おにぎり貴族~若き村長の成り上がり~
成り上がりモノを1000文字で書けるかな?と思い立って書いた物語です。
1000文字で成り上がりは難しいですね。
若き村長ギリムス。彼の村は今、危機に瀕していた。
村を挟んで西と東の領主の対立が激化し、ゴリゴリと削り合いながら、最後に残ったギリムスの村周辺の土地を我が物とする為に、村を挟んで布陣しているのだ。
西の総数二万に対し、東の総数七千。約三倍の兵力差である。そして、両陣営共に兵糧の問題を抱えていた。故に、どちらもギリムスの村の食料を狙っていたのだ。
昨日までは、ギリムスの父が村長であり、彼は西に味方し生き残ろうとしていた。だが、西は村の存在自体を認めておらず、使者に立った父は殺されてしまった。
ならばもう東につき、勝って貰うしかない。そこでギリムスは一計を案じた。
「聞いてくれ、私に考えがある」
ギリムスは村名産の米を荷車で東側に集め、西側には稗や粟をただ積み上げた。その上で東に使者を送り、戦いが始まると、西側に置いた食料を囮にし、村を捨てる事で米と全村人を東に逃がす事に成功した。
さて、両軍共に食料は手に入れた。しかし、ここで問題が上がる。
「「どうやって食べるんだ?」」
米、稗、粟。それらは彼らにとって未知の穀物だった。情報を得る術の無い西は、まとめて煮る事にした。出来たのはバシャバシャのお粥もどきだ。しかも人数が多い為に、下に行くほどに水分だけになり、兵は力を失っていった。
一方、東では村人達の協力の下、米が炊かれ『おにぎり』が作られていった。具となるのは漬物と甘辛く煮たキノコである。
東の兵は、おにぎりにより力を蓄えた。そしてもう一つ。
「この場所からこちらへと、地下道があります。ここを使えば敵の背後を討てるかと」
「ギリムス!良い情報だ!これで勝てる!」
ギリムスは更に進言する。敵には大した食料はなく、その内暴動が起きるだろうと。
そして数日後。確かに西では暴動が起き、村は怒りの矛先となり焼かれた。ギリムスを含む東は、それを待っていた。
「ゆくぞ!」
「「オウ!」」
ギリムスのおにぎりを食べた兵が、地下道を使って敵の背後を攻め、三倍もの差があった敵を尽く打ち倒した。
戦争は東の勝利に終わり、ギリムスは騎士爵を授爵して貴族となった。与えられたのは焼かれた村だが、褒美の金と物資で復興は成った。
小さな村の村長が成した武勇伝は国中に広まり、人々はギリムスを『おにぎり貴族』の愛称で親しんでいる。