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Case 95「対魔獣実習」

プルバさんがカレンデュラの仲間に加わってからどれだけが経っただろうか。魔法専門学校は制服は夏服に切り替わり、定期テストが数週間後に迫っている。期末にしかない魔法専門学校の定期テスト。思えばボクは「中間テスト」というものを受けることなく命を落とし、この世界に転生したっけ。


そんなある日のこと。

(漏れちゃう… 漏れちゃう…!)

ボクは暑い中家路を急いでいた。おしっこが今にも漏れそうなのだ。ていうか、走っている状態でもはっきり分かるほどパンツにチビっているレベルなのだが。


家の玄関前に着いたボク。しかし…


「ああっ…!あっ…!あああああっ…!」

(ジュジュジュジュウウウウウウウウウウウウウ…)

玄関のドアの前でボクの膀胱は力尽き、そのままおもらしをしてしまった。


パンツとズボンがぐっしょりと濡れたまま、玄関のドアを開ける。

未青「ただいまー…。」

フレイン「おかえり。あらら。未青くんおもらししちゃった?」

未青「うん…」


夏服を着てのおもらしはこれで何度目だろうか。1回目は夏服を初めて着た日の3時間目の授業中だったのは覚えているが、具体的な回数は覚えていない。


シャワーを浴びて着替えた後、テレビを見る。今日は部活があったから、時間はもう5時半だ。


「ねえねえセンセイ。」

「なあに?未青くん?」

「週明けの火曜日ね、『対魔獣実習』ってのがあるんだ。」

ボクはセンセイに、今日の朝のホームルームで話があった、『対魔獣実習』というものの話題を出した。学校が飼っている魔獣を相手に、魔獣や黴獣(ばいじゅう)と遭遇した時の対策を学んだりや戦闘スキルを磨くというものだ。


「対魔獣実習やるの?そうなんだこんな暑い時期に。私の時は秋くらいだったよ。」

「まあ暑い時期は大体の魔獣や黴獣(ばいじゅう)の活動も活発になるって習ったし…。そうそう。その対魔獣実習ね、カロルのクラスと合同なんだ。」

「カロルくんのクラスとなの?よかったじゃん未青くん!」

「うん!」


対魔獣実習はカロルのいる3組と合同。それがボクにとって一番楽しみだった。



そして迎えた対魔獣実習の日。学校の中庭。授業前のみんなの様子はとてもザワザワしている。


「どんな魔獣でやるんだ?」

「暴走したら収拾つかなくなるやつじゃなければいいけど…」


授業開始数分前になってカロルが急いでやってきた。

「未青ー!お待たせー!」

「カロルー!もう授業始まるよー!」

「ごめん… 2時間目の授業中におもらししちゃって、ついさっきまで保健室にいた…」


そして授業開始のチャイムが鳴り、担当の先生がやってきた。


ドモシク「皆さんはじめまして。私が対魔獣実習を担当する『ドモシク・スネマ』です。気をつけー、礼!」

一同「よろしくお願いします。」

ドモシク・スネマ先生。対魔獣実習専門の先生で、ボクの好きな漫画に登場するヒロインのお父さんをどことなく彷彿とさせる、筋骨隆々で屈強な感じの男の先生だ。


準備運動をするボクたち。大体魔獣に出くわした時は準備運動などする暇はないと言うが、安全を確保したいがゆえの先生のこだわりだという。


そしてドモシク先生の転移魔法で、『レスルグリズリー』という熊のような魔獣が召喚された。学校が対魔獣実習用に飼育しているものであるという。


「生で魔獣なんて初めて見たよ…」

「これで2m級だろ?ってことはもっとデカいやつもいるってことじゃん。」

「なんか怖くなってきた…」


口々に言う生徒たち。ボクもぶっちゃけ言うと怖い。もし今催していたらおもらししていたかもしれないところだ。


そして始まる対魔獣実習。適切なタイミングで魔獣の攻撃を交わしたり、魔法で防いだりすることができるかが試される。なおこの場は特殊な空間魔法がかけられていて、とどめを刺す魔法は出せないようになっているという。


約60人対レスルグリズリー1頭。ドモシク先生が見ているとはいえ、油断できない状況であることが窺える。


ドモシク「みんな準備は良いか?じゃよーい、スタート!」


ドモシク先生が合図をすると、レスルグリズリーが動き出す。そんなボクの頭の中でゴングが鳴る音がするような感覚がした。


レスルグリズリーの動きに合わせて、みんな攻撃を交わしたり魔法で攻撃を防いだりしている。ボクも覚えた魔法を使って、レスルグリズリーの攻撃を交わしたり爪の攻撃を防いだりする。腕など特定の部位の力を短時間大幅に上げる「剛力魔法」という魔法を使って、爪の攻撃を防ぐボク。剛力魔法を使ったのは初めてだ。


4組の男子生徒A「うおお赤砂のやつ剛力魔法使ったぞ!」

4組の男子生徒B「あいつにしては意外な魔法のチョイスだな。」

4組の男子生徒C「今の攻撃で漏らさないとかあいつの膀胱の判断基準どうなってんだよ。」

コトレフ「ちょっと3人とも今の聞こえてるよー!」


カロルもちょっと怖がっていそうな感じではあるが、攻撃を防げている感じがする。

未青「カロルもやるね。」

カロル「ありがとう未青。ちょっと怖いけどね…」


カロルも剛力魔法が使えるのだが、私学校時代に剛力魔法をはじめとしたパワー系の魔法の授業の最中に「あの出来事」があったということで、パワー系の魔法はちょっと苦手なのだという。


実習は順調に続く。のだが、すると…

(レスルグリズリーの咆哮)

「うわあ!」

「やべえぞこいつ暴れ出したぞ…!」

「とりあえず逃げよう!」


突然レスルグリズリーが暴れ出した。その事態にボクたちは逃げ惑う。流石にドモシク先生もこの状況は想定外だったようで、

「うちのレスルグリズリーは気性は比較的荒い方だと聞いていたが、ついにこんなことになるとはな…」

と呟くドモシク先生。そこからボクは、この状況が前例がなくただごとではないことを察した。


(カロルの泣き声)

カロルもボクも安全な場所に逃げる。そんなカロルは怖いせいか泣いていて、さらにおしっこを漏らしていた。そんなボクもパンツが少し濡れている感じがするのだが。


するとドモシク先生は、一人レスルグリズリーに組み付いた。

3組の男子生徒A「無茶ですよ先生!」

ドモシク「大丈夫だ。これでもな、俺は力には自信があるんだ…!」


暴れ出したレスルグリズリーに生身で挑むのは危険だと本で見たことがある。ドモシク先生はなんて勇敢なのだろうかと思った。


立ち上がってドモシク先生相手に攻撃を繰り出すレスルグリズリー。そのドモシク先生はレスルグリズリー相手に様々な格闘(わざ)や格闘系の魔法やらを繰り出す。


そして…

「うおお!」

「これでもう大丈夫か!?」

(レスルグリズリーの咆哮)

口々に聞こえてくる声。ドモシク先生がレスルグリズリーを地面に仰向けに倒したのだ。


「よし、行くぞぉー!」

そう言ってドモシク先生はレスルグリズリーの足を掴んで振り回した。前の世界にいた頃に見たバラエティー番組のようなどこか懐かしさを感じさせるものだった。「ジャイアントスイング」とかいうプロレス技だったっけ。


そしてドモシク先生がレスルグリズリーを振り回し終わった後…


「みんなもう大丈夫だ。」


事態は一件落着した。授業はその場で打ち切りになったのは言うまでもない。

レスルグリズリーはすぐに転移魔法で飼育小屋に戻され、学校常駐の魔獣専門の癒師の人によって治療されたという。


「魔獣専門の癒師って、うちの学校みたいに魔獣飼っているところでは常駐が義務付けられているらしいぜ。」

「よかったよその義務あって。」

「なかったら死人出ていたやつかもな…。」


教室に戻る生徒たち。

未青「コトレフちゃんは先に戻ってて。ボクはカロルを保健室に連れて行ってから戻るから。」

コトレフ「分かった。」


保健室にカロルを連れて行くボクたち。

未青「すいませーん。」

(保健室のドアを開ける未青)

エクシパ「はーい。あら赤砂君とカロルくん。」

未青「さっきの授業でカロルがおもらししちゃって…」

エクシパ「もしかしてさっきの魔獣の暴走の件で?」

未青「はい…(苦笑)」


エクシパ先生もさっきのレスルグリズリー暴走の件は知っていたという。

エクシパ「校内放送が流れてたのよ。」

未青「校内放送流れてたんですか!?」


~回想~

(校内放送のチャイム音)

エクシパ(何かしら?)

校内放送「只今中庭で実習用魔獣が暴走しています。建物の中にいる皆さんは外に出ないで下さい。」

~回想終わり~


校内放送も流れていたという今回の事態。逃げ惑う声やらレスルグリズリーの咆哮やらで、ボクには全然聞こえていなかった。


家でもそのことをセンセイに話すボク。


フレイン「あの熊さん今回も暴走したの?」

未青「うん。本当に大変だったんだからねカロルはおもらししちゃったしで…」

フレイン「なぜか舞嗣遠の魔法専門学校に来る魔獣って、気性が荒くてたまに暴走することがあるんだよね… 私の時にもあったなあ… レスルグリズリーだったけど。」

未青「そうだったの!?」

フレイン「うん…(苦笑)」


どうやら舞嗣遠魔法専門学校での実習用魔獣の暴走は、珍しいことではないという


そして1週間が経ち、2回目の対魔獣実習。

ドモシク「みんなこの間はすまなかった。今回はより安全を確保する目的として、レスルグリズリーを魔法鎖で固定した上で、さらに学校の魔獣専門癒師の方も立ち会った上で実習を行う。」


ドモシク先生のその言葉通り、今日の実習ではレスルグリズリーの手足を鎖で拘束して行った。なんだかちょっとかわいそうに思えたのはボクだけだろうか。


3組の男子生徒「最初からこうすればよかったんじゃね?」

カロル「それ言わない方がいいやつ…」

-新しい設定付き登場人物-

ドモシク・スネマ(Domosik=Snema)

舞嗣遠魔法専門学校の対魔獣実習専門講師。38歳。男性。出身。

一応魔法使いではあるが癒師ではない。

筋トレの甲斐あって筋肉が異様に発達しており、自他ともに認めるパワーファイターである。

性格:豪放で妥協を許さない性格。また何事にも安全第一を心がけている。

得意属性:火

身長:約176cm

誕生日:10月30日

好きな食べ物:肉料理全般。特にオメガロスネークのロースト肉。(アクアレタスに巻いて食べると美味しいらしい)

趣味:筋トレ全般

特技:重量挙げ

好きなもの:筋トレグッズ

苦手なもの:筋トレの禁断症状

トピックス:対魔獣実習専門講師のほとんどは複数の学校を掛け持ちしていたり、癒師や魔獣ハンターの副業としている人が多く、ドモシクのような1つの学校の先生として常駐しているのは珍しく、癒師でもない対魔獣実習専門講師は特に珍しいとされる。

トピックス2:魔法専門学校時代の重量挙げ大会では在学中の大会で全て優勝していた。


<用語解説>

【レスルグリズリー】

フレインたちの世界に生息する熊のような魔獣。体長は2mよりも少し長いのがほとんど。

戦闘時はプロレス技に酷似した技を多用する。

魔法専門学校の対魔獣実習で一番よく使われているが、最近は熊型に限らず2~3m級サイズの特注のアーティニマルに取って代わられつつある。

(アスムール民主国では動物の生体販売が厳しく制限されているが、魔法専門学校での実習等での動物や魔獣の飼育は制限の対象外となっている)

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