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Case 27「センセイと、スポーツ体験と、ちょっぴり恥ずかしい服。」

魔法の勉強が実践に入ってから1ヶ月くらいが経ち、ボクも初歩段階の魔法は通り使えるようになった。通信魔法(テレパシー)もその一つで、


〜回想・2日前、家のトイレの便器の前〜

未青「あっ… ああっ… あっあっ… あっ…!!」

(ジョロロロロロロロロ…)


未青(トイレの中から通信魔法(テレパシー)で)「センセイ… クルルスさん… 間に合わなかった…」(荒い息遣い)

フレイン(リビングから通信魔法(テレパシー)で)「あらら(苦笑)」

クルルス(リビングから通信魔法(テレパシー)で)「大丈夫?」

未青(通信魔法(テレパシー)で)「うん…」

〜回想終わり〜

とこのように、使えるようになってからはトイレの便器の前でおもらしをしてしまった時は必ず使っている。


そんなある日のこと、

「魔法を使う上でやっぱり一番大事なのは、やっぱり体力ね。」

と言ったのはクルルスさんだ。


「うん… でも未青くん、運動経験ほとんどない訳だし…」

と言うセンセイ。それもそのはず。ボクは小学校の頃はただでさえ学校じゃなくて病院で過ごした時間が多かった中で、体育の授業を見学しなかったことは両手では数え切れるかどうかというところだったからだ。プールの授業も2回しか参加したことがない。


「なんか… 未青くんでも体力つけられるようなところってない?」

と、センセイはクルルスさんに聞いた。この世界に転生してからボクがトイレにダッシュする以外でしている運動といえば、家の裏方向にある小高い丘がある公園でウォーキングをしたり軽くランニングをするくらい。一般的な「運動」の定義に当てはまるかどうかは微妙なところだ。


「あの『Mover(ムーバー)』ならいいんじゃないかな?あそこトレーニングメニュー作成とかじゃないなら誰でも使っていいってのはフレインも聞いたことあるはずだけど。」

クルルスさんは『Mover(ムーバー)』というスポーツジムの名前を出してきた。一般的なスポーツジムでやるようなトレーニングプログラムのみならず、充実した器具と空間魔法による空間操作によって様々なスポーツを体験することもできる、この世界では有名なスポーツジムだ。確かにボクもテレビでもCMとかで見たことがある。


「ああ『Mover(ムーバー)』!確かにあそこならいいかも!未青くん。どうかな?」

「私もそこオススメするわ。」

センセイとクルルスさんはボクに聞いてくる。加えてクルルスさんはパンフレットを見せてきた。


テレビとかで聞いた通り、無料でさまざまなスポーツ体験ができるとも書いてある。体験できるスポーツは、前の世界にもあったものやこの世界で初めて見たものもある。


「やってみたいです!」

ボクはこう答えた。スポーツに触れるということを経験したことがないボク。魔法使いになるための体づくりをすることよりも、スポーツに触れられるということが嬉しいという気持ちの方が強かったからだ。


次の日。今日はカレンデュラは定休日。その午前9時ごろ。

「ここよ。」


舞嗣遠駅の南口から、シャンウェー家具とはまた別の方角に歩くことおよそ5分。初めて見るそこそこ大きめのビル。建物の壁にはデカデカと「Mover」と書かれた看板がある。


「これがMover…」

「そうよ。」


入口を入って、初めて来た人用の受付窓口に行く。


「スポーツ体験。2名様ですね。」

と受付で手続きを済ませ、スタッフのお兄さんに4階に案内された。そこにスポーツ体験の窓口があって、何をやりたいかによっては吹き抜けになっている5階に行くこともあるんだという。


(ちなみにエレベーターの中にあったフロアマップには、1・2階がフィットネスやダンスのスタジオ、3階がトレーニングスタジオ、6階にはスパやエステ、屋上にはゴルフの打ちっぱなしもあると書いてあった。)


「4階です。」

エレベーターのドアが開いた。広がる光景はスポーツジムというよりかは、さながら前の世界にいた頃にテレビで見た事があった屋内型アミューズメントパークのようだ。


受付のあたりまで行くと、


「はい。これ。」

センセイから何か小さなカバンを渡された。

「着替え。せっかくだから、スポーティーで動きやすい方がいいんじゃないかなって思って。」

とセンセイは言っていた。

「ありがとう。」


センセイとボクはそれぞれ更衣室へ行って着替える。

「えーと…」


ボクはカバンの中から着替えを取り出し、それに着替えた。薄地で藍色の半袖のシャツに、ちょっぴり短めの丈の半ズボン。材質は普段履いているスパッツともまた違うのが手にとって分かる。

「これがユニフォームというものなのかな…?」とボクは思った。脱いだ服はロッカーにしまう。

しかし着替えてみて…


「なにこれ…」


と思いながら、ボクはロッカーの鍵を腕時計のように手首に巻き、着替えを入れていた小さなバッグを持って更衣室を出た。


更衣室を出るとセンセイが待っていた。

「うふふ。どうしたの?」

センセイもユニフォームに着替えていた。ボクが今履いているのに似たようなユニフォームぽい服を着ている。Tシャツは薄いピンク、スパッツは紺色だ。


ボクはちょっぴり恥ずかしい。なぜかというと、ボクの履いている半ズボン…と思っていたものは完全にスパッツと変わらないからだ。おまけにいつものよりも若干キツい。


「ちょっぴり、恥ずかしい…」

「えへへ(苦笑)ごめんね。ちょっぴりキツかった?」

「うん…」

大事なところの位置が、若干ながらも上から見るだけで特定できるのが恥ずかしい。

センセイによると、これはセンセイのお下がりなんだとか。


「まあ、行こ。」

「うん。」


ボクはセンセイに促され、受付で利用手続きをした。その後、

「こちらからお選びください。」

と、受付のお姉さんから10ポケットくらいのクリアホルダーを渡された。ここで体験できるスポーツの一覧が書かれているという。


「未青くんが選んでいいよ。」

とセンセイは言った。

「ありがとうセンセイ。」

と返すと、ボクはクリアホルダーを開いた。


難易度順に並べられている、ここで体験できるスポーツ。


「!」

ボクは一つのスポーツに興味を惹かれた。


「マジカルハンドテニス」

というスポーツ。簡単に言うなら、ラケットではなく両手でボールをラリーさせる卓球といったところか。ボクもテレビのスポーツニュースで見た事もある。難易度はかなり低い。


「センセイ。これやりたい。」

とボクはセンセイにクリアホルダーを見せた。

「それ?うん。いいんじゃないかな?」

とセンセイは言って、受付のお姉さんに

「マジカルハンドテニスで。」

と伝えた。


「分かりました。ご案内します。」

とお姉さんが言うと、案内魔法の道筋が床に浮かび上がった。


道筋の上を歩くこと2分。

「到着しました。」

と、卓球台がいくつか並んでいるところに着いた。


「未青さんはマジカルハンドテニスは初めてなんですよね。」

と受付のお姉さんは言った。

「今から二人でやるから見ててね。」

とセンセイがそれに続けて言った。


2人は卓球台を挟んで向かい合うようにして立った。卓球の試合が始まるかのような雰囲気で、ボクはその様子をちょうど真ん中の位置で見ている。位置関係で言うなら完全に審判のそれだ。


「見ててね。行くよ。」

と言うと、センセイは左手に持っていたボールを宙に浮かせると右手で卓球台の上に落としてバウンドさせた後、お姉さんの方にバウンドさせた。その後お姉さんも右手でボールをセンセイに向けてレシーブを返す。それがしばらく続いた。


「ああっ!」

センセイはレシーブを返し損ねてボールは床に落ち、お姉さんに1点が終わった。

「こんな感じになります。」

とお姉さんは言った。


いよいよボクの番だ。お姉さんと交代する。


ボールを手に取るボク。感触はスーパーボールに近い。プラスチックではなくゴムでできた卓球ボールといったところだろう。


卓球は転生する前に3回くらいやったことがある。緊張が高まっていく中、ボクは左手に持っていたボールを宙に浮かせ、右手で台の上の自分のコートに飛ばした。


そしてそのボールはネットの上を越えてセンセイのコートに入り、センセイの手元のあたりまで弾んでいった。


「いいね未青くん!」

とセンセイは言いながら、右手でボールを返した。そのボールはネットを超えてまたボクのコートまで戻って来た。ボクはそのボールを右手でセンセイのコートに弾き返した。


ボクとセンセイは、それを5回くらい繰り返した。そして、

「ああっ!」

ボクはボールを外してしまった。ボールは床に落ちた。センセイに1点。


「こんな感じ?センセイ?」

「うん!とても上手くできてたよ。未青くん。」

「お上手ですね。」

「ありがとうございます。とっても楽しい!」

「でしょ?まだやるよね。」

「うん。」


こうしてボクとセンセイは、マジカルハンドテニスを続けた。続けていくうちに、サーブの返し方も大体掴めてきた。


「楽しい!」


こんなに運動で楽しい思いをしたのは、もしかしたら初めてかもしれない。ボクはそう感じていた。


「ではごゆっくり。」

と、お姉さんは受付に戻っていった。

水分補給を3回ほど挟んでゲームを続けているうち、ボクたちのゲームの様子を見ている人も目立っていった。そのほとんどは女の人だけど。


そうこうしているうちに、センセイとボクも9点に並んだ。11点先取のマジカルハンドテニス。次でマッチポイントだ。


水分補給を済ませて次のゲームへ。しかし…


(あっ…)

膀胱にやや強めの痛みを感じた。トイレに行きたくなった。いつもよりキツめのスパッツを履いているからなのか、尿意の強まり方がいつもより急だ。


「未青くん行くよー。」

「うん…」

ボクはゲームを続ける。簡単なことだ。人、それも女の人がそこそこ見ている前で、トイレに行きたいなんて恥ずかしくて言えないからだ。


ボクは変わらずセンセイとラリーを続ける。

「ああっ!」

ラリーを15回くらい続けたところでボクはボールを落としてしまった。センセイに10点目が入った。


でもそんなボクの膀胱はというと激しい痛みを帯びていた。

(ボク、トイレに行きたいのすっかり忘れていたんだ…)

膀胱括約筋が疼いている感覚がはっきりと伝わってくる中で感じていた。通信魔法(テレパシー)でセンセイに尿意を伝えようにも、みんなが見ている前でトイレに行くことなんて恥ずかしくてできなかった。パンツがやや湿っている感覚もする。これは明らかに汗ではなくチビってしまったおしっこだ。


次で決着だ。ボクがサービスをする番になったが、もうボクは動くことはできなかった。

今ボクに残された選択肢は、ボールを持って大きく開いて両足を震わせながらここで「おもらし」をすること。ただそれだけだった。


(で… 出ちゃう… 出ちゃう… 出ちゃう―!!)

「未青くん?」

(ジュウウッ… ジュウウッ… ジョロロロロロロロロ…)


センセイが異変を感じたのかボクに一言話しかけたのと同じタイミングでボクの膀胱はついに力尽き、大事なところからおしっこが一気に溢れ出した。


(ビチャビチャビチャビチャ…)

パンツとスパッツがどんどん濡れていく感覚がはっきり分かる。スパッツの股間のあたりと左右の太もも、その3箇所から床におしっこが降り注いでいくのが分かる。


(未青の荒い息遣い)


少なくとも1分は経っていないことは分かる。ボクのおもらしは終わった。


「未青くん。」

とセンセイがボクのところに駆け寄って来た。あたりはザワついているのが分かる。


「大変。」

「スタッフさん呼ばなきゃ。」


「大丈夫?」

(未青が無言で頷く)

「早く着替えに行こう。」

(未青が無言で頷く)


ボクたちは受付に行く事になったその場を離れた後、泣き出した。

「ううっ… ううっ…―」


受付に行く途中。

お姉さん「あっ。」

さっきのお姉さんとすれ違うのに気づいた。ボクたちのゲームの様子を見ていた、つまりボクのおもらしに居合わせた人のうちの誰かが、ボクたちよりも先に受付に知らせていたのをボクは察した。


「すいません… ちょっとこの子がさっきおもらししちゃって…」

とセンセイは言う。ボクのスパッツは完全にびしょ濡れ。見れば分かる状態だ。


「はい。お客様は迷彩魔法は使えますか?」

「はい。」

「それでしたら、ここの隅の目立たないところをご利用ください。」

「分かりました。ありがとうございます。」


お姉さんにそう言われたボクたちは、隅っこの目立たないところまで移動するとセンセイに迷彩魔法をかけられ、転送魔法で渡された替えのパンツと半ズボンに履き替えた。


さっきのスパッツよりも余裕がある。

「ありがとう。センセイ…」

「どういたしまして。私のお下がりなんだ。」

「センセイ。続きやりたい。」

「うふふ。いいわよ。」


あと1点で決着だ。おもらしをしてしまおうがこのままでは帰れない。


ボクたちは受付に行く。さっきのお姉さんがいた。


「お姉さん。」

ボクはお姉さんに一言話しかけた。

「はい。」

「続き、やりたいです。」

「分かりました。掃除も終わりましたので大丈夫です。」


続きができると言われたボクは、とても嬉しかった。


さっきの場所に戻ったボクたち。


「いくよー。」

と言い、サービスをした。


またしばらくラリーが続いた。


そして…


「ああっ!」


勝ったのはセンセイだった。


ボク 10 - 11 センセイ


負けてしまったけど、初めて本格的にスポーツを、しかもこの世界にあるスポーツを全力で楽しめたのが、ボクは本当に楽しくて嬉しかった。


「楽しかった?未青くん。」

「うん!」


その後は更衣室で着替え、家に帰る。帰る時ボクはお姉さんに

「本当に楽しかったです。」

と一言伝えた。


「ありがとうございました。またお越しください。」

「はい!」

と返すボク。お姉さんはとても嬉しそうな顔をしていた。

ふとセンセイの顔の方を見ると、センセイもとても嬉しそうな顔をしていた。


家に帰って手洗いうがいを済ませ、水色の部屋着のTシャツとショートパンツに着替えるボク。


「おかえりなさい。楽しかった?」

とシャピアさんに聞かれたボク。

「うん!」

と、ボクは満面の笑みで返した。


ご飯の間もその話題で持ちきりだ。シャピアさんの魔法専門学校で同じクラスだった人には、なんとマジカルハンドテニスがとても強く、全国大会で3回も優勝した人がいたと言う。


ご飯の後の歯みがきを済ませ、いつもの部屋でのんびりするボク。


(今度行く時は、どんなのをやってみようかな…)

簡単なものとはいえ本格的にスポーツで体を動かしたのは初めてだったからだろうか。そんなことを思いながら僕は寝落ちしてしまった。


そして寝落ちしている最中、ボクはおねしょをしてしまった。


「センセイ…」

おねしょでびしょ濡れになったショートパンツの股間のあたりを隠しながら恥ずかしそうにおねしょを報告するボク。


「あらあら(笑)着替え持ってくるから早くシャワー浴びよ。」

と言うセンセイ。そのセンセイは

「未青くんあんなに楽しそうだし頑張ってたから、疲れちゃったのかな?」

と言っているような感じがした。


ボクはそれに

「そうみたい(照)」

と返した。

-用語解説-

Mover(ムーバー)

アスムール民主国内で展開されているスポーツジム。トレーニングや水泳等一般的なスポーツジムでやることのみならず、屋内型アミューズメントパークを模したスペースで様々なスポーツ体験ができることで人気を集めている。スポーツ体験用スペースはない中・小規模のところもありそれも含めればアスムール民主国内店舗設置数は第1位。スポーツジムの国内シェアは2位。ここ最近は国外展開も噂されている。

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