果、一晩にしてDQN団地は制圧される。
外国人たちがどうなったのかは、聞かない事にしよう。
野次馬をしていた人から、
「馬に、藁で梱包された人のようなものが積まれて、どこかに運び出されていた」
なんて聞いたし、隣の武家屋敷の門前に血痕のようなものが点々と続いていたのを、雑色たちが掃き消していたけど、あーあー俺は何も見てない、聞いていない。
こうして最後は盛大に資産価値を下げるような戦闘を行って、DQN団地は完全に鎌倉武士の手に落ちた。
彼等は即座に弁護士を通じ、これをオーナーに売って替地を入手する。
建物は火災でボロボロになっていたが、元から解体予定だった為、文句は思いっ切り言われたし、礼金も支払われなかったが、鎌倉武士からしたら金より土地だから大きな問題ではない。
オーナーや管理会社は黙っていたが、既に抗争が激しくなった時点で、頼み込んで転居して貰うDQNじゃない人たちが自主的に引っ越し(脱出)して行ったから、転居先を紹介する手間は省けているんだよな。
警察も、元から手が出せなかった為、今更「決闘罪がどうの、放火はどうの」と言っても無視されている。
ここにDQN団地は陥落した。
……血で赤く塗装されて。
おまけ:
太陽暦と太陰暦の違いはありますが、今日は12月14日なのでこのネタでいきました。
全く関係無いですが、今YouTubeで「獣拳戦隊ゲキレンジャー」の配信してますが、
第33話「フレフレガッチリ!カンフー忠臣蔵」の回を楽しみにしてます。
怪人に取り憑かれた吉良上野介が、赤穂浪士を返り討ちにする話
(実際は誰がどうなって、どうしてこうなったのか、とネタバレ回避してます)。
興味持った方は、是非見てみて下さい。
……この話とか「必殺仕事人意外伝 主水、第七騎兵隊と闘う 大利根ウエスタン月夜」とか、「劇場版 仮面ライダーオーズ WONDERFUL 将軍と21のコアメダル」とか、歴史でバラエティーやるなら、これくらいハチャメチャにやった方が良いですよね。
商業でこれが許されるのなら、素人ネット小説なら本来もっと色々やっても良いわけで。




