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Case 86「決戦の日とおむつ」

2月下旬。ついにあさっては魔法専門学校の入学試験の日だ。


(ビチャビチャビチャビチャビチャビチャ…)

受験前最後の授業の日。そんな日にも関わらずボクは授業中におもらしをしてしまった。


「あー未青くんやっちゃったかー。」

「ごめんなさい… また言い出せなくて…」

「未青くん傷つけるつもりはないけど、これじゃ受験本番当日のトイレが心配だよ…」

「はい…」


シャワーを浴びてセンセイが用意してくれた替えのスカートとタイツ、パンツに履き替え、授業の続きをやる。授業が終わった後クルルスさんは、

「じゃあ明後日、頑張ってね。」

と言い、家に帰っていった。


「はい。」

その後センセイと2人きりになったボク。ボクが部屋でさっきの授業の復習をしていると…


「ねえ未青くん…」

「なに?センセイ?」

「未青くん。ここ最近のクルルスの授業で毎回おもらししちゃってたじゃん…」

「うん…」

「だから未青くん、試験中のトイレとっても心配なんだよね…」

「センセイもそう思ってたの?実はボクもなんだ…」


試験中のトイレが心配なボク。クルルスさんとの定期テスト中は「全戦全敗」だった上、ここ最近のクルルスさんとの授業中についても「連戦連敗」だった。実を言うとクルルスさんが帰った後の勉強した範囲の復習や受験対策には、試験中のトイレに対する不安が紛れるからというところもあった。


「それでさ未青くん。」

「なに?」

「受験当日、おむつを履いた方がいいんじゃないかなって思ってて…」

「おむつ?」

「うん。もし万が一試験中に我慢できなかったりとか、試験終えた後にトイレ間に合わなくておもらししちゃったって事態になったら、未青くん試験どころじゃなくなっちゃうし、受かったとしても『あいつ受験の時に漏らした奴だよ』とか言われちゃうじゃん。」

「うん… それボク絶対にやだ…!」

「そうでしょ?だから私、当日はおむつを履いて行った方がいいんじゃないかと思って…」

「うん… じゃあそうしようかな…」


というわけで、ボクは受験当日はおむつを履いて行くことが決まった。思えばおむつを履くなんて、幼稚園の頃以来だ。おむつはボクが転生してからしばらく経った時、こんなこともあろうかとシャピアさんが買っておいたものがあるという。


そして迎えた受験当日。

「ん?ん~…」

(ぐしょ…)


受験当日の朝も、ボクはおねしょで布団やパジャマが濡れている感覚で目を覚ました。


魔法専門学校の受験の服装は、制服のない私学校に通っているか、私学校に通っていない人は私服で受けることが認められている。ボクは男ものの服を身に着け、その下におむつを履き、センセイに付き添われながら舞嗣遠魔法専門学校に向かった。

家から舞嗣遠駅まで歩いた後、その北口のバス停からバスに乗って15分ほどのところにある舞嗣遠魔法専門学校。


「じゃあ、終わったあたりの時間で迎えに行くから。受験、頑張ってね。」

「うん!」


改めて受験票を見るボク。「843804」。これがボクの受験番号だ。


教室に入る前にトイレを済ませ、「843800-843820」という立て看板が入口にある教室に入り、机の右上に小さい「843804」というシールが貼られた席に座る。席は廊下に近い方だ。


思えば2年近く前、中学校最初の定期テストを受けることもなく病気で命を落としこの世界に転生してきたボク。クルルスさんの授業のテストやこの間の受験本番を見越したテストでテストや受験がどんなものかは知っているとはいえ、今になってやはり緊張してきた。


~回想~

クルルス「魔法専門学校に限らず、受験は本当に普段のテストとレベルが違うからね。」

~回想終わり~

なんてことをクルルスさんから言われていたボク。

(これが普段のテストとのレベルの違いというものなのかも…)

ということをボクは思っていた。


最後の勉強を済ませ、朝9時半。


「では、試験を開始してください。」

という試験監督の先生の声とともに、試験が始まった。試験時間は全教科45分で、途中休憩が15分入る。


最初の科目は文系の問題。前の世界で言うところの国語・英語・社会を一緒にしたようなものだ。

(あ、これこの間の定期テストで出たところだ。)


その次は理数系の問題。数学・理科の問題を一緒にしたようなものだ。

文系のボクは苦戦したところもあったが、これもクルルスさんとセンセイが一緒に作ってくれた特訓問題のおかげで乗り切れた。


次は魔法術式のテスト。問題文に書いてある魔法の術式がどの属性のどんな魔法にあたるかという問題で、選択問題と文章題の2つがある。


食事休憩の時間を挟んで、午後1つ目はエルフ語の試験。この世界ではエルフ語が前の世界の日本にとっての英語のような立ち位置となっていて、アスムール民主国のテレビやラジオにはエルフ語専門の放送局がいくつかあるほどだ。クルルスさんから聞いた話によると、エルフの居住者が多いある地域のローカル局で、前の世界で人気を博しボクも見ていたあるアニメのエルフ語吹き替え版が地上波放送された時は、アスムールに住むエルフの人たちの間でかなりの話題になったという。


午後2つ目の魔法理論の問題を挟んで、最後は古代魔法語の問題。古代魔法語もアスムールでは話者人口がそれなりにいて、テレビやラジオには古代魔法語の専門放送局がいくつもある他、若菜ちゃんのバイト先の本屋さんには前の世界で好きだった漫画の古代魔法語翻訳版が並んでいるほどだ。


「では、試験を始めて下さい。」

最後の試験が始まる。しかし、試験が始まって20分ほどが経った時のことだった。

(あっ…)

ボクの体に尿意が走った。しかし静寂の会場。とてもじゃないがトイレを言い出すのが恥ずかしい。

(終わったら真っ先にトイレに行くんだ。)ボクはその一心で、問題を解き続けた。


(チャイムの音)

そしてそれから25分ほどでチャイムが鳴り、全ての試験が終わった。


なんとか試験中は持ち堪えることができた。後は答案用紙の回収が終わるのを待ってトイレに行くだけだ。

しかし今にもおむつの中に溢れだしそうなおしっこ。でもなかなか教室から出ていいという指示がない。

どうやら他の教室で答案の集計が遅れているようだ。


(漏れちゃう… 漏れちゃう…)

(ジュ… ジュ…)

ボクは膀胱括約筋にギュッと力を込め、時々おむつの中におしっこをチビらせつつ、一人試験会場の教室の席上で耐え続けた。


待つこと15分。

「集計終わりました。では皆さん出ていいですよ。」


試験監督の先生の合図とともに、ボクは荷物を持って廊下に飛び出した。膀胱は今にも力尽きそうな状態で、膀胱括約筋に込められる全ての力を込めながら、トイレに急ぐボク。

(未青の荒い息遣い)

しかし、トイレまで後半分というところで、膀胱を起点に耐えられないほどの痛みがボクの体に走った。

「あ… ああっ… ああああっ!」

(ジュジュ… ジュジュ… ジュウウウウウウウウウウ…)

そして膀胱に込めていた全ての力が抜け、ボクの大事なところからおむつの中目がけて大量のおしっこが解き放たれた。

(未青のパンツの中で膨らんでいくおむつ)


(間に合わなかった…)

おむつの中におしっこを全部漏らしてしまったボク。ボクはその後その場から逃げるように男子トイレの個室に駆け込み、汚物入れにおむつを捨てた。


その後ボクは、沈んだ気持ちで学校を後にする。試験はとても自信があるというのに。


「あ、未青くん。」

「あ、センセイ…」


学校の校門の近くでは、センセイが待ってくれていた。

「試験どうだった?」

「試験は勉強した甲斐があったと思えるくらい自信があるよ。でも最後の古代魔法文字の試験でね、他の教室の答案が揃うのに時間がかかっちゃったの。それでね…」

「それで?」

「おむつにおしっこ出ちゃった…」

「あらら。ちゃんと処理できた?」

「うん…」

「でも良かったね。試験中におしっこ出ちゃわなくて。」

「うん…」


ボクはセンセイに抱き着いて泣いた。


家に帰ったボク。家でシャピアさんが出迎えてくれた。

シャピアフェ「おかえり未青くん。受験どうだった?」

フレイン「受験は申し分ないんだけど、でも未青くんおむつにおもらししちゃったの。だから今元気なくて…」

シャピアフェ「そうなの。試験もトイレもよく頑張ったわね。」

未青「ありがとう… シャピアさん…」


センセイもシャピアさんも、ボクの今日の2つの頑張りを労ってくれた。


そして2日後。合格発表の日。

センセイと一緒に掲示板を探すボク。


すると、掲示板の中ほどに、

「843804」

という数字があった。

「あった!あった!」

「ほんとだ!よかったね未青くん!合格おめでとう!」

「うん…!今まで本当に頑張った甲斐があったよ!」


ついに、ついにボクは魔法専門学校への合格を果たしたのだ。


(嬉し泣きをする未青)

嬉しくて泣いたのなんて、いつぶりだろうか。


(頭に狼の耳が生えた青髪の少年が、未青の方を少し見る)

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