Case 10「ドキドキして、触れたくなって」
フレインが一人で癒師の仕事に出かけ、また珍しく夜になって帰って来た日のこと。
その帰って来たフレインの様子はどこか様子がおかしく…
「シャピアさん、センセイ今日は遅いの?」
「うん。」
センセイは今日も冒険に出かけた。しかし今日行く場所はちょっと遠いからかセンセイ一人だけでボクは留守番だ。
時刻は夜7時過ぎ。ボクはリビングでシャピアさんと2人で晩ごはんを食べていた。
その最中。
「ただいま〜!」
センセイが帰ってきた。だけどそのセンセイは、なんだかバタバタしていて慌てているような様子だった。
「フレイン。あんたの晩ごはんは…」
「お母さんごめん!ちょっと後にして!」
と、シャピアさんの言ったことも振り切るように。
センセイは大急ぎで靴を脱ぎ、リビングを小走りで走り抜けていった。顔はなんだかちょっぴり青ざめたような感じで、手はなんだか下半身、それも股間のあたりを気にしている様子だった。
それにその間に微かにこぼれた言葉を、ボクは聞き逃さなかった。
「出るっ…!」
その直後センセイは洗面所にも行かず…
「えっ?」
(トイレのドアが閉まる音)
トイレに駆け込んでいった。
それから5分くらい経ってセンセイはトイレから出てきて、洗面所へ行った。
「センセイおかえりー…」
「ただいまー。」
洗面所から戻ってきたセンセイは、ちょっと恥ずかしそうな感じだった。
「センセイが、トイレに駆け込む…」
センセイがトイレに駆け込んでいく瞬間を見てしまったボク。トイレに駆け込むなんて今にも漏れそうなほど我慢していない限りはあり得ないことだ。
「センセイもしかして、おもらししちゃいそうな状況だったのかな…?」と、ボクはなぜかドキドキしてしまっていた。そう思ってしまう自分に対する恥ずかしさも重なって。
センセイが晩ごはんを食べている間、ボクは部屋で一人テレビを見たり本を読んだりして過ごしていた。その間ボクはそのことを頭から離そうと必死だった。
しかしセンセイの姿を見たり声を聞く度にそのことを思い出してしまう。ドキドキは高まる一方だ。
ボクは心を落ち着かせようと晩ご飯の後に水を何度も飲んだ。そのせいもあって、センセイが部屋に戻ってきた後に急に強い尿意に襲われ…
「うぅっ…」
「未青くん?トイレ?」
(無言で頷く)
「急ごう。」
「うん…
(廊下で)
「あっ…ああっ…ああっ…」
(ジョロロッ… ジョロロロロロロロロロ… ボタボタボタボタ…)
センセイとトイレに急いだが間に合わず廊下でおもらしをしてしまった。大事なところをスカートの上から押さえていたから、「この間のお礼に」と昨日ファルンさんからもらったばっかりの制服みたいな濃い紫色のチェックのスカートを汚してしまった。
「未青くん、さっきから水分取り過ぎよ(苦笑)」
「ごめん…」
センセイがさっきトイレに駆け込むところを見てしまってからなぜか止まらないドキドキを落ち着かせたいからなんて、言えるわけがない。
それぞれお風呂に入った後、パジャマに着替えボクたちは寝る。ボクは急にドキドキしてしまっているのもあって、ちょっと疲れた。
眠りについてからしばらくして…
「ん~…?」
ボクは何かに触れるような感じで目が覚めた。そのすぐ目の前では、センセイがかわいらしい寝顔で微かな寝息を立てて眠っている。
センセイのおへその少し下。パジャマの布越しになんだか柔らかいボールに触れているような感じが伝わってくる。指の腹で押しては離しを、3回くらい繰り返した。
「この感触って… もしかして…」
部屋の薄暗い光をもとに位置を確認する。
その「もしかして」は的中した。間違いない。今ボクが触ったのは明らかにセンセイの膀胱だ。
「これが…センセイの膀胱…」
ボクの中でなぜか「もっとセンセイに触れたい」という感情が芽生えた。
ボクはその後も、パジャマの布越しにセンセイの膀胱を指の腹で何度か押したり優しく撫でたりした。
布団の中を見ているわけではないからよく分からない。手探りで下の方に手を動かす。
スベスベするような感覚で、押せば柔らかくも若干弾力のある感じ。
これはセンセイの太ももだ。センセイの今着ているパジャマが股下10cmあるかないかのショートパンツタイプなのが何よりの裏付けだ。
「これが… センセイの太もも…」
ボクはそのセンセイの太ももを、優しく何度か指で撫でた。
そんなボクの中では、危ない好奇心が芽生えていた。
「内側はどうなってるんだろう…」
ボクはセンセイの太ももの内側に手を動かした。
両脚の太ももが触れあっているところ。指の上下両方から、太ももの弾力と暖かさを感じる。
「なんだか、気持ちいい…」
とボクは思ってしまってもいた。
そうこうして、センセイの太ももを優しく撫でていると…
「ん…んんっ…」
センセイの目が覚めてしまったようだ。
ボクはびっくりした。「センセイに何て言おう」とばかり考えていた。
「未青…くん…?」
センセイは小さめの声で優しく囁くように言った。
「センセイ… これ…あの…」
「うふふ。もしかして未青くん、私が帰ってトイレにダッシュしていくところ見てドキドキしちゃってたんでしょ。」
(無言で頷く)
センセイは全てを分かってしまっていたようだ。ボクはそれに頷くことしかできない。
「やっぱり分かっちゃってたんだ。私がさっき、おしっこ漏れそうだったってこと。」
「センセイ…ごめん…」
「うふふ。大丈夫。」
センセイはこう続けた。
「もう本当にヤバかったんだ。ちょっぴりでも力抜けちゃってたら、未青くんやお母さんの前でおもらししちゃってたかも…」
ボクの脳裏に、ふと聞きたいことが浮かんだ。
「恥ずかしいこと…聞いていい…?」
「ん?なぁに…?」
「センセイが… 最後に(おもらし)しちゃったのっていつ?」
「去年の2月…。仕事の帰りに電車乗ってたらトイレ行きたくなっちゃって、その電車が特急で停車駅少ないのとトイレがないから乗り換えの白花の駅まで我慢するしかなくて私は座席に座ってずっと我慢してたんだけど、白花まであと2つの駅を通過しているところで出ちゃったんだ…。(照れ笑い)」
「センセイ…」
センセイがつい1年前におもらしをしてしまっていたということにボクはちょっとびっくりした。去年の2月なんてボクは前の世界での最期を迎えた病院に10何度目かの入院をしてから間もない頃だ。また白花なんてテレビでもよく取り上げられるほどこの辺りでは大きな街だし、そもそもこの間センセイと茜唀に行った時に通ったところだ。
「今も…白花通ったり名前聞くと思い出しちゃう? あそこって、結構テレビのグルメ番組でよく登場するところだし…」
「どうだろ?(苦笑)」
センセイはこう続けた。
「でも、トイレ行きたいなって時に白花の名前聞くと思い出しちゃうかな…(苦笑) かれこれ何年かぶりのおもらしだったから…」
ボクはセンセイの体どころか、とても恥ずかしい過去にも触れてしまった。センセイは当時19。電車の中で我慢しきれずおもらししてしまったことが相当恥ずかしかったのは聞くまでもない。
「やっぱりごめん… こんな恥ずかしいこと聞いちゃって…」
「うふふ。いいのいいの。(笑)」
「センセイ…!」
センセイはボクに密着するように近づいた。呼吸がはっきり聞こえるくらいだ。
「だって未青くん、何度も何度も私の前でおもらししちゃってるでしょ?」
「えへへ…(照) じゃあ、ボクがこの世界で最初におもらししちゃった時―」
ボクは気になった。ボクがこの世界で初めて尿意を催し、その後間に合わずおもらしをしてしまった時でも、センセイは手際よく慰めたり着替えを用意してくれたことを。もしボクだったら、自分と一緒にいる人が突然おもらしをしてしまったらどうすればいいか分からずあたふたしてしまうだろう。
「それもちょっぴりあるのかな。そもそも私ちっちゃい頃は(おもらしの)常習犯だったから(笑)」
「そうだったんだ(笑)ボクは今も常習犯だけどね(笑)」
「あはは(笑)未青くんったら(笑)」
ひょんなことから、ボクはセンセイの優しさにも触れることができた。そんな夜中だった。
そして朝。ボクはおねしょをしてしまった。
「センセイ…」
「あー未青くんおねしょー(笑)シャワー浴びに行こ。」
「うん…(照れながらも笑顔が浮かんでいる)」
夜中の話のこともあってか、ボクは今回のおねしょではさほど恥ずかしさを感じなかった。