Case 5「夜の寒さと夜のぬくもり」
3人でボクの新しい服を買いに行ってから3日が過ぎた。
「センセイ…」
「あ、未青くんおはよ。もしかしてまたおねしょ?」
(無言で頷く)
ボクは服を買いに行った日の夜を含め、4日連続でおねしょをしてしまった。
「あら。朝ごはんの前に着替えてシャワー浴びてこよ。」
「うん…」
センセイの言う通りシャワーを浴びて着替えた後リビングで3人一緒に朝ごはんを食べるが、4日連続のおねしょをしてしまったボクは若干気持ちが沈んでいる。
「未青くん今日元気ないわね。もしかして…」
シャピアさんは続けて何を言いたいのかはもう分かる。
「うん…」
「やっぱり(今日もおねしょ)しちゃったのね。ちょっと辛い?」
「うーん… 辛いって訳じゃないけど… 『またやっちゃった…』って気分。」
「そうね… やっぱりヘコんじゃうよね…」
シャピアさんもボクを心配してくれていた。
「元気出して。未青くん。」
センセイが優しく肩をぽんぽんして慰めてくれた。
(無言で頷く)
「せっかくの朝ごはんが冷めちゃうわよ。」
「うん…」
センセイに慰められた後の朝ごはんが、いつもより美味しく思えた。
ボクは以前センセイに話していた。「前の世界での辛かったことを思い出してしまうから、おむつやおねしょライナーはあまりつけたくない。」ということを。特に学校に行く時は学校でのおもらしが怖くて必ずおむつを履いていき、さらにはおむつがバレないかどうかにビクビクしながら過ごしていた。センセイもシャピアさんも分かってくれていて、一応おむつは買ってあるが「つけたくなったら言ってね。」と言われた程度だった。
ボクは2人に余計気を遣わせちゃってるのかな。ありがたくもちょっと申し訳ない感じがした。
この日は朝はしばらく晴れていて暖かかったが、夕方くらいから突然強い雨が降り出し寒くなっていった。そのせいで体が少し冷えてしまったボクは晩ご飯の最中に突然かなり強い尿意を催し、その尿意のせいで食卓の席を立つこともできず座ったままおもらしをしてしまった。
「あっ…あっ…あっ…」
(ジョォォォォ… ピチャピチャピチャピチャ…)
「あらら大変。」
「ごめんなさい…」
「気にしないで。未青くん、もしかしてさむくなっちゃったのかな?」
(涙目の状態で無言で頷く)
「着替えたらご飯の続きを食べて、後でゆっくりお風呂に入ろう。」
「うん…」
着替えて晩ご飯を食べ終え、お風呂に入った。お風呂を上がってからおよそ2時間後。時刻は午後11時過ぎ。
「ねえ未青くん。」
「センセイ?」
「これ、今日パジャマのズボンの下に履いてみる?」
そう言ってセンセイは黒いスパッツを見せてきた。女子がスカートの下に履いているようなやつだ。
「スパッツ…?」
「うん。私が前よく履いてたのなんだけど、未青くんこれなら少しは暖かくなるんじゃない?」
「そうかな?」
ボクはパジャマのズボンを一旦脱いで、そのスパッツをパンツの上に重ねるようにして履く。
たしかに少し暖かくなった感じがする。
「ほんとだ。なんかちょっと暖かくなった。」
「これ、未青くんにあげる。」
「いいの?」
「うん。今あるのはこれだけしかないんだけど…」
どうやらそのスパッツは、センセイが何かボクの下半身を暖かくできそうなものがないかとたまたまクローゼットを探していたら発掘したものらしい。
「ありがとうセンセイ。でも、センセイが前スカートの下に履いてたのを履くなんて、ちょっと恥ずかしいな…」
体の冷えがおねしょの一因になることは知っているから、短いものであってまた恥ずかしさもありながらも、少しでもボクの体を暖かくできるものは心強いと思っていた。
そうして、ボクたちは寝た。
そして深夜2時ごろ。
「ん…」
ボクは尿意で目が覚めた。この世界に転生してからは初めてのことだ。
「うっ…」
布団を出ようと体を上げたが、雨が降り続いているせいで寒さを感じる。またボクは暗いところが怖くて夜中は一人でトイレに行くことができない。センセイがよく寝ていることが分かる寝息が聞こえてくる。
「…」
どうしようと思ったボクは布団にまた潜った。しかし、どうしようと思っている最中に、また寝落ちしてしまった。
それからしばらくした後…
「…!」
ボクは膀胱が痛烈な痛みを帯びる感覚で目が覚めてしまった。寒さ・尿意・夜の怖さ。その3つの条件がボクの尿意を急激に高めてしまったのだ。
目が覚めた直後のボクに「おもらし」という言葉が迫ってくる。
「んっ…」
ボクは布団の中で一人、必死に膀胱括約筋に力を入れながら堪え続ける。しかし、寝落ちしている間に急激に強まった尿意への不安や真夜中の恐怖が、ボクの尿意をさらに高めていく。膀胱の括約筋は次第に、老朽化した吊り橋みたいに軋みだしていく。
それでもボクは膀胱括約筋に必死に力を入れて堪え続ける。しかし…
(ジュッ… ジュッ…)
少しチビってしまった。ボクは布団の中で一人、パジャマのズボンの上から大事なところを押さえながら必死に抵抗を続けた。そんな中でも、パンツにおしっこが少し少し滲み出続ける感じがする。
「もう…ダメ…!」
ボクはそう思って意を決し、布団を出てセンセイを起こすことを決意した。
ボクは布団を出て、足が細かく震わせてズボンの上から両手で大事なところを押さえながら、センセイの寝ているベッドの枕のすぐ隣へ移動した。
真夜中の真っ暗な部屋という恐怖が、ただでさえ最高レベルのボクの尿意をさらに強めていく。
「センセイ… センセイ…」
ボクはおしっこをパンツの上のスパッツにもジワジワと滲ませながらセンセイを起こす。
「ん~?未青くん~?」
センセイがゆっくりと目を覚まして、ベッドから体を起こす。それと同時にボクの膀胱が更に痛みを増す。
「センセイ…トイレ…トイレ行きたい…」
ボクは大事なところを押さえておしっこをジワジワとパンツの中に滲ませながら、センセイにトイレに行きたいことを訴えた。
しかし…
「もう…漏れちゃ…あ、あ、あぁぁ…」
(ジュ、ジュジュ、ジュウゥゥゥゥゥ…)
ボクは起き抜けのセンセイの面前でおもらしをしてしまった。大事なところを両手で押さえたまま。
「未青くん… 大丈夫?」
「センセイ…う…うあぁぁぁー…」
ボクは泣き出した。パンツとパジャマのズボンどころか、センセイからもらったスパッツもびしょ濡れだ。
「よしよし。シャワー浴びて着替えよ。」
(泣きながら頷く)
ボクは泣きながら、センセイに付き添われてお風呂場へ行った。
「あら。フレインどうしたのこんな時間に?まだ4時前よ。」
「お母さん?未青くんがおもらししちゃったの…」
シャワーを浴び終えて一人部屋に戻ると、センセイが部屋の電気をつけて待ってくれていた。
「未青くん。こっち来ていいよ。」
と、ボクをセンセイのベッドの上、センセイの隣に座らせた。
「ごめんなさい…」
「どうしたの?未青くん。」
「ごめんなさい…センセイのスパッツ…汚しちゃって…」
「いいのいいの。暗い中トイレに行くのが怖かったんでしょ?」
(無言で頷く)
「うふふ(笑)」
センセイは暖かい微笑みながら、隣に座るボクの肩を優しく撫でた。
「そうだ。」
「センセイ?」
センセイは何か言いたげな様子だ。
「ねえ未青くん。今から私と未青くん。この一緒のベッドで寝よ。」
「えっ…?いい…の…?」
「うん!」
センセイは今から、センセイが寝ている一緒のベッドで寝ようという。
たしかにセンセイのベッドは2人寝られるほどの広さがある。しかし、急にセンセイと同じベッドに寝るのはちょっと抵抗がある。
「だってその方が、もし未青くんが寝ている間にトイレ行きたくなったら、怖い思いしないですぐに『トイレ行きたい』って言えるでしょ?」
「うん。」
「じゃあ決まり!一緒に寝よっ!」
センセイに言われるがまま、ボクはベッドの上、センセイと同じ掛け布団の中に入った。
「センセイ… もしボクがおねしょしちゃったら…」
センセイと同じベッドで寝る。もしボクがおねしょしてしまおうものなら、センセイの服への被害も免れることは出来ないということを意味している。
「心配しないで。えいっ。」
センセイは何かの魔法をかけた。
「どうしたの?」
「区画魔法。これでもし未青くんがここでおねしょしちゃっても私の寝ているところまではシミが広がってこなくなるようにしたから。安心して。」
「ありがとう…(笑顔)」
センセイの魔法のおかげで、おねしょをしてしまった時のセンセイへの被害の心配もなくなった。
「未青くん、おやすみ。」
「おやすみ。」
至近距離で見るセンセイの寝顔には少しドキドキするが、安心したボクはちょっと経った頃にはそのまま眠ってしまった。
そして朝。
ボクは、おねしょをしなかった。
「よかったわね。5日連続でのおねしょ回避できて。」
「うん!」
「おはよう。あら、未青くん今日は朝から元気ね。」
「シャピアさん。ボク今日、おねしょしなかったんだ。」
「よかったじゃない!」
「うふふ(笑)」




