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Case 28「未青、人魚に会う。」

ある日のカレンデュラでのバイト中のこと。


「あっ… ああっ… 出ちゃっ… ああっ…」

(ジョロロロロロロ…)


シフト中に尿意を催したボクは、シフトが終わる時間まで我慢するも、どうしてもできなくなりマリーユさんに話して一旦替わってもらいトイレまで急いだものの、間に合わずトイレに飛び込みドアを閉めたというところで便器を背にしたままおもらしをしてしまった。


未青(みお)ちゃん。大丈夫?」

トイレを出ると、そこには心配そうな表情のハミンちゃんがいた。ボクがトイレに飛び込むところを目撃していたという。

「ハミンちゃん…」

「マリーユさんには私が話しておくから。未青(みお)ちゃんはお着替えしてていいよ。」

「うん…」


ボクがバイトを始めて1か月以上が過ぎ、ボクがやっちゃった時の流れもすっかり定着した。

(もともとセレちゃんがボクと同じようによくおもらしをしてしまうからというのも少しばかりあるんだけど)


「マリーユさーん。未青(みお)ちゃん間に合わなかったー。」

「そうなの?ありがとうねハミンちゃん。」

という2人のやり取りを耳にしながら、ボクは着替えの部屋に行く。パンツもパンストもびしょ濡れのまま。


着替えの部屋で下半身の濡れたところをトイレットペーパーで拭いた後、予め持ってきた替えのパンツと店に常備されている替えのパンストに履き替えた。

着替えが済んだボクは、「今回はスカートが無事でよかった…」ということをボクは考えながら濡れたところを拭いたトイレットペーパーをトイレに流して手を洗い、店に戻る。


未青(みお)ちゃん、大丈夫?」

店に戻ったボクを、マリーユさんが慰めてくれた。

未青(みお)が無言で頷く)


それからはルキちゃん・マリーユさん・ボクの3人で仕事を続ける。すると…


(ドアが開く音)

3人「いらっしゃいませー。」


一人のお客さんが店にやってきた。そのお客さんはボクと年が近い感じの女の子なのだが、その子は釣りで使うような大きなクーラーボックスを乗せた台車を引いていた。


ボクはびっくりしたことは言うまでもない。マリーユさんに通信魔法(テレパシー)

「あのお客さん大きなクーラーボックス持ってるけど…」

と、言葉を探すのに必死で話した。


「大丈夫よ。この間から来ているお客さんだから。あの中にお姉さんが入っているのよ。」

と返したマリーユさん。「クーラーボックスの中にお姉さんが入っている」というパワーワードとも言えるような言葉にボクはさらにビックリしてしまった。


店の奥の方のソファー席の向かい側の椅子に座ったそのお客さんは、

「着いたよお姉ちゃん。」

と言いながら、椅子の後ろに停めてある台車のクーラーボックスを開けた。


すると…

「ありがとうエレナ。」

と言いながら、クーラーボックスの中から女の人が出てきて、ソファーの席に座った。その人はなんと人魚だった。

「ええっ!?」

と改めてびっくりするボク。


お客さんが来たということで、ボクは2人の席に水を運びに行く。水の入ったグラスを席に置くとともに

「いらっしゃいませ。」

と一言声をかけた。2人は何かおしゃべりをしながらメニューを見ていた。


「ありがとうございます。」

と言うのは人間の体をした妹さん。もう一人、人魚の体をしたお姉さんはというと、

「ありがとう。あなたは初めて会う店員さんね。」

とボクに言ってきた。


「はじめ…まして…」

ボクはちょっと恥ずかしそうに挨拶を返した。

「もうお姉ちゃん店員さん恥ずかしがってるでしょ〜(汗)」

と突っ込む妹さん。そんなボクの頭には

(せっかくだからおしゃべりしてていいよ。今私たちだけだから)

というマリーユさんからの通信魔法(テレパシー)が聞こえてくる。そんな中で妹さんは続けて、

「私『エレナ・メイレン』です。姉がすいません(苦笑)」

とボクに自己紹介してきた。するとお姉さんの方も

「私は『カウレ・メイレン』。エレナのお姉さんよ。よろしくね。」

と言った。


これは明らかにボクも名前を言わなきゃいけない雰囲気だ。気がつくとマリーユさんが側に来てくれていて、若干緊張が和らいでいたけど。


「ボ… ボク… 『赤砂未青(みお)』…です…」

「よろしくね。『ボク』ってことは、あなた『ボクッ娘』?かわいい。」

と返してきたのはカウレさんだった。

「あの… 実は…」

それに対しマリーユさんが苦笑いしながら口を開いた。

「こちらからは言いづらいことかもしれないけど… 未青(みお)ちゃん… 実は…」


2人は続きが気になる表情をしている。なんとも言えない空気が流れるカレンデュラ。

「男の子なんです…」

と、マリーユさんは続けた。


「そうなんですか!?」

と言ってきたのはカウレさん。そのカウレさんは、

「本当にとっても可愛いです!お店の制服も似合ってます!」

と半ば興奮気味に続けた。本当に嬉しそうな表情だ。

「本当に最初女の子って思ってました!お姉ちゃんもそうだよね?」

「うん!」

エレナさんも同じことを思っていたようだ。


「ありがとう…ございます…」

とボクは2人に言った。照れてしまっている。

「よかったわね未青(みお)ちゃん。」

とマリーユさんも声をかけてくれた。


恥ずかしいけど、ボクはやっぱり嬉しかった。


2人から注文を取って一旦カウンターに戻るボクとマリーユさん。

カウレさんはというと、その様子をずっと見ていた。

「お姉ちゃん店員さんガン見しちゃダメ(苦笑)」

「だって〜…」


未青(みお)ちゃん、2つ運びに行ける?」

「はい!」

ボクは2人の元に注文したものを運びに行った。

「お待たせしました。アイスカフェオレと、それにミルクコーヒー・アイスとパイナップルケーキです。」


エレナ「ありがとうございます。いただきます。」

カウレ「ありがとう〜!」

エレナ「もうお姉ちゃんったら(汗)」

未青(みお)「ごゆっくりどうぞ。」


可愛い女の子が好きなカウレさん。そのカウレさんはボクのことも気に入っていたようだ。嬉しいけど、やっぱりちょっぴり恥ずかしい。


ボクがカウンター席に戻って何分かが過ぎた頃だろうか。

カウレ「未青(みお)ちゃーん!」

カウレさんがボクを呼んだ。どうやらカウレさんはどうしてもボクとおしゃべりしたいという。


マリーユさんも

「せっかくの機会だし、いいよ。」

通信魔法(テレパシー)で言っていた。ボクは店のドアの近くに置いてあった予備用のイスを運び、2人が座っているところのテーブルの脇に置いてそこに腰掛けた。


舞嗣遠海岸沖合5kmほどのところにある海底都市で暮らしている2人。この辺にもよく遊びに来るんだとか。

「ってことは…」

いろいろおしゃべりをする中で、ボクは遠詠川(おんえいがわ)の河川敷で、クルルスさんと魔法の実践授業をした時のことを思い出した。

実はあの時、川のすぐ側に大きなクーラーボックスを乗せた台車が、まるでスーパーのカート置き場のようにいっぱい並んでいたのを見かけていたのだ。


「そこから出入りしているんです。」

下半身を人間と同じ仕様に変えることができるエレナさんと、それができないカウレさん。2人はカウレさんのような人魚が陸上で活動するための手押し台車とクーラーボックス貸し出しサービスを使って、この辺によく遊びに来ているんだという。


「でも、この辺では結構珍しいみたい。」

未青(みお)さんも初めてでしたよね。」

「はい…(苦笑)」


いろいろおしゃべりする中で、ボクは2人と打ち解けたような感じがした。


しかしその最中…

(あっ…)

ボクの体を、急に強烈な尿意が襲ってきた。

いつもより限界を感じるのがとても早く感じる。それもそのはず。ついさっきマリーユさんに一旦代わってもらわなければならないほどの我慢を重ねた挙句あと少し持ち堪えられずトイレの中でぶちまけてしまってからだ。サイフォンで沸かしているコーヒーの香りがさらに尿意を刺激する。

打ち解けたとはいえ客と店員の関係で、その上ボクは男の子。「漏れそうだからトイレに行きたい」なんて、恥ずかしくて言い出せるわけがなかった。


段々と強くなっていく尿意。脳裏に浮かぶ「おもらし」という単語をかき消すのに必死だった。


すると…

「すいません未青(みお)さん…」

「どうしました?」

「トイレはどこでしょうか…?」

トイレの場所を尋ねて来たエレナさん。パンツが滲み出たおしっこで濡れている感覚がはっきり分かるほどにそのトイレという言葉に、ボクの尿意と膀胱の痛みは急速に跳ね上がった。


「トイレですね…」

ボクは立ち上がって、エレナさんにトイレの場所を教えようとする。しかし、苛烈な痛みを帯びていてタイムリミットを待つだけになっていたボクの膀胱。立ち上がったはいいけど、もう手も足も動けなくなっていた。


「んっ… んんっ…」

未青(みお)さん?」

「んっ… あっ… ああっ…」

(ジョロ… ジョロロ… ジョロロロロロロ…)


カレンデュラの店舗スペースでお客さんが普通に出入りするところ、しかも2人の前。

ボクの膀胱はそこでタイムリミットを迎え、立ち尽くしたまま「おもらし」をしてしまった。


エレナ「未青(みお)さん!?大丈夫ですか?」

カウレ「大変…!」

ルキ「未青(みお)ちゃん…」


事態を知ってその場にルキちゃんも来ていた。2人がとてもびっくりしていたのは言うまでもないことだった。

エレナ「すいませーん!」

ルキ「マリーユさーん!」

エレナさんとルキちゃんがマリーユさんを呼んだ。


ボクはその場に来てくれたマリーユさんに

「(かなり酷い涙声で)ごめんなさい!ごめんなさい…!」

と言うことしかできなかった。


ついにお客さんの前でおもらしをしてしまったボク。そんなボクを、マリーユさんはつきっきり同然に慰めてくれた。

「本当に偉いよ。よしよし。」

2人はボクが慰められてから着替えを済ませるまでの間に帰ったという。

マリーユさんが慰めてくれたのもあって、ボクはその後の仕事は問題なくできた。


次の日。

「ねえねえ未青(みお)ちゃん。」

カレンデュラに来て制服に着替えたボクに、ルキちゃんが封筒を渡してきた。

「ルキちゃん?」

「これ未青(みお)ちゃんにだって。今朝届いたの。昨日来た人魚さんから。」

確かに宛名にはボクの名前が書いてあって、封筒の送り主として2人の名前があった。


ボクは手刀で紙などを切ることができる「切断魔法」で封筒を開け、中の便箋を取り出した。


内容を読むボク。便箋の枚数は3枚に及んでいた。

その内容は、ボクとおしゃべりできてとても嬉しかったこと、ボクに恥ずかしい思いをさせてしまってとても申し訳なくて、カウレさんは申し訳なさから食事も喉を通らず泣いてしまい夜も眠れなかったこと、そして何よりもできるならまたカレンデュラでボクに会いたいということだった。


ボクはその手紙の内容が嬉しくて、泣いてしまった。

「ありがとう… 2人とも…」


ボクは2人に返事を書く事にした。マリーユさんにそのことを相談した後、返事を書く。

マリーユ「未青(みお)ちゃんの今日の仕事は、お返事書いてからでいいよ。」

ボクも2人とおしゃべりできて楽しかったことや、おもらしをしてしまうのはいつものことだから今は大丈夫なこととかを便箋に記した。


書き終わったのは1時間半くらい後だった。

(細かく足踏みをしながら)「マリーユさん…」

未青(みお)ちゃん。お返事書けたの?」

「うん… うっ、あっ、ああっ…」

(ジョロロロロロ…)

「あらら(笑)書いてる間中我慢してたのね。」

未青(みお)が顔を赤くしながら無言で頷く)

「出すのはセレちゃんにお願いするから、未青(みお)ちゃんはその間に着替えよう。」

「はい…」


さらにその翌日…

「いらっしゃいませ…」

店に来た人は、大きなクーラーボックスを乗せた手押し台車を引いた女の子。

カウレ「未青(みお)ちゃーん!」

エレナ「未青(みお)さーん!」


ボクの心の中に、一気に「嬉しい」という感情が広がって行った。

「カウレちゃん!エレナちゃん!」


また、ボクに友達が増えたかもしれない。

-新しい設定付き登場人物-

カウレ・メイレン (Caule=Meilen)

人魚の少女。15歳。ヒレとウロコの色はターコイズブルー。下半身を人間と同じものに変えられる人魚特有の秘術(と言っても習得すれば誰でも使えるようになる)「人間術」を使えないため、ヘレナとともに陸上に行く時はクーラーボックスに入って移動している。魔法使いであるが癒師ではない。

性格:のほほんとしているがおしゃべり好きで明るく、また友達思いな性格。しかしながらおっちょこちょいで妹的な一面がある。

身長:約154cm

誕生日:8月12日

得意属性:水

趣味・特技:裏世界アニメ鑑賞・水球・アーティスティックスイミング

好きな食べ物:メロン・スイカ・パイナップル・海ぶどう

好きなもの:コスメ・可愛い女の子

苦手なもの:塩抜きされていないもずく・流れの強い海流・イワシの群れ・暗くて狭い場所全般

一人称:私

家族構成:父・母・妹


エレナ・メイレン(Elena=Meilen)

カウレの妹。12歳。ヒレとウロコの色は浅葱色。魔法使いであるが癒師ではない。

「人間術」を使えることもあって、カウレとは陸上で行動する時を中心にいつも一緒。

性格:しっかり者でどちらかと言うとヘレナの方が姉的。でも案外お姉ちゃん子な一面も。

身長:人魚時→約143cm 人間化時→約155cm

誕生日:8月11日

得意属性:水・光

趣味・特技:レンタルショップ巡り・歌・人間術・水泳

好きな食べ物:海藻サラダ・トマト・おはぎ

苦手なもの:ソナーの音・ワニの牙の化石(6年前にそれで手を切って大ケガをしたことがある)

一人称:私

トピックス:トイレなど手押し台車が入れないところにカウレを連れて行く時はお姫様抱っこのような感じでカウレを運ぶため、(重力操作の魔法も使っているとはいえ)腕力が強い。

トピックス2:あまりの姉妹仲の良さから、同人作家であるカウレの友人に危うくカウレ共々百合エロ同人の題材にされかけたことがある。カウレは乗り気だった模様。

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