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Case 49「初詣、行ってみた。」

<作者より>

2022年、皆様あけましておめでとうございます。

未青くんは… 相変わらず今年もやらかすということだけはここで言っておきます。

この世界の年越しやお正月という文化も、昔に日本人の転生者によって持ち込まれたものだ。

当然、「初詣」という概念もある。


大晦日の朝。ドラマの再放送を見ていたボクはセンセイからこんなことを話しかけられた。

「ねえ未青くん。未青くんって前の世界で初詣行ったことってある?」

「初詣?行ったことはなかったけど…―」

初詣、知ってはいるがボクは行ったことはない。そもそも病院で年を越したことがあるボク。家で年を越した時も近くにお寺や神社がなかったことや冬休み中は外出を極力控えていたこと、それになによりも、初詣の行列の中でおもらしをしてしまわないか心配だったからだ。


「そうなんだ… でも未青くん、病気全部なくなってるでしょ?」

「うん。」

「だから、今年は行こうよ。」

「うん! でも…」

「やっぱりトイレ心配?」

「うん…」


センセイとの初詣、楽しみではあるが、やっぱりトイレが心配だ。

「大丈夫。初詣の時に仮設トイレいっぱい置いてある神社知ってるから。」

「本当?」

「うん。」


そう言ってセンセイはスマホを見せてきた。その神社は初詣シーズンに、なんと職員用駐車場に仮設トイレがところ狭しと設けられるという。トイレ待ちの行列も2~3人程度だという。

トイレが近く日常的におもらしをしてしまうボクからしたら、心強いことこの上ない。


「そこ、いいかも…!」

「でしょ?お正月、一緒に行こう。」

「うん!」


その後、家に遊びに来たネルルとも一緒に年を越したボク。(ちな新年早々ボクもネルルもおねしょした)

ちなみに大晦日の夜は蕎麦を食べた。センセイもシャピアさんも大晦日に蕎麦を食べるのは初めてだという。



「センセイ!シャピアさん!あけましておめでとう!」

シャピアフェ「はい。あけましておめでとう。」


この世界のお正月にもおせち料理にあたるものはないが、伊達巻は食べるという。センセイによると、この世界にお正月やおせち料理が持ち込まれた際、伊達巻はこの世界の人々に受け入れられたのが大きな理由なんだとか。

フレイン「未青くんが前いた世界には伊達巻の他にもいろいろあるんでしょ?」

未青「うん。黒豆とかかまぼことか本当にいろいろね。」

ネルル「俺もユイ(ねえ)から聞いたことあるよ。『紅白なます』とかいうの食べたことあるけど、ちょっと渋かった…」

未青「やっぱり?(笑)」


おしるこは「緑小豆(あずき)」というその名の通り緑色の小豆を煮てそれに焼いたお餅を入れて食べるという。色はあんこがお茶のような緑色である他は前の世界のおしること変わらず、ポジションとしては完全にお雑煮のそれだ。


食事を終えた後は、プラルさんとも合流していよいよ初詣へ出かける。ズボンの下にヒートテックの黒いタイツを履いて、防寒対策もバッチリだ。

6人乗りのレンタルカーペットに乗って、センセイが昨日教えてくれた神社へ5人一緒に行く。


レンタルカーペットに乗ること15分で、ボクたちは目的地の神社に着いた。

「すごい…」

駐車場いっぱいに並ぶ仮設トイレ。はっきり言って壮観だ。仮設トイレを見て「壮観」という印象を感じるのは初めてだ。


神社のレンタルカーペットポートで降りて、初詣の列に並ぶ。この辺では人気の神社とあって、長い行列ができていた。

列に並んでいる間、ボクはネルルといろいろおしゃべりをする。

「ねえネルル。」

「未青?」

「ネルルって初詣行ったことある?」

「あるけど… 毎年じゃないよ。俺が住んでるとこも近くに神社とかないし、正月はのんびりしてたいから…」


列に並ぶことおよそ15分。そうこうしているうちにボクたちの番になった。この世界における神社のお参りの作法も、ボクが前いた世界と同じだ。


(手を2回叩く音)


ボクは今年の願い事をする。

(今年もセンセイたちと楽しく過ごせますように、前の世界のお父さんお母さんが元気で暮らせますように、あとそれに何よりも、おもらしの回数が減りますように…)

初めての初詣。なんだか心が洗われたような感じもする。


お参りを済ませた後ボクたちは神社の中を散策しながらおみくじを引いたり甘酒を買って飲んだりした。センセイによると「蟲人(ちゅうじん)」は甘酒でも酔っ払ってしまう種族であるから、未成年が甘酒を飲むには蟲人(ちゅうじん)ではないことを証明する必要があるという。まあ証明すると言っても甘酒を売る人は高い種族判別能力を持っている人がほとんどだから、前の世界のように免許証とかをいちいち出す必要はほとんどないという。


甘酒の露店の店主「はい!熱いから気をつけてね。」

未青・ネルル「ありがとうございます。」

2人で甘酒を飲みながらいろいろおしゃべりをする。

「未青ってバイト新年はいつから?」

「明日からだよ。ネルルの学校はいつから?」

「10日から。」


甘酒を飲み終わった後は神社の池とかを見に行く。その池は有名な池だそうで、人が集まっていた。


そこでのことだった。


「姉ちゃん。」

「ネルル?」

「トイレ…」

「うーん。でもこの辺のトイレ軒並み混んでるし… ちょっと遠いけど、あのさっきの仮設トイレいっぱいあるところまで行こう。そこまで我慢できる?」

「うん…」

ネルルがトイレに行きたくなった。ボクたちもそれについていくことになった。今ボクたちがいるところは、さっきの仮設トイレがたくさん並んでいる場所とは対角線上も対角線上というところだ。少し早いペースで歩いても20分はかかるだろう。


「ううっ…」

ネルルはちょっとキツそうだ。そう言えばさっきのプラルさんからの『そこまで我慢できる?』という問いかけに対する返事も、自信がなさそうだった。


「ネルルはもしかしたら限界なのかもしれない」そう思った直後のことだった。


「あっ…」

ボクもトイレに行きたくなってしまった。それもそこそこ強めの尿意だった。


「ねえ未青くん?」

センセイが話しかけてきた。

「未青くんもトイレ?」

「うん…」

「分かった。そのまま一緒に行こう。ねえプラル。未青くんもトイレ行きたいみたい。」

「未青くんも?了解。ちょっとネルルヤバいみたいなの。」


ボクたちは仮設トイレが並んでいるところまでの長い道のりを急ぐ。急ぐのに比例して、尿意もどんどん高まっていく。


ネルル「姉ちゃん… 俺、もう…漏れる…」


歩くこと20分。やっと仮設トイレが並んでいるところに着いた。激しい痛みを上げる膀胱の中では、おしっこが沸騰しているような熱いものを感じていた。パンツが湿っている感じもする。ボクもはっきり言ってもう限界だ。でもネルルの表情からも伝わる限界さと比べたらまだ余裕がある方なのかもしれないけど。


表示板で空いているトイレの場所を確認する。

ネルル「あった!」

表示板の空いているトイレにタッチしたネルルは、案内魔法で地面に出現した矢印に従いトイレへと猛ダッシュしていった。

ボクが見つけた空いているトイレは、ちょうどネルルが行く場所の2つ左隣だ。ボクもネルルの後を追うように、案内魔法で出現した矢印の上をダッシュする。


いずれも、表示板からはちょっと距離があるところだ。


(ネルルの飛び込んだトイレのドアが閉まる音)

「ネルル、間に合ったかな…?」


ネルルのことが心配だが、ボクももう間に合うかどうかというところ。


ボクはトイレに飛び込み、ドアを閉め、和式便器の前まで来て、ズボンのベルトを外そうとする。





















(あ… あれ…!?)

しかし、なかなかズボンのベルトが外せない。

(ジュジュッ… ジュジュッ…)


パンツにチビる勢いが激しくなる中、ボクはズボンのベルトと悪戦苦闘する。


悪戦苦闘すること何十秒か。やっとベルトを外せた。そこで―


















































(ジュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ…)

ボクの膀胱は、そこでタイムリミットを迎えた。


(ああ… ああああっ…)


「ズボンのベルトを外せたところまで来たのに」「あとは大事なところを出せば間に合ったのに…」

ボクはそのことに絶望しながら、便器を見つめながらパンツ・ズボン・タイツがどんどん濡れていく感覚を肌で感じていた。


元日早々、ボクが神社の仮設トイレの中でしたこと。それは「おもらし」だ。ショックなことこの上ない。


「ううっ…」

ボクの目には涙が浮かんでいるのが分かる。ボクはそのまま俯きながら、トイレを出る。


(トイレのドアが開く音)


虚しさしか感じないままトイレを出るボク。

すると…


(ネルルの泣き声)

ネルルがプラルさんに抱き着きながら泣いているのが見えた。見るとボクと同様にズボンのお尻が濡れている。


「ネルルも間に合わなかった」ボクがそれを一発で確信した。


「ネルル。ネルル。」

ボクはネルルを慰めようとする。ネルルはそれに反応した。

「(涙声で)未青?」

「ネルル?大丈夫?」

「(すすり泣きながら)俺… 間に合わなかった…」


ネルルは便器の前まで来たところで膀胱がタイムリミットを迎え、ボクと同様に便器を目の前におもらしをしてしまったようだ。


~回想・ネルル、飛び込んだトイレの個室内にて~

ネルル「ああっ…!あっ…!あっ…!ああっ―!!!」

(ジュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ…)

~回想終わり~


「だ、大丈夫だよ…」

「(すすり泣きながら)?」

「ボクも、間に合わなかったんだ…」


ネルルはこっちを向くと、ぐっしょり濡れたボクのズボンの方を見る。


「言っちゃ悪いかもしれないけど、未青が間に合わなかったの見て… 俺、ちょっと安心しちゃった…」

「そう?(苦笑)ボクたち… 相変わらずゆるゆるだね…(苦笑)」

「うん…(苦笑)」


ネルルはボクの濡れたズボンを見て安心した様子だ。ちょっぴり恥ずかしかったけど、ボクもちょっと安心した。


フレイン「二人とも隅っこの物陰で着替えよう。」

未青「うん…」


その後ボクたちは物陰に移動して迷彩魔法をかけられ、転送された服に着替えた。家に帰ったのはその後だった。


レンタルカーペットに乗って帰る途中のこと。

「ねえ未青。」

「ネルル?」

「改めてになるけど、今年も、よろしくね。」

「うん!」


その後家でネルルとプラルさんとは別れた。

ネルルと一緒に過ごせた元日。きっと楽しい1年になりそうだ。

-アスムール民主国の年越し事情-

年越しに決まったものを食べるという概念はないが、やはり日本人の転生者の影響からか蕎麦を食べる家が多いという。


-アスムール民主国のお雑煮事情-

日本人の転生者によってお雑煮も持ち込まれているが、お雑煮文化ゆえにその転生者の出身地によってそれぞれ異なっているため、どのようなお雑煮が好きかで派閥のようなものができている。

過去には「アスムール1のお雑煮決定戦」なるテレビの特番が放送され高視聴率を取ったことがあるほど。あるテレビマン曰く、「お雑煮は視聴率が取れる」。


<作者より>

本年もよろしくお願い申し上げます。

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