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Case 44「スカート、買いたいんです…」

「ねえ未青くん。未青くんそろそろバイト代たまってきてるわよね?」

センセイはある日の晩ご飯の後、こんなことを言い出した。


「そう?」

ボクがカレンデュラでバイトを始めてからもうすぐ半年を迎える。言われてみれば今までバイト代に手を付けたことは一度もない。しかもその事にはボクも今気づいた。


「それももう10万苑ちょっと貯まってたんだよ。未青くんのバイト代。」

「10万!?」

ボクの貯めたバイト代はなんと10万にもなっていた。思えばバイト代を意識してバイトをしていなかったボク。ボクのバイトの目的は今や、ルキちゃん達と楽しく仕事をすることに他ならない。

そんなボクがいつの間にか10万苑もの稼ぎを手にしていたなんて、思ってもいなかったことだ。ちょっと信じられない。


「明日未青くんバイトないでしょ?だからそろそろ何か欲しいもの買いに行ってみたらどうかな?」

とセンセイは言う。

そしてセンセイは1枚の紙を渡してきた。

「これ?」

「うん。」

その紙は、朝のジョギングで店の前なら毎日のように通っている、「Colorful City」という服屋さんのチラシだった。


「これなんかいいんじゃない?未青くんにも似合うと思うんだ。」


センセイはチラシにある藍色の厚手のデニム地の短いギャザースカートを指差す。寒くなった季節、タイツにも似合うそうだ。


「可愛い…うん、ボクも欲しい!」

「じゃあ明日買いに行って来れば?」

「うん!そうする!」


次の日。

未青「行ってきます。」

フレイン「行ってらっしゃい。私はちょっと後になったら仕事で家出るからね。」

未青「はーい。」

センセイから3万苑を渡されたボクは、チラシを持ってColorful Cityへと向かう。センセイから勧められたスカートの他冬用の黒いタイツもいくつか買っておきたいところだ。


「…」

しかし店に近づくにつれ緊張が高まっていく。それもそのはず。この顔つき体つきで服もショートパンツに黒いタイツと言うスタイルだが、ボクは男だ。ただでさえ一人で買い物に行くのは初めてで少し緊張しているのに、買うものがスカートだなんて。緊張が高まらないわけがない。

「なんでこんな大事なことを今になって気づいたんだろう…」と思いながら、ボクは店へと歩いていく。


そうこうしているうちにボクはお店に着いた。

ドキドキが高まっていく中、ボクはスカートを探す。レディースのコーナーへと移動しようとするが、少し躊躇してしまう。


すると、

「いらっしゃいませ。」

店員さんに話しかけられた。センセイと同い年くらいの女性の店員さんだ。突然話しかけられたからか、ボクはちょっと焦ってしまった。

「もしかして、初めての方ですか?」

「は、はい… チラシがあるんですが、これが買いたいんです…」

ボクは店員さんにチラシを見せ、スカートを指差した。


「こちらのスカートですね。ご案内します。」

店員さんがボクを案内してくれるという。ボクは店員さんについて行く。


レディースコーナーのスカートが並んでいる辺りに案内されたボク。

「あるとしたらこの辺りになります。」

という店員さん。ボクはその中から、お目当ての藍色のギャザースカートを探す。


(これだ!)

ボクはお目当てのスカートを見つけた。みただけで可愛く思える。

「試着してみますか?」

「はい。」

その場の流れというのも若干あって、ボクはスカートを試着する事にした。


試着室に入り、ショートパンツを脱いでスカートに履き替える。

(か、可愛い…)

と、スカートを履いていてボクは思った。

(センセイも喜ぶかな?)


その後はスカートのコーナーのすぐ近くにあったタイツのコーナーに移動し、冬用の黒いタイツを4つカゴに入れた。


その後はレジでお会計だ。

「お願いします。」

「はい。」

(レジの音)

「こちらの5つ全部で、18,450苑です。」

「はい。」

ボクは財布から、1万苑札を2枚出して店員さんに渡し、お釣りを受け取った。


可愛いと思ったスカートと冬用のタイツ4枚を買えて、ボクは満足だ。


家に帰るボク。行きの時と比べて寒さが増している。


その帰る途中のこと。

「あっ…」


買い物が終わり緊張が終わった安心感と寒さが重なったのか。ボクは突然強い尿意を催してしまった。

「早く家に帰ろう…」


ボクは歩を早めながら家へと急ぐ。しかし、時間が経つにつれ膀胱の痛みはどんどん強くなっていく。

ボクの手は無意識のうちに、ズボンの上から大事なところを時折押さえていた。


「!」

すると、ここから少し先の横断歩道の向こう側にコンビニが見えた。

「もう家までは持たないだろうからコンビニのトイレを借りよう」と思ったのはいうまでもない。


横断歩道へ急ぐボク。しかし…

(ええっ…)


ボクが横断歩道の前まで来たと同時に、信号は赤になってしまった。ボクは少し絶望した。


街中だから大事なところを押さえることはできない。ボクは必死に膀胱括約筋に力を込めながら、頭の中に浮かび上がっている「おもらし」という単語と必死に戦いながら信号が青に変わるのを待っていた。


膀胱の痛みが限界値を超えつつある。

「ジュウウ…」

膀胱に溜まったおしっこが括約筋をこじ開け、パンツに少し少し滲み出ている。

「も、漏れちゃう…」

とボクは微かに呟いてしまった。


それから何分かが経った頃だった。

「!」

自動車信号が黄色に変わり、間も無く赤になった。そして、歩行者側の信号が青になった。

「青になった!」

ボクは横断歩道に足を踏み出し、コンビニに急いだ―





その時だった。

「あっ… あっあっあっ…!」


横断歩道に踏み出すと同時に、膀胱の痛みが一気に苛烈さを増していった。足が思うように動かない。

(ジュッ、ジュッ、ジュッ…)


そして横断歩道を渡り終えた瞬間…

「あああっ…」

膀胱が最期の悲鳴を上げるかのようなかなり激しい痛みが体に走り、その後機械がシャットダウンするように膀胱括約筋に込めていた力が一気に抜けた。


(ジュウウウウウウウウウ…)


歩道の上でおもらしをしてしまったボク。完全にボクは油断をしてしまっていた。


地面の上にはおしっこの水溜まりが広がっている。

「うっ… ううう…」

ボクは涙を堪えながら逃げるようにその場を後にした。ズボンもタイツもびしょ濡れのまま家に急ぐボク。股間と足が冷たい。


家に着いたのは、それからおよそ5分くらい後のことだった。


「ただいまー。」

「おかえり。」

シャピアさんが出迎えてくれた。


「あら、未青くんおもらししちゃったの?」

「うん… お店出た後のことだったの―」

ボクはシャピアさんに事の一部始終を話した。

(涙声で)「―それで、信号切り替わったところで油断しちゃって―」


ボクはシャピアさんに一部始終を話している間、泣き出してしまった。

「そうなのそうなの。」

(未青の泣き声)

シャピアさんは優しくボクを抱きしめた。


ボクは手洗いうがいの後、シャワーを浴びた。着替えのスカートとタイツはシャピアさんが持ってきてくれていた。


(そうだ!)

「ねえシャピアさん―」

ボクは買ってきたスカートをシャピアさんに見せる事にした。


「これが買ってきたスカート?」

「うん。試着してみて可愛かったよ。」

「そうなの?そうだ、フレインには履いた状態で見せてあげようよ。」

「いいねそれ!」


ボクは部屋に戻って着替える。タイツもさっき買ってきたやつに履き替える。


レプリン「キュン。キュン。」


数時間後。

フレイン「ただいまー。」

シャピアフェ「おかえり。」

未青「おかえりーセンセイ。」


ボクは買ってきたスカート(とタイツ)をセンセイに見せる。


「ねえねえセンセイ。」

「あら。これが買ったスカート。やっぱり似合ってて可愛いわ。」

「ありがとうセンセイ!またあのお店行きたいな。でも…」

「でも?」

「次は…ズボン買いに行きたいな…(苦笑)」

-用語解説-

【Colorful City】

アスムール民主国内で人気の衣料品チェーン。衣料品チェーン国内シェアは2位。今回未青が行ったところとは違う都市型店舗も持っている。魔法も活用したきめ細やかな店内サービスが人気を集めている。本社・1号店はアスムール 南東部の南珠なみたまという街にある。

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