Case 79「お母さんの思い出」
「ん… ん~…?」
「未青。未青。」
「あ… お… お―」
朝。
「未青くん。起きて。ジョギング行くよ。」
「ん~… ん…」
(ぐしょ…)
「おか、じゃなかったセンセイ…」
「未青くんおはよ… あららおねしょしちゃったのね。」
「うん…」
「シャワー浴びて着替えてたらジョギング行こう。」
「うん…」
12月になった。ある朝おねしょをしてしまったボクはいつも通りセンセイと一緒に日課のジョギングに出た。
「未青くん?未青くん。」
そんなボクは、夜中に見た夢が頭に残っていて、ジョギングにいまいち身が入らなかった。
「あ、ごめんセンセイ。ちょっと意識?が…」
ジョギングを終えた後は朝ご飯だ。
一同「いただきまーす。」
朝ご飯の後は歯磨きをしてシャピアさんを手伝う。
「ねえお母さん。」
「お母さん?未青くん、今私のことお母さんって言っちゃった?」
「あ… ごめんシャピアさん。」
「あらあら未青くん、私のことお母さんって思っちゃってたのかしら?」
「えへへ…」
ボクはシャピアさんを、うっかり「お母さん」と呼んでしまった。前の世界、小学校の低学年の頃は稀に先生をお母さんと呼んでしまう人がいたが、ボクがこんなミスをするは初めてだ。
その後ボクは部屋に戻って本を読む。今日のバイトは午後からだから、まだ時間がある。
すると、部屋にセンセイが来た。
「未青くん。」
「センセイ。」
「ねえ未青くん、さっきのジョギング行く時の話なんだけどさ…」
「なあに?」
「ジョギング行く時、私のこと『おか…』とか言いかけてたけど、もしかしたらさっきのお母さんみたいに私のこと『お母さん』って呼ぼうと思っちゃってた?」
「あ… うん…」
「ねえねえ、朝何かあったの?(笑)ジョギングもなんだか身が入ってなかったみたいだったけど。」
「うん…」
ボクは少し深呼吸して、こう続ける。
「実はね、ボク、今日夢にお母さん出てきたんだ。」
「そうなの?お母さん出てきたんだ。」
センセイはさらに続ける。
「未青くんのお母さんって、どんな人だったの?私気になる。」
「うん。赤砂緋音って言ってね、センセイやシャピアさんみたいに、とっても優しい人なんだ。」
「私やお母さんみたいに。なんだか嬉しい。」
「えへへ。ボクがおもらししちゃった時も、絶対に怒ることなんてなかったんだ。」
「そうなんだ。とっても優しい人なんだね。」
「うん。お母さん、実は学校でおもらししちゃったことがあるんだ。」
~回想・未青が初めて授業中におもらしをしてしまった日の帰り道~
「ねえ未青。お母さんもね、学校でおもらししちゃったことあるのよ。」
「お母さん、それ本当?」
「そうよ。だから大丈夫。」
~回想終わり~
ボクはこの時思っていた。「お母さん、ごめん!」って。
「そうなんだ。もしかしたら未青くんがおもらししちゃった時に絶対怒ることがなかったのって…」
「それもあるのかも。それとね、お母さん、とっても若々しくて可愛いんだよ。」
「そうなの?」
「もう本当にね、センセイとも見た目変わらないくらいだよ。」
「マジで!?」
「うん。それでね、お母さんよくミニスカートとか短いズボン履くこともあったんだよ。」
「そうなの。似合ってた?」
「うん!とっても似合ってた!」
「そうなんだ。私が着てる服着せても似合うかな?」
「きっとそうだよ!後何年か前お母さん物の整理したことあったんだけどさ、発掘した高校時代の制服着ようとしたら入ったことがあったくらいだからね。」
「未青くんのお母さんとっても凄いじゃん!高校生の頃からスタイル変わってない感じだね。」
「うん。」
これで話は一段落になった。かのように思えたが…
「ねえねえ未青くん。」
「センセイ?」
「未青くんのお母さんのこと、もっと教えて?」
とセンセイは言う。
センセイはどうやら、ボクのお母さんのことが気になるようだ。
「んーと… 料理がとっても上手な人だよ。」
「そうなんだ。例えばどんなのが得意だったの?」
「えーと、いろいろあるけど、冷麺と、玉子焼きと、あとシチューが得意だったかな?」
「冷麺か。舞嗣遠にも冷麺あるけど、大体そんな感じ?」
「うん。シャピアさんが初めて舞嗣遠冷麺作ってくれたことあったじゃん。ボクその時お母さんのこと思い出してたんだ。」
「そうなんだ。お母さんと一緒の料理作ったらとても美味しいのできるかも。」
「ボクもそう思う。」
「それで、未青くんのお母さんどんなお仕事してたの?」
センセイはお母さんのことをいろいろ聞いてくる。
「うん。小学校の頃に聞いたことがあるんだけど、百貨店でお菓子を売る仕事してたの。ボクが小さい頃に仕事辞めちゃったから、働いている様子を見たことはないんだけどね。」
「そうなんだ。実は私の友達にデパートで働いている人いるんだけど、そんな感じ?」
「そうそうあんな感じあんな感じ。」
「実はその友達もお菓子担当なんだよ。ゼリーだったかな?」
「そうなんだ。」
「うん。まだ未青くんは食べたことないやつなんだけどね。」
「そうなんだ。そのゼリー食べてみたいな。」
「うん!きっと美味しいから。」
これでまた話は一段落… したかに思われた。すると…
「ねえ未青くん。」
「なあにセンセイ?」
「その未青くんのお母さんの、ちょっぴり恥ずかしい話とかってある?」
「恥ずかしい話?」
センセイはどうやら、お母さんの恥ずかしい話も聞きたいようだ。
そのお母さんの恥ずかしい話、実はネタがある。
「恥ずかしい話… 実はあるよ。」
「そうなの?」
「うん… 実はね…」
ボクは一呼吸置いて、その続きを話す。
「ボクほどじゃないけど、トイレが近いんだ。」
「待ってトイレ近いの?」
「うん… でもお母さん、時々おしっこチビっちゃうことあったんだ。」
「そうなの?」
「うん。大急ぎでトイレに駆け込んでいった後、お母さんの履いているズボンのお股のあたりが少し濡れていたり、洗濯機の中にお股のあたりが少し濡れているパンツが入っているのを見たことがあるよ。あ、一応言っとくけど毎回見たわけじゃないよ。」
「そうなんだ。もしかして未青くんがトイレとっても近いのって、お母さんのが遺伝した訳じゃないよね?」
「うーん。遺伝した訳じゃないって聞いたことがあるんだけど…」
「そうなんだ。でも実質親譲りみたいなものじゃんね。」
「そうかな?」
「そうだよ。未青くんさっき『お母さん、実は学校でおもらししちゃったことがあるんだ。』って言ってたけど、もしかしたら未青くんがおもらししちゃっても怒ることがなかったのって…。」
「今思えばそれもあるのかも。」
実はボクはトイレに間に合わずおもらしをしてしまってズボンがぐしょぐしょの状態のお母さんを見たことがあるのだが、その話はしないでおいた。なぜって、お母さんに申し訳がないからだ。
「後お母さん、思っていることが顔や動きに出やすいから、トイレ行きたくて足がもじもじしてるのよく見てたよ。」
「そうなんだ。ちょっと可愛いね。」
「ぶっちゃけ、もじもじしているお母さんちょっと可愛かった。」
「やっぱり?(笑)」
お母さんの恥ずかしい話をしたボク。ボクは改めて、「お母さん、本当にごめん!」って思っていた。
「それにしても、ボクがこの世界に転生したことや、家とかでスカート履いてるってこと知ったら、お母さんびっくりしちゃうかもね。」
「そうだね。頭かなり混乱しちゃうかもね(苦笑)一応確認するけど、未青くん前の世界ではスカートとか履いたことないんだよね?」
「ないに決まってるじゃん(笑)」
そんなこんなで、朝見た夢に出てきたのをきっかけにお母さんのことをセンセイに話したボク。
なんだか今日は、懐かしい思い出に浸れた気がする。
「あ、そうだ。お母さん、もうすぐ誕生日なんだ。」
「そうなの?それっていつ?」
「6日。」
「本当にもうすぐじゃない。」
「うん!」
-新しい設定付き登場人物-
赤砂 緋音
未青の母親。43歳。専業主婦。20代くらいの若々しい外見が大きな特徴。
実は未青ほどではないがトイレが近い体質で、尿意が95%を超えた状態でトイレに駆け込むと必ず出す前にパンツに少しチビってしまう。
(なお未青のトイレがかなり近い体質はそれが遺伝した訳ではない)
また中3の頃に授業中におもらしをしてしまったことがあり、それもあって未青のおもらしには優しく接してきた。
思ったことが顔や行動に出やすく、未青にはトイレに行きたいことなどをよく見抜かれていた。
私服の割合はスカートとズボン半々。ミニスカートやショートパンツを履くこともある。
未青が生まれてしばらく経つまでは都内の有名百貨店で働いていた。
性格:基本的に優しいが怒るとかなり怖い。またおっちょこちょいで抜けた一面もある。
身長:約157cm
誕生日:12月6日
得意料理:冷麺・玉子焼き・シチュー
好きな食べ物:シチュー・暖かいお茶・稲荷寿司・みそ汁
趣味:料理・手芸・クロスワードパズル・薬草茶作り
好きなもの:手芸用品・ぬいぐるみ
苦手なもの:尿意・コーヒー以外の苦いもの・威圧的な人・クレーマー
トピックス:最後におもらしをしたのは未青が8歳の時のこと。病院帰りのバスの中で催して家まで我慢した末、家のトイレのドアの前で気が緩み決壊した。
-用語解説-
【舞嗣遠冷麺】
舞嗣遠の郷土料理にしてB級グルメの冷麺。特徴はこちらの世界における盛岡冷麺とほとんど変わらない。




