Case 51「シャピアさんが…!」
「ああ… あっ… あああっ…」
(ジョロロロロロロロロロ…)
それは、強烈な尿意で目が覚めてトイレにダッシュしたものの、間に合わずトイレのドアノブに手をかけたところでおもらしをしてしまった朝のことだった。
パジャマのズボンも中にはいていたスパッツとパンツもびしょ濡れのまま、ボクは着替えを取りに部屋に戻って、先に起きていたセンセイに報告しシャワーを浴びに行く。
「あ、未青くんおはよう。」
「おはよ… センセイ… トイレ間に合わなかった…」
「分かった。とりあえずシャワー浴びておいで。」
「うん…」
シャワーから出て着替えたボク。しかしシャピアさんがいない。シャワーを浴びに行く前はトイレにでも行っているのだろうかと思っていたが、まだいない。トイレにしては長すぎる。お腹の調子でも悪いのだろうかはたまた風邪を引いてしまったのかと思ったボクは、センセイに聞くことにした。
「センセイ。シャピアさんは?いつもならもうとっくに起きているはずだけど。」
「未青くんもやっぱり気になるか… 実はお母さん…」
「センセイ?」
「小さく… なっちゃったんだ…」
それは衝撃の一言だった。ボクは(さっきおもらししたばかりだからチビりはしなかったものの)びっくりした。
「シャピアさんが… 小さくなった…?」
「うん… 来てみれば分かるよ。」
センセイはそう言って、ボクをシャピアさんの部屋まで連れて行く。
「あ!フレインに未青くん!おはよー!」
その部屋には、見た感じルイーザちゃんと同じくらいの女の子が一人でお絵描きをして遊んでいた。その子はお絵描きの手を止め、ボクたちの元に駆け寄ってくる。
「まさかとは思うけど… この子がシャピアさんなの…?」
「うん…」
小さくなったシャピアさん。ボクたちのことを「未青くん」「フレイン」と呼んだ以上、少なくともボクたちのことを覚えてはいるようだ。とりあえずこれで一応は一安心だ。
安心したボクは尿意を催した。
「センセイ… ボクちょっとトイレ行ってくる…」
「わ、分かった…」
「未青くんしーしーしたいの?」
「やめてよシャピアさん… は…恥ずかしいよぉ…」
シャピアさんから「しーしーしたいの?」と言われたボクは、恥ずかしさの中で部屋のすぐ近くにあるトイレに急いだ。
便座に座っておしっこをするボク。
(確か… 上級魔法の中に対象を幼児化する魔法があったよね…)
トイレの最中ボクはそんなことを考えていた。
トイレから出たボクは、早速そのことを聞いてみることにした。
「ねえセンセイ、上級魔法の中に相手や自分を幼児化する魔法があるけど…」
「うん… 状況的に、お母さんが寝ぼけて自分に幼児化魔法かけちゃったみたい… 上級魔法の中でもそうそう簡単にはかけられないはずのものなんだけど…」
「そんなことあるの…!?」
「うん… 私もしばらく前に一度あって… 私はあまり覚えてないんだけど結構大変だったみたいなんだ… しばらく経ったら元に戻るみたいなんだけど…」
「そうなんだ…」
すると、
「ねえフレイン?朝ご飯は?朝ご飯まだ?」
「今用意してるところだよ〜…」
ここにいながら分身魔法を使って朝ご飯の準備を進めていたセンセイ。
「わぁ〜。フレインが2人いる〜。」
「たまにやってるでしょお母さんも…」
朝ご飯ができたのは、それからしばらくのことだった。
フレイン「いただきます。」
未青「いただきまーす。」
シャピアフェ「いっただきま〜す!」
幼児化したシャピアさん。食事の行儀が悪い。
「お母さん!箸はこう!」
「やっぱりフォークで食べる。」
(牛乳をこぼす音)
「うわぁーん!」
牛乳をこぼしたシャピアさんは泣き出した。
「絶対こうなると思った… 未青くん。お母さんをお願い。」
「うん…」
ボクは牛乳を片づけるセンセイを脇に、泣きじゃくるシャピアさんを必死に慰める。こぼれた牛乳を片づけるのに、そう時間はかからなかった。
「あーやっと片づいたー…」
「お疲れーセンセイ。」
「うん… 床に零した飲み物拭いたのいつぶりだろう…」
「もしかしたらボクがこの世界来てからは初めてなやつ?」
「そうかも。」
シャピアさんのお行儀の悪さを随時修正しながらの朝ごはん。センセイはちっとも落ち着かなかったという。
「お疲れー。」
「ありがとう…」
朝ごはんの後、シャピアさんはセンセイに一緒に自分の部屋に戻る。
「フレイン~。未青く~ん。一緒に遊ぼうよ~。」
「お母さ~ん。私この後食器洗いしなくちゃなのに~。」
「遊ぶ~。シャピアフェ遊ぶ~。」
シャピアさんはボクたちと一緒に遊びたい様子だ。
(よかった~今日バイトがない日で…)
と、ボクは思っていた。
「とりあえずボクと一緒に遊ぼう。シャピアさん。」
「わ~い!」
どこからか引っ張ってきた絵本を、シャピアさんに読み聞かせるボク。
「うさぎさんとお友達になったカプリコーンさんは、ふたりで仲良く森の中を歩きます。」
シャピアさん相手に絵本を読み聞かせるボク。前の世界の病院で、年下の入院患者の子たちに絵本を読み聞かせていたのを思い出す。
「カプリコーンさんは、みんなで建てたおうちで幸せに暮らすのでした。おしまい。」
「ありがとう未青くん。」
「もっと読む?」
「うん!」
ボクはシャピアさんに、もう1冊絵本を読み聞かせてあげた。センセイが皿洗いを終えて部屋にきたのは、その最中だった。
「センセイいつの間に。」
「未青くん2冊も読み聞かせやったの?私も見てたよ。お疲れ。」
「ありがとうセンセイ。なんだかボクも、読んでて楽しかった。」
「そうなの(笑)」
その後、ボクたちは買い物に出ることになった。行き先はいつものショッピングモールだ。
「うわぁ~!」
シャピアさんはショッピングモールに興味津々の様子だ。いつも来ているところであるにも関わらず。
「いつも行っているところでしょお母さん。」
センセイは、シャピアさんが迷子にならないよう魔法でコントロールしながら、食料品売り場まで移動する。
「フレイン、これ欲しい~!」
「今日はそれじゃないでしょお母さん…!」
おもちゃやら服やらも欲しいシャピアさん。おかげでいつもは大体5分くらいで着く食料品売り場まで、かれこれ15分くらいかかってしまった。
フレイン「やっと着いた~!」
買い物を始めるボクたち。そこでもシャピアさんは年相応(?)かお菓子やらカレーやらを欲しがっている。
「もう分かった。それも買って帰ろう…」
「わ~い!」
おかげで時間もお金も、想定の倍以上かかってしまった。
会計の最中のことだった。
(あっ…)
ボクはトイレに行きたくなった。「漏れそう」と感じるくらいの尿意だ。
(会計終わったらトイレ行こ…)
なんてことを考えていた矢先の事だった。
「ねえフレイン。」
「お母さんなあに?」
「あたしトイレ行きたい…」
「トイレ?とりあえず買ったもの袋に入れられるまで我慢できる?万引き対策で買ったものは転送魔法使えないの分かってるでしょ?」
「え~ 漏れちゃう~!」
「分かった…。未青くんはちょっとここで待っててね。」
「うん…。」
こうして、シャピアさんとセンセイはトイレに行くことになった。センセイはもう分身魔法を使えるほどの体力はないようで、ボクはここで一人荷物番をすることになった。
(センセイとシャピアさんまだかな…)
2人が戻ってくるのを、買ったものをしまう場所で待ち続けるボク。時間が経つにつれ、尿意はどんどん強くなっていく。
どれだけの時間が経っただろうか。ボクの膀胱はすっかり痛みを帯びていた。左手はボクの大事なところを気にしてしまっている。
(早く戻ってきてよぉ…)
2人はなかなか戻ってこない。「もしかしたら、(小さい)シャピアさんは我慢しきれずおもらしをしてしまったのでは」ということすら考えられる状況だ。同時にある2つの不安に比例して、尿意はさらにどんどん強くなっていった。
(どうしよう… 出ちゃうよぉ…)
タイムリミットが近づくボクの膀胱。もう自分の脳裏に浮かんでいる「おもらし」という言葉以外のことを考えられなくなっていた。
(ジュジュッ… ジュジュッ…)
パンツにどんどん滲み出てくるおしっこ。ボクは最後の力を振りしぼって、今にも決壊しそうな膀胱の括約筋と大事なところに力を入れ続けた。
しかし、その状態をいつまでも保てるわけがなかった。
(出ちゃう… 出ちゃう… 出ちゃう―!!)
(ジュジュッ… ジュジュゥ… ジュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ―!!)
ボクは結局、センセイとシャピアさんが戻ってくるまで持ちこたえることができず、ショッピングモールの衆人環視の中で「おもらし」をしてしまった。
15秒ほどで終わったおもらし。辺りは騒然としている。
買い物客A「店員さん呼ぶ?」
買い物客B「そうしよう…」
ボクはその中で一人虚しさを感じながら立ち尽くすことしかできなかった。
買い物客C「あの子どうする?話しかけた方がいい?」
買い物客D「恥ずかしいだろうからこのままにしておいた方がいいかも…」
「お待たせ―!」
おもらしから5分ほどで、センセイとシャピアさんが戻ってきた。センセイはボクがおもらしをしてしまったのを察したのか、足早にこちらへ向かってきた。
「センセイ…」
濡れたズボンを見ると、センセイはボクにこう言った。
「ごめんね無理させちゃって。着替えたらすぐに帰ろう。」
「うん…」
ボクはセンセイに抱き着いて泣きじゃくった。
(未青の泣き声)
買い物客E「お兄ちゃん… なのかな?」
買い物客F「きっと妹さんとお姉さんがトイレに行ってる間ずっと我慢してたのかもねぇ…」
ショッピングモールの出入り口スペースの隅でボクは迷彩魔法をかけられ、センセイが転送してくれた服に着替え、家に帰った。
「未青くん…」
帰る最中、シャピアさんは口を開いた。
「あたしのせいで… ごめんなさい… ごめんなさい…」
(シャピアフェの泣き声)
「シャピアさん… 泣かないで。ボクはもう大丈夫だよ…」
泣き出したシャピアさん。ボクはそのシャピアさんを慰めた。
「お母さん…」
家についたボクたち。ボクは手洗いうがいをして、昼ごはんの支度を手伝おうとキッチンへ向かっていると…
「未青くん。」
それはいつものシャピアさんの声だった。見てみると…
「私、今さっき戻ったよ。」
「シャピアさん…!」
それはいつものシャピアさんだった。
「お母さん!」
センセイも駆け寄ってくる。
「うふふ。2人とも本当にごめんね。」
「も~!大変だったんだよお母さ~ん!」
その後は3人で一緒に昼ご飯の準備をし、ご飯を食べた。
その日のおやつの時間。
未青「あ、これさっきのやつじゃん。」
シャピアフェ「うん。小さくなってた私が欲しがってたみたい。」
ちなみにフレインが16の頃に誤って幼児化魔法を自分にかけてしまった際には、幼児化の最中におしっこを漏らしてしまったこともありました。
フレイン小さい頃は常習犯だったから…




