Case 30「夏祭り、星空の下で。」
(ルンルンしたような雰囲気の未青)
セレスティーヌ「未青ちゃん未青ちゃん、なんか今日機嫌良いけどどうしたの?」
と、バイト中、店にはお客さんがいないタイミングでセレちゃんに話しかけられたボク。
~回想・1時間半ほど前~
「だめ… だめ… あっ… ああっ…」
(ポチャポチャポチャポチャ…)
セレスティーヌ「未青ちゃん… ご… ごめんね…」
~回想終わり~
今から1時間半ほど前、トイレに行こうとするもセレちゃんが入っていたから我慢した末セレちゃんが出てきたと同時にトイレに飛び込むも、あと一歩間に合わずドアも全開で便器に跨った状態でおもらしをしてしまったのが嘘のようだ。
「あ…分かっちゃった?(苦笑)」
セレスティーヌ「うん!」
ハミン「私も気づいてたよ。何か今日楽しみなことがあるの?」
ルキ「もしかして―」
とルキちゃんが言いかけたところで…
ラジオのパーソナリティー「さあ今日はいよいよ待ちに待った『舞嗣遠川祭り』の日ですけれども―」
というラジオの声が聞こえてきた。
ルキちゃんは
ルキ「もしかしてこれのこと?」
と言った。
「うん!」
ルキ「やっぱり(笑)私も夜お母さんと一緒に行くんだ。」
ハミン「私もー。」
セレスティーヌ「私も!」
今日は舞嗣遠では最大のお祭り『舞嗣遠川祭り』の日。大きな花火も打ち上げられるそのお祭りにボクはセンセイと一緒に行く。前の世界では地域の盆踊りに行ったことは小6の時に一度だけあったが、花火大会、いや規模のそこそこ大きな夏祭りに行くのは初めてだ。会場は遠詠川の河川敷。この間クルルスさんと魔法の実践授業をやった場所だ。
(ちなみに例年は8月の中旬なんだけど、今年はその時期がアスムール民主国で開催されるリバースポーツの国際大会と重なり、しかも遠詠川が龍舟競漕とカヤックの競技会場になっていることから時期が早まった。)
ルキ「私は浴衣着て行くけど、未青ちゃんも浴衣着るの?」
未青「うん。センセイにやってもらうんだ。浴衣着るの何年振りだろう…」
セレスティーヌ「男の子タイプと女の子タイプ、どっち?」
未青「女の子タイプの方…(照)」
ハミンちゃんとセレちゃんも浴衣を着るという。セレちゃんのものについては昨日、薄いピンク色の地に朝顔の柄のものを見せてもらった。
夕方4時半頃。一日の仕事が終わりみんなが帰っていく。ボクも家に帰る。
「ただいまー!」
この間から、少なくともカレンデュラと家の間なら一人で行き来できるようになったボク。
シャピアフェ「あら。おかえり。」
フレイン「おかえりー。」
手洗いうがい、それにトイレを済ませた後…
「センセイ。」
シャツとスパッツの状態でセンセイに話しかけるボク。センセイに浴衣の着付けをやってもらうためだ。
「分かったわ。」
浴衣の着付けは5分ほどで終わった。
「可愛い~!」
「うふふ。私のお気に入りの一つなんだ。」
明るい水色の地に、川のような柄の可愛らしい浴衣だ。
その後はセンセイも浴衣を着る。
迷彩魔法で姿は見えないセンセイ。ボクはセンセイがどんな浴衣を着ているのか、ボクは楽しみになっていた。
「!」
着付けが終わったセンセイが迷彩魔法を解いた。
「かわいい…!」
センセイは白地に藍色の朝顔のような花の柄の浴衣を着ていた。
「うふふ。ありがとう。」
そして時間は夕方の6時。
テレビのアナウンサー「こんばんは。6時になりました。『NEWS Coaster』。全国のニュースをお伝えします。」
未青「いってきまーす!」
フレイン「行ってきます。お母さん。」
シャピアフェ「行ってらっしゃい。私も遅れて行くからね。」
川祭りに出かけるボクたち。シャピアさんは遅れて行くという。
歩くことおよそ15分。遠詠川の河川敷に着いた。
お祭りに来ている20代くらいの男性の魔法使い「ったくなんで時期変えちゃうんだよせっかく時期被るならRSWCの選手も川祭り楽しんで欲しかったのに。」
そこかしこに人がいっぱいいて屋台や露店もたくさん並び、木には提灯が吊るされている。ただでさえ魔法の練習とかで来ている人で賑う河川敷が、いつも以上に賑やかだ。
「わぁ…」
空の夕焼けもとても綺麗だ。
「未青くん。まずは露店で何か食べようよ。」
「うん。」
「未青くんは何が良い?」
(近くで焼きそばを食べているカップルが目についた後)「焼きそばにしようかな…」
「分かった。」
焼きそばの露店を探すボクたち。でもどの露店にもそこそこ人が並んでいる。食事系の屋台や露店は特に人が並んでいるという状態だ。
歩くこと大体5分。何度かこの河川敷に来たことのあるボクでも初めてくるエリア。列が短めの焼きそばの露店を見つけた。
「ここにしようかな。ボクもお腹空いちゃった。」
「それがいいわね。私もだいぶお腹空いてきちゃったし(苦笑)」
ボクたちは列に並ぶ。列に並ぶことおよそ5分。
「ほい!焼きそば2人前!」
未青・フレイン「ありがとうございます。」
「まいど!」
近くにあったベンチで焼きそばを食べた後、さらに河川敷を進んでいく。
途中でヨーヨー釣りと射的とか、いろんなことをやった。バイト代がある程度溜まってきたので、お金はボクのバイト代から出すことにしている。
ここに来て大体1時間くらいが過ぎた頃だろうか。
「あ…」
下半身がムズムズする感覚がした。尿意だ。
「センセイ。」
「未青くん?」
「センセイ… トイレ行きたい…」
「マジで?困ったなぁこの混み具合だし、見つかるかな?だって未青くん…」
「あっ…」
ボクは思い出した。体は男だが着ている浴衣は女もの。今ボクは、簡単に言うなら男女共用のトイレしか使えない状況だ。
センセイはスマホを出して何か操作している。
「何探してるの?」
尿意が段々高まっていって脚を少しモジモジさせながら、ボクはセンセイに聞いた。
「男女共用トイレがあるとこ。」
と、センセイは答えた。それから30秒くらい経った後、センセイは
「あった。」
と一言呟いた。
センセイにスマホの画面を見せてもらうボク。
ここからさっきの焼きそば屋さんの後ろあたりだった。距離で言うなら歩いて大体5分くらいだろうか。
「分かった。」
「うん。未青くん、間に合いそう?」
「多分…」
ボクの膀胱は若干ながら痛みを帯びてきつつあった。
ボクたちはトイレに急ごうとする。しかし人が混み合ってきていた。ボクたちは人混みをかき分けながら、露店や屋台の裏の方にある藤棚の方に出ようとした。その方が人が少なくて簡単にトイレまで急げるからだ。
人混みが段々強くなっていく中、ボクは露店や屋台の裏を目指した。しかし、思うように進めない。センセイの姿も、気を抜けば見失ってしまうほどだ。苛烈さを増してきつつある尿意に、ボクは魔法を使うこと余裕すらなかった。
「はぁ…」
さっきの射的のお店とわたあめのお店の隙間から、なんとか藤棚に抜けることができた。
しかし…
「えっ…?」
そこにセンセイはいなかった。どうやら人混みに飲み込まれてしまったようだ。
「センセイがいない…!」
ボクはセンセイを探すことにした。場所は把握しているが、詳細な場所までは知らない。通信魔法も思うように使えないから、ボクは「焼きそば屋さん」ただそれだけを頼りに、一人でトイレを目指すしかない。
そんなボクの尿意は膀胱がかなり強い痛みを帯びるほどに強くなっていた。かと言ってせっかくの浴衣が汚れてしまうから、大事なところを押さえることもできない。
センセイがいない中一人でお祭りに来ているたくさんの人たちの前でおもらしをしてしまうという、最悪の事態すらあり得る状態だ。
透視魔法で藤棚に隠れてよく見えない露店の名前・看板や、幕の向こうにある露店の売り物も確認しながら、一人でトイレを目指すボク。「センセイがいない」その不安か焦燥感に似た気持ちが、尿意をさらに強めていく。
「ああぁっ…」
(ジュウゥ…)
脚が段々とおぼつかなくなってくる。不意に立ち止まったと同時に、パンツの中におしっこが少し滲み出る感じがした。
ボクの体は明らかに、「おもらし」の瞬間を迎えるまでほとんど時間がない状態になっていた。
「センセイもきっと同じ魔法を使っているはずだ」そう思ったボクは、探索魔法を使ってセンセイを探した。
どれくらい時間が経っただろうか。スパッツにも滲み出たおしっこのシミが広がってきた頃…
「あっ!」
透視魔法である人を見つけた。それはさっきの焼きそば屋のおじさんだった。
ボクか明らかにトイレに近づいてきていたことを意味している。その藤棚を挟んだ向こうにはなんと…
「!」
センセイがいた。センセイも探索魔法を使ってボクを探し、先回りしていたというボクの予想は見事に的中した。
「センセイ!センセイ!」
「未青くん!」
ボクは嬉しさのあまり、センセイに抱きついた。
「ごめんね。脱出するの失敗しちゃって…気がついたら反対側のところに出ちゃってたんだ。大丈夫だった?」
「うん…」
ボクはセンセイを見つけられたことが何よりも嬉しかった。嬉しくて泣いてしまっているほどだ。
そしてボクはセンセイの体から離れたと同時に、断末魔にも似た強烈な膀胱の痛みがボクの体に走った。
「…」
「未青くん?」
「出る…」
ボクが膀胱括約筋に込めていた力がフッと抜け、一気に浴衣に包まれたボクの下半身に暖かい感覚が広がっていった。
(ジュジュ…ジュジュジュ…ジュウウウウウウウウウ…)
星空の下、ボクはセンセイの目の前で「おもらし」の瞬間を迎えた。ボクが入るはずだったトイレにどれくらいの行列が並んでいたかは分からない。
20秒くらいでボクのおもらしは終わり、そんなボクの頭をセンセイは優しく撫でてくれた。浴衣は無事だった。
その後ボクたちは藤棚の下に移動し、そこでセンセイに迷彩魔法をかけられて濡れたパンツとスパッツをセンセイが家から転送してくれたものに履き替えた。
着替えが済んだ後は、近くにあったベンチで休憩し、二人で空を眺めていた。綺麗な星空が広がっている。
その中で、ボクは寝落ちをしてしまっていた。
「… 未青くん。未青くん。」
シャピアさんの声が聞こえてきた。
目を開けると、そこにはシャピアさん・フィオさん・ファルンさん・ルキちゃんとそのお母さん・陽夏ちゃん・スピーサさん・ヴィオナちゃん・マリーユさんがいた。みんなそれぞれ綺麗な浴衣を着ている。
(ハミンちゃんもセレちゃんもいたが、2人がボクが目を覚ます少し前にトイレに行った)
ルキの母「その子はカレンデュラで一緒の子?」
ルキ「うん。」
未青「… みんな…」
「未青くん起きた?うふふ。びっくりしちゃった?」
どうやらセンセイが、ボクがうたた寝をしている間にシャピアさん・マリーユさん・スピーサさんにこの場所を教えたという。
「後10分ほどで花火が打ち上がります。」
花火の打ち上げが始まるアナウンスが流れた。ボクたちは河川敷の土手の上に移動した。その間にハミンちゃん・セレちゃん、それにクルルスさんとヘブンさんも合流だ。
(花火が打ち上がる音)
夜空に色とりどりの綺麗な花火が打ち上がる。自分にとっては人生初となる花火を、ボクは「きれい…」という一心で見続けていた。
花火を打ち上げが終わってからまた露店や屋台を楽しんだ後、家に帰った。家に着いたのは、かれこれ夜の10時半だ。
「ああっ… だ… ああぁ…」
(ピチャピチャピチャピチャ…)
家路の途中で強い尿意に襲われた末、間に合わず浴衣のままトイレのドアの前でおもらしをしてしまったボク。(今回も浴衣は無事)
浴衣を解いてもらい、手洗い・うがい・シャワーを済ませて、パジャマに着替え、ボクたちは眠りについた。
「センセイ…」
「なあに?未青くん?」
「今日、とっても楽しかった。」
「うふふ。よかったわね。未青くんにとっては、あれが初めての花火だったんでしょ?」
「うん…!」
翌朝。
(ぐしょ…)
いつものようにおねしょをしてしまったボク。シャワーを浴びて着替えを済ませ、朝ごはんのテーブルへ。
「これ…!」
そこには、昨日の花火の写真が5枚あった。シャピアさんが撮ったもので、夜中のうちにプリントアウトしたという。




