元服の儀
注意! 100%ネタ回です。
こんな風習武家にありませんので、ネタをネタとして理解して下さい。
(有りそうでは有るが)
隣の武家屋敷にて、七男坊の元服が行われる、らしい。
らしいというのは、ある試練が課され、それをクリアしたら大人として認めるらしい。
それが
「首狩りじゃーー!!」
という、お前ら古代スパルタ人か? てな習わしであった。
ルールは飛び道具禁止、討つ時は郎党の力を借りる事禁止、生け捕り禁止、返り討ちにされても知らぬ、という物騒な儀式である。
実際、返り討ちに遭って元服前に命を落とした者も居るとか。
弱い者は合戦において味方の穴になるから、だったら元服せずに出家するか、さっさと死ね、という思考らしい。
その方が何かと手間が省けるようで。
「我等が奪い取った荘に住んで居った何某の残党が、またしても故地の近くに戻ったそうじゃ。
彼奴ら、我等を討ち取った者が頭目となる誓いを立て、我等に戦いを挑むそうじゃ。
逃げ延び、その誓いを立てた地の名前を取って、このように名乗っておる」
そこには「出崎軍団」と書いてあった。
未来衆首座として元服に立ち会えと言われた俺も、このやり取りの場に居る。
「……これは何て読むんですか?
デルザ……?」
「デルザキとは読まんじゃろう。
民部殿、何と読むのじゃ?」
「デサキと読むかと」
「何となくデルザの方がしっくり来ると思わんか?」
話が逸れてしまったが、このデルザ……出崎軍団の幹部の首を持って来れば、この家を守護する天と、地に住む領民と、仕える人の全てに認められるそうだ。
実に面倒臭くて物騒な元服の条件である。
なお六郎が元服する時は、国府や一宮といった重要な場所を荒らした十人の盗賊衆・十面鬼を一人で退治したという。
取った首を供養し、その者の命を自分の物とする儀式を執り行う。
だから挙げる首は、強者のものである程良い。
あの病弱だった亡き三郎ですら、山の祠を棲家としていて「神」や「呪」と名乗っていた賊を斬っている。
曽祖父辺りは
「平家! 許 ざ ん !!」
だったそうで、代々武辺を認めないと武士として認めない慣わしだそうだ。
「亮太殿も介添人頼む」
「は?
いや、自分弱いですよ。
役に立たない、足手纏いで」
「知恵を貸してくれればそれで良い」
結局拒否権は無いようだ。
とりあえず俺も、無防備で行く訳にはいかない。
とある合法的秘密兵器を仕込んで行く。
そして上手い事三連休に出動出来た。
随行は俺の他、武勇の郎党・又三郎と殺人狂の外道坊。
「こんな素敵な成人の儀式があるなんて、素晴らしい!」
殺人狂の白人が嬉しそうに語り、寡黙だが気が合うようで又三郎も頷いている。
……鎌倉武士でも絶対、ここの家だけだろ!
そしてアジトを突き止めると、まずは鏑矢を放って「戦闘開始を宣告したよ」というアリバイを作った後、火矢を放って放火。
相手が飛び出して来るまでは飛び道具OKのようで、線引きがイマイチ分かりづらい。
相手が驚いて出て来たら、七郎が名乗りを挙げる。
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ。
お前を倒せとわしを呼ぶ。
聞け! 我が名は……って名乗りの最中ぞ!」
敵からしたら知った事ではない。
奇襲を掛けられたのだから、既に正々堂々とか武士の誇りとか言っても意味が無い。
大体、先祖の方が悪辣な手段で相手を滅ぼしているのだし、恨まれて当然に思ってるんだけどね。
相手は木樵の斧を持つ荒鷲と呼ばれる男、鎌を使う髑髏と呼ばれる男、そして分銅鎖を使う黒鉄と呼ばれる男だった。
三人とも強く、七郎は押され気味、又三郎と外道坊は互角な感じである。
七郎は一対一で勝たないと認められないが、このままでは返り討ちに遭うのではないか。
だが、俺も傍観者では居られない。
「おい……」
背後から刀を突き付けられた。
「お主は何だ?
お主からは圧を丸で感じぬ。
武士ではあるまい。
僧か? ただの雑色か?」
病気なのか、顔の皮が爛れた坊主頭の者が聞いて来た。
「た……ただの見物人……です」
「じゃが、あの者どもと共に来たではないか。
彼奴等とどういう関係じゃ?」
「お……お隣さん……です」
「ふむ。
まあ良い。
お主を人質に取らせて貰おう」
いざとなると動けないものだ。
折角準備した秘密兵器も手に取れない。
「む?
その奇っ怪なものは何じゃ?
寄越せ!」
その男は俺の武器を手に取った。
「ぐ、あ……」
無知って怖いね。
スイッチを入れたスタンガンの接触部分を自分から触ってしまった。
ドサッと倒れるその男。
「影!
一体どうした?」
他三人の気が逸れる。
その瞬間
「隙あり!」
と七郎の太刀が荒鷲と言われた男を断つ。
「不覚……」
その男は斧を落として膝から崩れる。
致命傷だろう。
他の二人は戦闘を放棄して逃げに入る。
致命傷の荒鷲は置いて、トドメを刺せずにボーっと立っている俺を跳ね飛ばし、影と呼ばれた男を助け起こした。
「大丈夫か?
如何した?」
「あの……奇っ怪人に妖術を使われた……」
失礼な、誰が奇っ怪人だよ。
三人は俺にも警戒しながら、林の奥に去っていく。
俺はそちらを見ていて良かった。
何故なら、七郎による荒鷲とやらの首狩りシーンを見ずに済んだからだ。
「取ったどーー!」
興奮の余り舌が回ってない感じであっが、大喜びしているのが伝わって来る。
「若、これで一人前じゃな」
「いつ見ても斬首はそそるぜ」
人殺しが平気な連中が称賛している。
こうして七郎は無事、元服出来る事になった。
そして、元服の前日。
生首を囲んで護摩を焚き、呪文を唱える何やら儀式のようなものをやってる。
こういうのは真言宗立川流……いや髑髏本尊をやるのは実は違って「彼の法」と呼ばれる邪教が有るとか無いとか。
……どう見てもこっちの方が悪の組織に見えるし……。
俺の知らない場所で、雑色たちの挨拶は右手を掲げて「イーッ!」ってなっていても驚かないぞ。
「これでお主には加護が付いた。
これよりは我が家の為に存分に働け!」
「父上の仰せのままに!」
「若、おめでとう御座る」
「おめでとう御座る!」
こんな盛り上がりの中、七郎の弟の八郎が呟く。
「わし、このノリだけは慣れないのじゃが……。
じゃから出家し、まともな仏法に帰依したい」
俺は八郎に全面賛成であった。
おまけ:
たまにはこういうおふざけもさせてくれ!!!!
(ネタをしたいからジャンル「コメディ」にしたので)
をや、カナだけだ。




