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Case 15「家庭教師がやってきた」

「そうだ。ねえ()()くん。」

ある日のこと、センセイがボクに話しかけてきた。

()()くんこの間、『魔法についてもっと勉強したい』って言ってたよね?」

「うん。」


この世界には治癒魔法をはじめとした様々な魔法があるが、実はボクのような転生してきた人でも勉強すれば簡単に使えるようになる。実際に高い技術力を持った癒師が、実は転生者だったというパターンもある。

センセイの癒師の仕事を見ていく中で、ボクはいつしか「ボクも魔法についてもっと勉強して、センセイみたいに魔法を使えるようになりたい。」と思うようになっていた。


「そのことなんだけど…」

「なぁに?」

センセイはこう続けた。

「実は私の癒師仲間の人が、()()くんに魔法を教えてあげるって言ってたの。魔法専門学校の時からの友達なんだ。」

「本当!?」


それはとても嬉しい知らせだった。なんとボクに、魔法の先生が着くことになったのだ。その人はセンセイの癒師仲間にして魔法専門学校の頃からの友達。一緒に仕事をしたことも何度かあったという。魔法の技術力はなんとセンセイよりも高いという。

「楽しみー!それっていつから?」

「あさってよ。」

センセイの友達から直々に魔法を教えてもらえることに、ボクは本当に嬉しかった。


その前日の夜。ボクはよく眠れなかった。


そしてその日の、午前10時ごろ。

リビングのテーブルにノートと筆記用具を置いて、魔法の先生が来るのをワクワクしながら待っていた。

()()くんったらすごいやる気ね。」

「でしょ?」

と、シャピアさんとセンセイが言っていたほどだ。


そして…

(家のドアのチャイムが鳴る音)

「はーい!」

「魔法の先生が来た!」と思ったボクは、センセイよりも先に玄関に走った。

(ドアを開ける音)

その人は脇腹くらいの長さのロングヘアでキウイフルーツの皮のような色の茶髪で、服は白いシャツを着てその上には膝少し上くらいの丈の明るめのエメラルドグリーンのジャンパースカートを履いている女の人だった。


「クルルス。」

「お邪魔しまーす。あなたが()()くん?」

「はい!」

()()くん、なんか見た感じ女の子みたいね。」

「えへへ…(汗)」

ちょっぴり恥ずかしさもあるが、ボクは魔法の先生に会えたのが本当に嬉しかった。


クルルスさんが洗面所で手洗いうがいをした後、センセイと二人でリビングの席に着いた。

「私は『クルルス・クロッサント』。よろしくね。」

「はーい。(満面の笑み) ボクは赤(さご)()()です。」

「よろしくね。()()くん。『先生』でいいよ。」

「あ、でもクルルス…それが…」

「どうしたの?フレイン?」

「実は()()くん、私のこと『センセイ』って呼んでて…」

「そうなんだ。じゃあしばらくは『クルルスさん』でいいよ。()()くんの方で呼び方決めて。タメでもいいよ。」

「はーい。」


ついに魔法の授業が始まる。ボクのワクワクは非常に高まっていく。

「じゃあ、早速授業を始めます。えい!」

クルルスさんはそう言って指を鳴らした。その瞬間、涼しい風が吹いたような感じがした。

「クルルスさん。何をしたの?」

「特殊な空間を展開して、()()くんには周りの物音が聞こえないようになったの。」

たしかについさっきまで聞こえていた家の中の物音や外の音が全く聞こえなくなった。

「凄い!これ、なんて魔法ですか?」

「これは『空間魔法』。」


こうして、ボクとクルルスさんの一対一の、魔法の授業が始まった。


クルルスさんは「鏡面魔法」を使って、氷でできたタブレット端末のようなものを出した。これを黒板として使うという。

まず魔法には属性というものがある。水・花・土・木・葉・光・風・火・音・雷の以上10種類。とまあ、まるでボクが前いた世界にあったスマホゲームのようだ。


「木の属性と葉っぱの属性は、何がどう違うの?」

「それ?ああ。木属性は植物にまつわる物全部が対象なのに対して、葉属性は葉っぱ…つまり植物の末端に関するものだけが対象。薬草の効果を使う魔法が多いわね。あとは『操作魔法』だったら、木の枝葉や草とかは操れるけど蔦とかは操れない。そんな感じ。」

「そうなんだ。(興味津々な様子)」


魔法の種類もそれぞれだ。さっきの空間魔法や鏡面魔法がもちろんのこと、癒師の仕事では必ず使われる「治癒魔法」が根幹だ。ボクが転生者登録手続きの席上でおもらしをしてしまった時、家に帰った後センセイがかけてくれたようなやつのように、治癒魔法では精神を癒すことも可能なのである。


「魔法の種類と言っても、カテゴリーは大きく3つに分かれるの。」

「カテゴリー?」

「うん。『その属性でしか使えない魔法』・『属性が反映される魔法』・『属性関係なく使える魔法』の3つよ。」

そう言うとクルルスさんは「黒板」に、大きな3つの丸を書き、それぞれの中に「その属性でしか使えない魔法」・「属性が反映される魔法」・「属性関係なく使える魔法」と書いた。


「そうなんだ。『その属性でしか使えない魔法』っていうのにはどんなのがあるの?」

「そうね。水属性なら主なもので『水流魔法』・『激流魔法』があるわ。」


話はいろいろ続く。

その中でボクは一つびっくりしたことがある。

それは「属性が反映される魔法」に、あの「案内魔法」が含まれることだ。

「そういえば… センセイと初めてショッピングに行った時…」

ボクはセンセイとシャピアさんとの3人で服を買いに行った時のことを話した。


ショッピングモールの建物の中には「案内魔法」を用いて魔法で道案内のルートを浮かび上がらせている人がいたのだが、その案内の線の形は地面を這う水のようなものや火のついた導火線のようなもの、植物の蔦のようなものなど本当に様々だったのだ。

「そういうこと!」


「そうだ。魔法を使う上で、一番大事なことってなに?」

どうすれば魔法を使えるようになるのか、そこを聞かなきゃ話にならない。

「そうね。『自分が魔法をかける対象に強く心を働きかける』ということが大事ね。案内魔法やテレパシーとかが簡単に使えるのはそういうことよ。」

「その『自分が魔法をかける対象に強く心を働きかける』という上では…」

「やっぱり精神の集中かな。私も魔法を習っていた頃は『魔法を使わなきゃ』とか他の事に気が逸れちゃって、それであまり上手くいかなかったんだ…(苦笑)」


そうこうしているうちに、授業が始まって30分くらいが過ぎたところで…

(あっ…)

下半身がムズムズする感じがする。トイレに行きたくなった。


ボクは口を開こうとする。

しかし、口を開くことは出来ない。ボクの心の中に、「恥ずかしい」「トイレに行ったらクルルスさんに申し訳ない」という気持ちがあったからだ。

ボクは「トイレに行きたい」という気持ちを必死に押し殺して、クルルスさんの話を聞き続けた。


それでも高まっていく尿意。それと比例して「トイレに行きたい」という気持ちも抑えきれなくなっていく。でも、それを言い出すタイミングもつかめない。

次第に…

(ジュ… ジュジュッ…)

膀胱の痛みが最高潮になっていく中で、パンツにどんどんと滲み出ていく。

「これじゃまるで中学校の入学式の時と同じじゃん…」と、中学校の入学式の席上で尿意を催して、結局式の席上でおもらしをしてしまった時のことがフラッシュバックする。それもあってか、尿意と膀胱の痛みは限界を知らないくらいにどんどん高まっていく。

パンツが少しずつ濡れていく感覚が強くなっていく中、「助けて…」「トイレに行きたい…」「もう漏れちゃう…」と、ボクの心は必死に助けを求めていた。

でも、最後まで結局それを口に出すことはできなかった。


そしてついに…

(出ちゃう… 出ちゃう… 出ちゃう…!)

(ジュウウ… ジョロロ… ジョロロロロロロロロロ…)

膀胱の括約筋が最後の抵抗を試みるような激しい痛みが走った後、ブレーカーが落ちるように膀胱括約筋の力が一気に抜け、それを合図に下半身がどんどん濡れていく。

(ビタタタタタタタ…)

リビング中に、椅子から床に零れ落ちるおしっこの音が響き渡る。


初めての魔法の授業の席で、ボクはおもらしをしてしまった。


()()くん…」

「うぅっ…」

パンツもズボンもすっかりびしょ濡れで床に大きな水たまりが広がる中、ボクは席上でただ黙って目に涙を浮かべながら前を見据えることしかできなかった。


透視魔法で床を見たのだろうか。クルルスさんは改めて全てを把握した様子で、ボクにこう話しかけた。

「フレイン…呼んでくるね。」

(無言で頷く)


それからしばらくして、センセイが来た。

()()くん。」

センセイはそう言って、ボクのところに歩み寄って来た。

「ごめんなさい… おもらししちゃった…」

「大丈夫…?授業できるのが嬉しいのとトイレ行きたいっていうのが恥ずかしくて、ずっと我慢しちゃってたの?」

(無言で頷く)

「うぅぅ… うぅぅ… うぅぅぁぁぁー!」

ボクは泣き出した。そのボクの肩をセンセイが優しく撫でる。


ボクはシャワーを浴びに、一人泣きながらシャワールームへ向かった。

シャワーを浴びて着替えた後、リビングではセンセイが待っていた。


「ねえ()()くん。」

「センセイ…?」

「これ、着てみる?」

センセイが見せたもの。それは…

「かわいい…」

藍色のリボンがついた白い半袖のシャツに、明るいエメラルドグリーンをしたギャザーのミニスカート。靴下は黒くてぱっと見ふくらはぎくらいの丈の長さ。制服っぽい…というより完全に制服のそれだ。


「着るー!」

ボクはセンセイから服を受け取ると、早速さっきのシャワールームの脱衣場でその服に着替えた。


着替え終わってリビングに戻ると、クルルスさんがいた。

「お待たせー。」

「まってこれ…()()くん!?」

クルルスさんは非常に驚いている様子だ。

「そうよ。」

「かわいい!!初見だったら絶対女子と勘違いしちゃうやつ…!」

ボクはなんだか嬉しかった。


制服に着替えたボクと、センセイも一緒に授業の後半戦。

今日はなんだか、本当に楽しいひと時を過ごせた気がする。

-新しい設定付き登場人物-

クルルス・クロッサント(Kululus=Crossant)

未青の家庭教師を受け持つことになった女性。普段は癒師の仕事をしている。21歳。癒師歴は10年強。

フレインとは魔法専門学校時代からの友人。魔法の技術力もフレインと同じくらい。

性格:子ども(というより年下)が好きな、面倒見の良い優しい性格。

身長:約170cm

バスト:Bよりも小さめ

誕生日:10月26日

得意属性:水

趣味・特技:名水地巡り・ポーカー

好きな食べ物:いちごクレープ

苦手なもの:物理学・辛い食べ物全般(甘口のカレー程度なら大丈夫)・砂煙や土埃

一人称:私

トピックス:外国(※)に本社を置くインターネット会社主催のオンラインポーカーの世界大会で優勝したことがある。

トピックス2:弟はまだ17歳にして木・葉属性魔法の技術力においてアスムール民主国内でトップクラスの高さを誇っており、「アスムール植物魔法学会」という木・葉属性の魔法について研究する学会に所属している他、専門家としてメディアに出ることもある。


(※)サイバー・デジタル技術がオーバーテクノロジーレベルに発展している国らしい。

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