Case 99「チート」
新学期が始まって1カ月が経った。もうすぐ入学から半年後の魔法検査の日になる。みんな魔法の使い方やどんな魔法が使えるかを確認している。誰かが放った放水魔法が制服のズボンのあろうことか股間の部分にかかったこともあった。
未青「うわあ!」
(水がかかる音)
(未青の制服のズボンの股間の部分が濡れており、床には水たまりができている)
クラスメイトA「おい赤砂~。お前また漏らしたのかよ~。」
クラスメイトB「違うんだよ俺がさっき放った水が赤砂にかかったんだよ。悪りぃ悪りぃ。」
未青「いいよ別に。ボクのズボンが濡れるのなんて当たり前のことだから。」
入学して半年。クラスの中でも友達同士の輪がいくつか出来上がってきているところがある。実際ボクもクラス内ではコトレフちゃんと一緒に行動するようになって、しばらくが経つ。そんなボクも今までに習得したいろいろな魔法をコトレフちゃんに見てもらったことがある。
(瞬風魔法で高速で移動しながら刃を飛ばし、旋刃魔法テスト用の竹棒を連続で斬る未青)
「わあパーフェクトじゃん!未青くん凄いよ!」
(瞬風魔法を解き止まる未青)「えへへ。ありがとうコトレフちゃん。」
「未青くんって入学前にもいろいろ魔法を勉強をしてたって聞いてるけど、どれくらいやってたの?」
「2年だよ。家庭教師さん迎えてたんだ。」
「そうなんだ… 家庭教師でここまでできるなんて凄いよ未青くん…」
「そうかな?結構本格的にやってたんだけど。」
「良い先生引き当てたじゃん。」
その後もコトレフちゃんにいろいろ魔法を見てもらった。水砲魔法・岩壁魔法・炎幕魔法など、属性関係なくいろいろ見てもらった。あと上級寄りの治癒系魔法もいくつか…
「これ魔法検査で優勝狙えるよ!」
「魔法検査って優勝争うものだったっけ?」
「違うのは分かってるんだけど… 今の未青くんの様子見てたら行ける気しかしなくて。」
「そうかなぁ…(苦笑)」
そして迎えた魔法検査の日。1年の全クラスが合同でやる上に、順番も1年の全クラスひっくるめて出席番号順に並ぶからか、カロルやネルルと話す時間的余地はなかった。
(ちなみに2年以上の学年は今日は特別休校日だという)
未青の前に並ぶ女子「よろしくね。」
未青「よろしく。」
こうして朝9時30分。魔法検査が始まった。これからボクたちは5つの課題に挑むことになる。
まず1つ目の課題は、空間魔法を用いて1kmの距離に置かれた薪についている火を、水系の魔法で消すという課題だ。
1kmという距離。3年生くらいの人なら水砲魔法でも狙える距離だが、まだ1年生のボクたちなら威力を強めにした放水魔法でないと届かないところがある。しかも威力を強めにするとその分体力の消費も多くなるから、その辺を考えないといけない。まあでもほとんどの人は放水魔法を使っているのだが。
(小さめか中くらいの水砲魔法でならいけるかな?)
と考えたボク。水砲魔法は球の大きさが大きければ大きいほどその分消費する体力の量も大きくなるが、当たり前だがそれは裏を返せば大きさが小さければ体力消費量も小さくなることを意味している。
監督の先生A「次どうぞ。」
未青「はい。」
(指定された線の内側に立つ未青)
ボクは念じて手の前にハンドボールの球くらいの大きさの水の球を出した。
(うーんこれはちょっと火を消すには小さすぎるかな…?)
そう思ったボクは水の球を少し少し大きくする。最終的に水の球はバスケットボールくらいの大きさになった。
生徒A「あいつ… 水砲魔法で行く気か?」
(行ける!)
と思ったボクは、その水の球を火めがけて放った。
(火がついている薪に水がかかる音)
火は一発で消すことができた。
監督の先生A「おめでとうございます。クリアです。」
(周りにいる生徒たちの拍手)
未青「ありがとうございました。」
周りの目線がちょっと恥ずかしい中で、ボクは次の課題の場所へ向かう。
2つ目の課題は体育館で行われる。突風を起こし、空間魔法を用いて2km先に置かれたテレビくらいの大きさの分厚い石を飛ばすことができるかという課題だ。
監督の先生B「次の方どうぞ。」
未青「はい。よろしくお願いします。」
(指定された線の内側に立つ未青)
さっきと同じく的当てみたいな課題であるが、火を消すのと石を飛ばすのとでは勝手が違う。魔法体育の授業で「テレビくらいの大きさの石を飛ばす」ということ自体はやったことがあるが、2kmも距離が離れていて分厚い石ということで、それなりに重さがあるのは言うまでもない。
(生半可な風じゃ飛ばせないだろうな…)
とボクは考えていた。魔力を強く込める必要があるだろう。
手を前に出して、小さなつむじ風を出すボク。そのつむじ風に魔力を込めると、つむじ風はどんどん大きくなっていく。
そのつむじ風が1mくらいの大きさになった頃…
(今だ!)
ボクは突風魔法を用いてそのつむじ風を、2km先の石目がけて飛ばした。
そして…
(石が落ちる音)
つむじ風は石に命中し、その石は地面に落ちた。
監督の先生B「よくできました。これで終了です。」
未青「ありがとうございました。」
(周りの生徒たちの拍手)
たまたま近くにいたコトレフちゃんと合流するボク。魔力を多く使ったからか、お腹が空いた。
「次は食べ物を使うのだよ。」
とコトレフちゃんは言う。
「そんなのあるの?食べ物を使った課題ってどんなのだろう?念力で食べるのかな?」
「違うけど、見れば分かるから。」
3つ目の課題は家庭科室で行われる。念力魔法を使って、チャーハンの具材をご飯粒一粒も落とすことなくフライパンの上でひっくり返すという課題だ。
家庭科室に入るボクたち。チャーハンを焼く音が聞こえてくる。とても美味しそうで、空腹感が加速する。
「お腹空いちゃったよ…(苦笑)」
「私も…(苦笑)」
落としたご飯粒や具材の数だけ減点になるこの課題。正確性がなによりも試される。しかもチャーハンを作るのは初めてなボクだから、家庭科室の入口近くのタブレット端末で、ひっくり返し方を何度も見て確認した。
(未青のお腹が鳴る音)
ボクの番になる。
(チャーハンを焼く音)
監督の先生C「さあ、どうぞ。」
未青(よーし…)
タブレット端末で見た動きを頭に思い描きながら、ボクは念力でフライパンを動かした。
(えいっ!)
フライパンを大きく動かすボク。フライパンの上で、チャーハンの具材が飛ぶ。
(フライパンの上にチャーハンの具材が落ちる音)
フライパンからは、具材は一つたりとも落ちることはなかった。
監督の先生C「おめでとうございます。減点はなしです。」
未青「ありがとうございます。」
(他の生徒たちの拍手)
もらったチャーハンを学校の学食で食べ終えた後、4つ目の課題へ向かう。その4つ目の課題は、雷魔法を用いて電球に電気をつける課題だ。
豆電球ではなく普通の電球であるため、電力が強くないとはっきり電気はつかないため、銅線に強めの電力を流す必要がある。しかしその威力があまりにも強いと、電球が壊れたり戻ってきた電力で感電してしまう恐れがあるため、そのことに気をつけなければならない。
監督の先生D「では、お願いします。」
未青「はい。」
銅線の裸になった部分を握りしめ、念じて雷魔法を流す。
すると、電球にパッと電気がついた。はっきり分かるほどに。
監督の先生D「OKです。ありがとうございました。」
未青「ありがとうございました。」
コトレフ「未青くん一瞬でこれとか凄いよ!私なんかはっきり電気がつくまで5秒くらいかかっちゃったよ…(苦笑)」
朝から続く魔法検査も最後の課題だ。その最後の課題は、迫ってくる岩の壁に穴をくり抜いてくぐり抜けるというものだ。
監督の先生E「では、参ります。」
未青「お願いします!」
そして監督の先生の召喚魔法によって岩の壁が放たれる。
壁がこっちに迫ってきているが、前の世界で見たことのあるバラエティー番組にそんなのがあった気がする。
ボクはその壁に瞬風魔法と彫刻魔法を組み合わせて高速で人型にくり抜いて穴をあけ、その壁をくぐり抜けた。
(あちこちから拍手が上がる)
迫ってくる壁の穴をくぐり抜ける。もう完全にあれだ。
そして全ての課題が終わった。しばらくして全員が終わり、時刻は夕方の4時過ぎだ。
最後の終わりの挨拶。そこでは1年の学年主任の先生から、驚くべき言葉が飛び出した。
「満点の人がいました。その人はなんと…」
そこかしこで「誰?」「誰だ?」という言葉が起こる。
そして…
「発表します。」
(固唾を飲む未青)
「4組の、赤砂未青君です。」
「ええっボク!?」
魔法検査で満点を取った人。それはなんと他でもなくボクだった。ボクにはそれが一番信じられなかった。
しかも1年生で満点を取った人は、なんとおよそ20年ぶりのことなんだという。
生徒A「あの赤砂ってやつチートだよマジで…」
生徒B「間違いない。あいつはマジもんのチートだ。」
生徒C「からかう気力もねえ…」
そこかしこでチートチートという言葉が起こる。ボクも前の世界でいろいろ見てきた異世界転生ものの作品でよくあるチートだが、ボクのチートは時間をかけて魔法を習得してきたことによるものかもしれない。だがやはりチートチートと持てはやされるのは恥ずかしい。
家に帰ってそのことをセンセイに報告したボク。そんなセンセイも…
「凄いじゃん未青くん!未青くん本当にチートってやつだよ!」
と。びっくりしながら言っていた。
それから数日後。
(あああっ…!で、出ちゃう…!出ちゃう…!!)
(ジュウウ… ジュウウ… ジュウウウウウウウウウウウウウウウウウ…)
(ビチャビチャビチャビチャビチャビチャ…)
土属性魔法応用の小テスト中、テスト終了の時間まで我慢しきれずおもらしをしてしまったボク。運よくテスト問題自体は解き終わっていたから、影響はなかったのだが…。
さらに数日後。
土属性魔法応用担当の先生「この間の土属性魔法の小テスト、赤砂君だけが満点でした。赤砂君はこの間の魔法検査でも満点を取っています。赤砂君の力は土台がしっかりしているものと言えるでしょう。」
クラスメイトE「おい待て赤砂テスト中に漏らしてたけど、漏らした時点で既に全部解き終わってたってこと?」
クラスメイトF「膀胱以外最強の男なのかもな。」
(未青以外のクラスメイトが爆笑する)
そのクラスメイトの『膀胱以外最強の男』という言葉に沸き立ったクラス。
コトレフ「未青くんwww 上手い事言われてるよwww」
未青「なんかかなり恥ずかしいけど…」
かなり恥ずかしかったが、ボクにはそれがある意味、みんながボクの力を認めてくれているような感じにも受け取れた。
~一方その頃、前の世界・日本のどこか~
(突っ込んでくる車の急ブレーキ音)
目撃者A「キャー!」
(衝撃音とともに少女が車にはねられる)
目撃者B「救急車!救急車!」
(車にはねられた少女が頭から血を流して地面に倒れている)




