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Case 53「若菜ちゃんとデート」

ある日のバイト終わりのこと。

(ヤバい出ちゃう…!)


シフト中に急に強い尿意に襲われたボクは、4時のシフト終わりまでずっとおしっこを我慢しながら仕事をしていた。そんなわけで膀胱はほぼ決壊しかけている。ボクは4時になったと同時にトイレにダッシュしたのだが…




(ビチャビチャビチャビチャ…)


間に合わなかった。トイレのドアの前、あと少しというところでボクの膀胱は盛大に決壊してしまった。


ルキ「あー未青ちゃん間に合わなかった…(苦笑)」

マリーユ「まずシャワー浴びよっか。替えのパンツある?」

未青「はい… あります…」


ボクはマリーユさんに促されるまま着替えを取りに行った後、シャワーを浴びにいった。


そのシャワーから出て着替え、帰ろうとした時のことだった。


若菜「未青ちゃん!」

未青「あ、若菜ちゃん!」


そこには若菜ちゃんがいた。どうやら今日は、ボクに用があって来たのだという。


未青「ボクに?」

若菜「うん。今度の日曜日に舞嗣遠中央図書館がリニューアルオープンするんだけど、未青ちゃんも一緒に行く?」


舞嗣遠中央図書館。舞嗣遠駅南口から歩いて10分ほどのところにある図書館だ。ボクが転生する少し前から長らく大規模改装工事で休館していたのだが今週その工事が終わり、今度の日曜日にめでたくリニューアルオープンするのだ。


未青「日曜日?確かにその日バイトはないけど…」

若菜「魔法の本や未青ちゃんの好きな漫画とかもいっぱいあるみたいだよ。」


ボクは少し悩んでしまった。今浅黄色のスカートを履いているボクだが、性別は立派な男。

若菜ちゃんがどう思ってボクを誘っているかは知る由もないが、ボクからしたらデートの誘いだ。


マリーユ「未青ちゃん、もしかして緊張しちゃってる?」

未青「は… はい…」

マリーユ「未青ちゃん魔法の勉強してるんだし漫画とかも好きなんでしょ?またとない機会だから一緒に行きなよ。」

とマリーユさんは言う。


未青「じゃあ… 一緒に行く!」

マリーユさんの後押しもあって、ボクは日曜日に一緒に行くことにした。


帰宅後、ボクはセンセイにその話をする。

フレイン「中央図書館?そこ私もよく行ってたよ。」

未青「そうなの?」

フレイン「うん!改修工事する前からたくさんの資料があるんだよ。専門学校の頃は専らそこか学校で本借りてたなぁ…」

未青「そうなんだセンセイ。」

シャピアフェ「私も中央図書館はよく行ってたわよ。絵本とかも充実してるからフレインが小さい頃はほぼ毎日のように行ってたのよ。」

フレイン「そうそう!」

シャピアフェ「未青くんもきっと楽しめそうね。」

と、センセイもシャピアさんも嬉しそうに言った。ボクも当日が段々楽しみになっていく。


2日後、ボクはネットで舞嗣遠中央図書館について調べた。確かに普通の本だけでもかなりの数があり、子ども用の絵本や魔導書、漫画、経典、新聞、音楽、映像資料もとても充実している。ホームページも見ているだけで楽しかったボクは、かれこれ1時間半も時間を使ってしまった。


そして、日曜日当日。

フレイン「行ってらっしゃい。中央図書館、楽しんできてね。」

未青「はーい!」


若菜ちゃんとは駅前で待ち合わせ。ホームページで予習はしたが、実際に行くとなると本当に楽しみだ。


駅に着いたボク。

(そろそろ来ているはずだよね…)

ボクは若菜ちゃんを探す。

(えーと若菜ちゃん若菜ちゃんはと…)


すると、

若菜・通信魔法(テレパシー)で「未青ちゃん未青ちゃん!」

若菜ちゃんからの通信魔法が聞こえてきた。声のした方を見てみると、若菜ちゃんがボクの方に向かって手を振っている。


未青・通信魔法(テレパシー)で「いた!すぐ行くよ!」

ボクは未青ちゃんのいる場所へと急ぐ。


「お待たせー。」

「おはよう未青ちゃん。未青ちゃんスカート履いてきたんだ(笑)」

「えへへ…(苦笑)」


ボクは結局、女子の格好をしてきた。紺色のセーターに灰色のギャザースカート、黒いヒートテックのタイツというスタイルだ。


「それにしても若菜ちゃん、テレパシー使えるようになったんだ!」

「うん!マイカさんといっぱい勉強したんだ。」


ボクたちは図書館に向かって歩き出す。その後歩くこと10分ほどで着いた。

「人がいっぱいいる…!」

図書館にはリニューアルオープン当日と言うこともあって、人がいっぱい来ている。


「未青ちゃん初めてでしょ?じゃあまずは利用手続きだね。」

「うん。」


初めてこの図書館を使うボクは利用手続きをする。図書館の利用者カードを発行してもらうためだ。

「若菜ちゃんはボクよりも後に転生してきたわけだけど、もう図書館の利用者カード持ってるの?」

「うん。マイカさんがよく通っている隣町の図書館でカード発行してもらったんだ。やり方は一緒だから大丈夫だよ。」


もう図書館の利用者カードを発行してもらった若菜ちゃん。ボクはそんな若菜ちゃんのフォローのもと、カードの発行手続きをする。


図書館の職員「お疲れさまでした。ではごゆっくりどうぞ。」

未青・若菜「ありがとうございます。」


図書館の入口をくぐるボクたち。エントランスのスペースはとても広く、未来的な感じだ。

未青「わぁ~。」

若菜「こうなったんだ…」


ボクたちは未来的なエントランスを見渡していた。

若菜「そうだ。未青ちゃんはまずどんな本読みたい?」

未青「うーん… やっぱり魔法の本かな…」

若菜「魔法の本… あっちだね。」


案内魔法にも対応しているこの中央図書館。案内魔法で床に浮かび上がった線を辿って、ボクたちは「魔法」の本棚のところに着いた。


未青「魔法の本がいっぱいある。この本はうちにはないなぁ…」

若菜「あ、これうちにあるよ。じゃあ私はこっちを読もうかな。」


そう言ってボクはうちにはない1冊の本を手に取り、読書スペースで読み始めた。少し遅れて若菜ちゃんも別の本を読んでいる。


本を読み始めてから大体半分が経った頃、ボクはふと若菜ちゃんの方に目をやった。若菜ちゃんは楽しそうに本を読んでいる。

「きっとこの世界に来る前も、いろんな本を読んで勉強してたのかな。」ボクはそんなことを考えていた。


「これ借りてこう。」

そう思ったボクは本に読書スペースで自由に配布しているしおりを挟み、次の本を読み始める。


それからおよそ30分が経った時の事だった。


「あっ…」

2冊目の本を読み終えたボクの体に、強めの尿意が降りかかった。


「若菜ちゃん…」

「未青ちゃんどうしたの?」

「ボク… ちょっとトイレ行ってくる…」

「分かった。」


膀胱が痛む中ボクは図書館の中を早歩きでトイレに急ぐ。


しかし…


(どっちに入ればいいんだろう…)


それは今のボクにとって大きな弊害だった。今ボクは見るからに女子の格好をしているが、性別はれっきとした男。女子トイレに入るのは論外なのは言うまでもないことなのだが、男子トイレに入るのにも相当な抵抗があるのだ。


ボクはトイレを一旦離れた。どっちのトイレに行っていいか分からないからだ。


「若菜ちゃん…」

「どうしたの未青ちゃん?トイレ行ったんじゃなかったの?」

「どっちのトイレに入っていいか分からないの… ちょっと一緒に来てもらってもいいかな…?」

「うん。」


ボクは若菜ちゃんを連れてレファレンスカウンターへと急いだ。「自分は今この格好をしているが本当は男だから、どっちのトイレに入っていいか分からない。」そのことを職員さんに相談しに行くからだ。

それでなぜ若菜ちゃんも一緒なのか、それは、一人で相談しに行くのが恥ずかしいからだ。その恥ずかしさは、レファレンスカウンターが近づくのに比例してボクの尿意をどんどん高めていった。


「あの… あの…」

(チョロ… チョロロ…)


若菜ちゃんに付き添われたボクは、カウンターの職員さん(女性)相手に言葉を絞り出すように自分の言いたいことを言い出す。


「あの… ボク… ボク…」

しかし、なかなか思うように伝えたいことが出てこない。自分がこの格好をしているが実は男であることと、その上おしっこがもう我慢できないことを職員さんに打ち明けるのが、とても恥ずかしいからだ。


職員「どうされました?」

職員さんは心配そうにボクにこう尋ね、ボクに近づいてきた。

ひそひそ話ならいけるかもしれない。そう思ったボクは、

「ひそひそ… 話でなら…」

「分かりました。」


職員さんはボクの顔に耳を近づける。

「今ならいける。」意を決したボクは、ひそひそ話で自分が伝えたいことを言い始める。


未青・小声で「ボク… トイレに行き…―」

とまで言いかけたところだった。


「あ… ああ… あああああああ…」

言いかけたところでボクの膀胱に激痛が走り、その直後急にシャットダウンするかのように膀胱に込めていた全ての力がフッと抜けた。


(ジュウウウウウウウウウウウウウ…)


ボクの膀胱がついにタイムリミットを迎え、大事なところから我慢していたおしっこが一気に溢れ出した。そのおしっこはパンツを濡らしてタイツを伝っていき、図書館の一画に大きな水たまりを作った。


職員「だ、大丈夫…?」

若菜「未青ちゃん…」

未青「ううっ… ううっ…」

(未青のすすり泣く声)


リニューアルオープンしたばかりの図書館でおもらしをしてしまったボクは、職員さんや若菜ちゃんの前で泣き出した。まだよかったといえば、スカートは無事だったことくらいだ。


職員「とりあえず、こっちにおいで。」

未青「はい…」

ボクは職員さんに職員専用スペースへと案内された。若菜ちゃんも一緒に行く。


ボクは職員専用スペースで若菜ちゃんに慰められながら、通信魔法(テレパシー)でセンセイに自分がおもらしをしてしまったことを報告する。

未青・通信魔法(テレパシー)で「センセイ… センセイ…」

フレイン・通信魔法(テレパシー)で「未青くん?」

未青・通信魔法(テレパシー)で「お… おもらししちゃった…」

フレイン・通信魔法(テレパシー)で「分かったわ。今着替え転送するからちょっと待っててね。」

未青・通信魔法(テレパシー)で「うん…」


センセイが用意した着替えが転送されてきたのは、それから数分後のことだった。

未青・通信魔法(テレパシー)で「ありがとうセンセイ…」

フレイン・通信魔法(テレパシー)で「どういたしまして。大丈夫そうならまだ図書館楽しんでていいわよ。」

未青・通信魔法(テレパシー)で「うん…」


着替えが転送されてきた後ボクは自分に迷彩魔法をかけ、センセイが用意してくれた着替えの服に着替えた。黒いタイツに赤と黒のチェックのスカートだ。


若菜「未青ちゃん。」

未青「若菜ちゃん?」

若菜「そろそろまた次の本読もうよ。」

未青「… うん!職員さん、ありがとうございました。」

職員「もう大丈夫ですか?」

未青「はい。」


ボクたちは職員専用スペースを出て、次の場所へ行く。

「はい未青ちゃん。借りようと思ってた本。」

「ありがとう。」

「せっかくだからさ、魔導書のコーナー行こうよ。」

「いいね!」


ボクたちは階段を上って2つ上の階にある魔導書のコーナーへ行く。魔導書。言われてみれば今まで見たことがない。


魔導書のコーナーに来たボクたち。魔導書というだけあって空気感がさっきと比べてちょっと違う。


「未青ちゃん魔導書見るのって初めて?」

「うん。」

「2人で一緒に読んでみようよ。」


ボクたちは適当に選んだ魔導書を取り出し、閲覧スペースまで運ぶ。その魔導書の大きさはノートパソコンほどあって、厚さは家にある漢字辞典ほど。一般的な本と比べてかなり大きいが、魔導書の中では小さい方の部類に入るものだ。実際、大きな液晶テレビほどの大きさがあるとても大きな魔導書を読んでいる人を見かけた。


「未青ちゃん分かる?」

「魔法陣は分かるけど… 魔法文字はさっぱりだな…」

「私も…」


古い魔法文字で書かれている魔導書。ボクにはさっぱり分からなかった。


「じゃあそろそろ帰ろう。」

「そうだね。もうすぐお昼だし。」

本を借りる手続きをした後、ボクたちは家に帰る。その後若菜ちゃんとは駅で別れた。


若菜「またね。」

未青「うん!また一緒に行こう。」


家に着いたボク。

シャピアフェ「未青くんおかえり。お昼ごはんできてるわよ。」

未青「はーい。」

手洗いうがいをした後昼ご飯を食べ、その後は借りてきた本を読む。


(本を借りるなんていつぶりだろう…)

借りてきた本を読むのは、とても楽しかった。


1週間後、借りた本を読み終えたボクはそれを返しに一人舞嗣遠中央図書館へ。

返却カウンターの人「返却ですね。」

未青「はい。この本とても面白かったです。」

返却カウンターの人「ありがとうございました。またお越しください。」

未青「はい!」


返却カウンターの人はとても嬉しそうな顔をしていた。ボクもなんだか嬉しかった。

(また来たいな。できれば若菜ちゃんやみんなとも一緒に)

そんなことをボクは考えていた。

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