Case 4「服を買いに行こう」
シャピアさんとセンセイとボクの3人で一緒に晩ご飯を食べてから数日。センセイのみならずシャピアさんとも話す機会が格段に増えた。
当然その数日の間に、おもらしも何度もしてしまったが。
そんなある日のこと…
「未青くん。」
「どうしたの。センセイ?」
「今日、お母さんと一緒に未青くんの服を買いに行くんだけど、未青くんも一緒に行く?」
センセイが今日シャピアさんと一緒にボク用の新しい服を買いにいくから、一緒に行かないかと誘ってきた。
服を買いに行く。前の世界では病気で入退院を繰り返していたボクにとっては、ショッピングという概念自体13歳にして初めての経験だ。しかもセンセイと一緒だということだから、行かないわけがない。
「うん!」
「やったぁ(笑)」
センセイも本当に嬉しそうだった。
そしてそれから数時間。昼ご飯を食べ終えてしばらくしてボクたちは買い物にでかける。
「未青くーん、そろそろいくよー。」
「はーい!」
ボクも部屋で着替えてセンセイとシャピアさんに追いつく。センセイもシャピアさんも、上は白っぽい色のブラウスで下は太ももの1/3くらいの丈のプリーツのミニスカートを履いていた。色はセンセイはスカイブルーでシャピアさんは薄い赤。2人ともかわいい。
「お母さんまでミニスカートに必要なんかなかったのに~(苦笑)」
「だって未青くんと初めてのお出かけだもん。奮発しちゃった(笑)」
目的地はこの間の町役場から少し離れたところにある大きなショッピングモールだ。そのショッピングモールも前の世界にあったようなものと対して変わらない。違うとすれば、魔法で道案内のルートを浮かび上がらせることができるなど、近未来的な印象を感じたことだろうか。
「わぁ~…」
「ね、すごいでしょ?」
「うん!」
店内には長い距離を移動する用の小さなレンタルほうきも飛び交っている。人生初のショッピングモールということも相まって、目を惹かれるものばかりだ。
「実は私も。男の子の服買うのは初めてなのよ。」
「未青くんがこの世界に来た時に着ていた服、あれ実は転生するにあたって自動的に身につけられたものなの。」
「そうだったんだ。じゃあ、あの後ボクが廊下でおもらししちゃった時、センセイが用意してくれた着替えは…」
「あれ実は、友達に通信魔法で事情を話して用意してもらったものなんだ。」
「そうなんだ。じゃあ、いっぱい買わなきゃ!」
ボクが転生した後の服周りの話を聞けて、俄然やる気が出た。
「そうね。だって未青くんのことだからおもらししてよく汚しちゃうでしょ?」
「もうお母さん何言ってるのよ~!」
このショッピングモールにはたくさんの服屋が入っている。その中でセンセイがよく行く店に行った。
気に入ったものを選んで試着室で試着する。ボクにとってはそれが一番楽しかった。
センセイやシャピアさんから「かっこいい」「かわいい」「いいじゃない!」と言われると嬉しくなる。太ももが半分以上露出する半ズボンを履いて「完全に女の子ね」と言われた時はやや恥ずかしかったが。
そんなこんなで買った服の数は、かれこれ20着を越えた。ズボンがやはり多いのはちょっと恥ずかしいが。
「いっぱい買えたね。センセイ!」
「うん!どれも未青くん気に入ったわね。」
「次はパンツだね。」
「ちょっとお母さん…(苦笑)」
「あはは…」
ボクはちょっと恥ずかしかった。
服屋から歩くことおよそ5分。下着売り場へ着いた。
見た感じ種類は豊富。しかも男性用と女性用で売られているゾーンがはっきりと分かれていて分かりやすい。
「私はここで待ってるから。フレインも何か欲しいのがあったら、探してきていいわよ。」
「ちょっと未青くんの前で言う事じゃないでしょそれ~!確かにあるけど…」
ボクは男性用下着のエリアへ行き、自分でパンツを選ぶ。これも初めての経験だ。
トランクスとボクサーパンツで並んでいる場所ははっきり分かれている。「やっぱりこっちかな…」と思い、ボクはボクサーパンツを選んだ。上手いことを言うつもりはない。
センセイから事前に「色は気にしなくていいんだよ。」と言われてはいたが、やはりよくおもらしをしてしまうボクは、「おもらししてもシミが目立たないか」ということをつい気にしてしまう。
探し続けること10分弱。全てボクサーパンツ。単色から縞々まで色とりどりのものを選んだ。おもらししたら一番シミが目立ってしまうグレーも一枚。ボクは満足だ。
しかし、シャピアさんのところに戻ろうと思った途端…
(あっ…)
パンツを選ぶときについおもらししてしまった場合の事を考えてしまったからなのか、トイレに行きたくなってしまった。尿意は強め。
ボクは急いでシャピアさんのところに戻ろうとする。しかし初めてのショッピングモールでイマイチ位置関係がつかみ切れていない不安で尿意は高まり、その尿意の高まりに対する不安も高まっていく。
結局シャピアさんの側にたどり着いた頃には、ボクの膀胱の痛みはかなり激しくなっていた。
「シャピアさん…」
「あら、未青くんおかえり。パンツこんなにいっぱい選べたのね。」
「うん…でもボク…トイレ行きたい…」
ボクは今にもおしっこでこじ開けられそうな膀胱括約筋に力を入れて堪えながら、シャピアさんに尿意を訴えた。センセイはまだ下着売り場にいるようでそこにはいない。
「分かったわ。フレインに戻るように伝えるから待っててね。もう漏れそう?」
(未青が無言で頷く)
トイレの場所も分からない不安もある。センセイが戻ってくるまで尿意はさらに強まっていった。
「お待たせー。」
「センセイ…!」
センセイが戻ってきた頃には、ボクは無意識のうちに大事なところをズボンの上から押さえてしまっていた。
センセイは案内魔法を使って、トイレまでのルートを床に浮かび上がらせる。
「こっちだよ。」
「私も行くわ。」
3人で一緒にトイレに急ぐ。パンツが少し濡れた感覚もする。
トイレまではちょっと距離がある。ボクは細い糸を張り詰めるように、膀胱括約筋に力を入れて堪えながらトイレへと急ぐ。
「もうすぐトイレだから頑張ってね。」
急ぐこと2分弱。センセイからトイレの案内板が見えた。確かに奥にトイレがあるであろう、奥へ続く道が見えてきた。
しかしそこでボクの中に巻き起こった「もうすぐトイレだ…」という安心感が、ボクの中で張り詰めていた糸をつい緩めてしまった。
「あっ、あっ…」
(ジュ… ジュ… ジュ…)
括約筋が最後の抵抗をしているかのように増した膀胱の痛み耐えられず足が震えて立ち止まってしまったとともに、張り詰めた糸が切れるように膀胱に込めていた力がフワッと抜けるような感じがした。そして大事なところの中におしっこが込み上げてきて、パンツとズボンが濡れていく感じがする。
(ジュゥゥゥゥ…)
「み、未青くん…」
ボクはおもらしをしてしまった。ショッピングモールの中で、トイレまでの最後の曲がり道の直前で、シャピアさんもいる前で。
「大丈夫?」
店の中がザワついているような声が聞こえてくる。その中に水溜りの上で俯くボクに、シャピアさんが優しく話しかけた。
「うぅぅ… トイレ…もうすぐだったのに…」
「安心しちゃったのね。よしよし…」
(泣きながら頷く)
「さっき油断しなかったらトイレに間に合ったかもしれないのに…」ボクはそれが本当に悔しかった。
「私が会計を店員さんに伝えてくるわ。フレインは未青くんと一緒にいてあげて。」
「うん。」
曲がり角を曲がって、トイレへ続く道。ボクが駆け抜けるはずだった場所だ。センセイはボクのズボンのお尻の部分をタオルである程度拭うと、その脇にあるベンチに座らせた。
シャピアさんを待っている間、センセイはそこでボクの頭や肩を撫でて慰めてくれた。シャピアさんが会計を終えて戻ってきたのは、5分も経たない頃だった。
「着替えの服…どうしよう…」
「買った服を開けられるスペースもなさそうだし、家から転送した服に着替えましょう。」
シャピアさんがそう言うと、センセイは家から魔法で着替えの服を転送した。その後ボクは迷彩魔法をかけられて、町役場の時と同じ様にその場で着替えた。
迷彩魔法をかけられているとはいえ、ショッピングモールの普通に人が行きかう場所で着替えているのは、恥ずかしかった。
着替えが終わると、ボクたちは家に帰った。帰る間も、センセイは気持ちが沈んでいるボクを慰めてくれた。
そして家に着いて手洗いうがいを済ませた。部屋に戻るとセンセイは買ってきた服をクローゼットにしまう。ボクはその様子をずっと見ていた。
「そうだ。ねえ未青くん。」
センセイはボクを呼んだ。センセイの側に来ると、ボクにさっき買った群青色のルームウェアのズボンを見せてきた。そういえばさっきの試着の時、このズボンを試着した姿はセンセイには見せていなかった。
「せっかくだから履いてみる?私も見てみたいな。」
「うん。」
ボクはそのズボンを履いて、センセイのところへ戻る。
「未青くん、すごくかっこいい!」
「そう?」
センセイは反射魔法で鏡を実体化させると、その鏡にはそのズボンを履いているボクが映っていた。
その姿は心なしか自分でも「なんかかっこいい…」と思ってしまうほどだ。
「ありがとう。センセイ!」
「うふふ。」
ボクはなんだか、元気になれたような気がした。




