Case 18「センセイがいない、雷雨の日。」
「センセイ… 出ちゃった…」
5月のある日。今日は朝から激しい雷雨。
実は雷が苦手なボク。そんなボクは雷が怖いあまり、たった今おもらしをしてしまった。
「あらら。未青くん、雷本当に怖いのね。」
「うん… ごめんなさい… もうすぐ出かけるってタイミングで…」
しかも今日この後すぐにセンセイは癒師の仕事に出かける。
「大丈夫。電車もちょっと遅れてるみたいだし。」
ボクが着替えを済ませた後、センセイは仕事に出かけて行った。
「今日はリビングでお母さんと一緒にいた方がいいよ。」
という言葉を残して。
(こんな激しい雷雨がしばらく続く中で、ボクは大丈夫なのかな…)
と思っていた。
ボクはセンセイに言われた通り、今日は一日リビングで過ごすことにした。
(じゃあ…)
ボクはリビングのテーブルで本を読むことにした。
しばらく本を読んでいると…
(あっ… トイレ…)
気温が低いからかトイレも近くなる。尿意を感じたボクは本を読むのをいったんやめてトイレに立った。
すると…
(ピカッ!)
稲光が光る。ボクはとっさに耳を塞いだ。
(やばい!やばい…!)
そして…
(雷が鳴り響く音)
雷が大きな音を立てて鳴り響く。
(ジュウウッ…)
雷の音に震える中で、ボクのパンツが少し濡れるような感覚がした。
(まさか…!)
雷が鳴り終わった後、ボクは早歩きでトイレに急ぎ、ズボンを降ろす。
(やっぱり…)
パンツを見てみると、ボクの大事なところがあるあたりに少し大きめのシミがあった。グレーなのもあって目立つ。
予想通り、ボクは雷の音に驚いておしっこをチビってしまった。
「…」
ズボンは幸い無事だったが、さっきおもらしをしてしまったのもあってボクは少しヘコんでしまう。
おしっこを済ませた後、ボクはトイレを出てシャピアさんに、
「シャピアさん…」
「未青くん、どうしたの?」
「おしっこ… 少し出ちゃった…」
おしっこをチビってしまったことを報告した。
「さっきの雷のせいかな? とりあえず早くパンツ替えようね。雷が怖いなら、私も一緒に行くわ。」
「ありがとう… シャピアさん…」
ボクはシャピアさんに付き添われながらいつもの部屋で替えのパンツを持ってきた後、洗面所でパンツを履き替えた。
パンツを履き替えた後は、本の続きだ。
またしばらく本を読んでいると…
(そういえば「雷雨はしばらく続く」って話だけど、一体いつぐらいまで続くんだろう…)
ふと今日の天気が気になった。
ボクはテレビをつけ、データ放送で天気予報を見る。
「えぇ…」
その天気予報はボクをさらに不安にさせた。
続いている雷雨は、なんと夜まで続くという。
「ねえシャピアさん…」
「なあに? 未青くん?」
「センセイ… 今日はいつくらいに帰ってくるの…?」
「フレイン?今日はー…」
そう言ってシャピアさんはスマホを取り出して操作する。スケジュールでもチェックしているのであろう。
その推測は正しかったようだ。
「3時くらいには帰ってくるみたいだけど、この雷雨で電車のダイヤとかも乱れてるから、遅くなる可能性もあるかもね…」
「そう…なんだ… ありがとう。」
「どういたしまして。もしかして不安になっちゃった?それともフレインのことが心配?」
シャピアさんは、ボクを心配しているような素振りを見せた。
「うん… ごめんなさい…心配かけちゃって…」
「いいのよいいのよ。」
シャピアさんは、テレビを綺麗な風景と音楽専門の衛星放送チャンネルに変えた。その後しばらくして、ボクたちは昼ご飯を食べた。
食べ終わって歯みがきをした後、ボクはレプリンにご飯を食べさせるため野菜スティックを片手に一人部屋へと戻る。
「キュン。」
「レプリン、お昼だよー。」
「キュン!キューン!」
ボクはレプリンにご飯を食べさせる。
「ねえレプリン、雷怖い?」
「キュン?キュン!」
レプリンは雷は大丈夫そうだ。
「そうなんだ。レプリン偉いねー。」
「キュン!」
レプリンにご飯を食べさせている中で、雨足はどんどんと強くなっていった。
しかも運が悪いことに、それと同時にボクはトイレに行きたくなってしまった。ぼくはその場を立ってトイレに行こうとしたのだが…
「ねえレプリン… ちょっとト…」
とまで言いかけたところで
(激しい稲光)
「うっ…」
激しい稲光は一瞬光った。非常に嫌な予感がする。
ボクの中に不安な気持ちが走ってから、5秒もしないことだった。
(激しい雷の音)
「うわああああああああああ!!」
今日一日でトップクラスに大きな雷の音が鳴り響いた。
ボクはその音に驚いて、その場に崩れ落ちてしまった。例えていうなら、特撮ヒーロー番組で怪人が暴れているところに居合わせた町の人たちのような。
「ううう…」
ボクは恐怖のあまりその場で震えていた。その後も雷の音はしばらく何発も続く。
その中で、部屋の電気が急に消えた。停電だ。
部屋の暗さと気温の低さと雷の怖さ、その3つがボクの尿意をどんどんと強めていく。しかもその3つに起因する怖さのあまり、ボクは完全にその場から立てなくなってしまっていた。
ボクはただ暗い自分の部屋に床に座り込んでズボンの上から両手で大事なところを押さえながら、今にも溢れだしそうなおしっこを我慢することしかできなかった。
(荒い息遣い)
激しい痛みを帯びる膀胱。両手で押さえているところには、ズボンにもおしっこが滲み出てきていているのが分かっていた。
「あっ… あああ… あああああああ―!」
我慢を強いられる中で、膀胱の括約筋あたりの痛みが急に激しさを増す。
「だめ… だめ… だめっ…!」
これが何を意味しているかはもう分かっている。ボクは必死に緩み始める膀胱括約筋に力を入れようとしたが、思うように入らない。
そして…
「―――!!」
(ジュッ… ジュジュッ… ジュウウウウウウウウウ―!)
パンツの中と押さえている両手がどんどん濡れていく感じがする。抗おうとしても、膀胱括約筋に力は入らない。
薄暗い部屋で一人雷の音に震えるボクはとうとう、おもらしをしてしまった。
雷が怖い、雨の音が怖い、おもらしをしてしまった。
「うっ… うううっ…」
おもらしが終わったことで大事なところを押さえていた手の力を緩めながら、水溜りの上に座り続け一人泣き出すボク。そんなボクの脳裏には「怖い」「暗い」「助けて」という言葉が浮かんでいた。
「キュン、キュン、…」
レプリンが心配そうに鳴いているのが聞こえてきた。
「レプリン…」
電気が復旧したのはそれからしばらくのことだった。雷はある程度収まり、電気が復旧したのと同時に雨足も若干弱くなっていく。
ボクは無我夢中で逃げるように一人リビングへと走っていく。パンツもズボンもぐしょぐしょのまま。
シャピアさんに会えたのは、その途中の廊下でだった。
「あ…」
「未青くん… おもらししちゃってるけど、もしかして雷が怖かったの…?」
「うん… うわぁぁぁぁぁー!」
ボクはシャピアさんに抱き着いて泣き出した。
「怖かったよね… 寂しかったよね… 私も電気が復旧したら、未青くんの様子見に行こうと思って今ちょうど向かってたところなんだ…」
「(涙声で)ありがとう… シャピアさん…」
「うふふ。どういたしまして。」
ボクはその後、シャピアさんに付き添われながらシャワーを浴びに行った。
着替えの服はというと、太ももの1/5が露出くらいの丈のネイビーブルーのギャザースカートに黒いタイツだった。タイツを用意したのは「脚が冷えちゃうから」ということだという。
着替えを終えて、一人またリビングで別の本を読むボク。
時刻は3時半くらいになった。そこへ…
(足音)
「!」
玄関の外から足音が聞こえてきた。
(玄関の開く音)
「ただいまー。」
センセイが帰って来た。
ボクはセンセイの元に駆け寄っていった。
「センセイ… センセイ…!」
「未青くん。」
「未青くん、昼過ぎにレプリンにご飯あげてたら家が停電しちゃって、そのまま怖くて動けなくなっちゃってそのままお部屋でおもらししちゃったの…」
「うん…」
「その時間にめちゃくちゃ大きい音立てて雷の音鳴ってたから…」
「そうなんだ。未青くん、怖かったね… もう大丈夫だよ…」
「うん… うん…!」
センセイに抱きしめられるボク。
(ジョロロロロロロ…)
タイツに暖かいものが伝っていく感じがする。とにかくもう安心して膀胱が緩んでしまい、センセイに抱きしめられながらボクはおもらしをしてしまった。
センセイが洗面所で手洗いうがいを済ませるのに並行して、ボクはまたシャワールームで一人シャワーを浴びた。シャワーを浴びた後は、替えのパンツとタイツに履き替え部屋に戻る。
部屋に戻ったボク。ボクはまた一人で本を読む。
しかししばらくして、センセイが帰って来たのに安心したからか、ボクは眠くなってきてしまい、そのまま小さな丸いテーブルに突っ伏してそのまま眠ってしまった。
「未青くん、今日ずっと一人で頑張ってたからね…」
(フレインが未青に毛布を掛ける)
ボクの目が覚めたのは夕方の5時半近く。
体には毛布がかかっていた。センセイがかけてくれたのだろう。
(ぐしょ…)
と同時にお尻と太ももの後ろが濡れている感覚がする。昼寝をしている最中、ボクはおねしょをしてしまっていた。
「センセイ… おねしょしちゃった…」
「あらあら(笑)またシャワー浴びて着替えよう。」