とてもこわいおばけ
締め切り1時間前に手をつけて、出来るだけ童話チックにしてみました。
……童話っぽく見えるといいなぁ。
今日もしんしんと雪がふる。
ここは、おばけだらけの、おばけの国。
とってもこわいおばけになるため、毎日がんばるわかいおばけがいた。
けれど、そのおばけは、だれにもこわがられることのない、やさしい顔だった。
「くっそー! どうして、どうしてみんなこわがらないんだぁぁ!」
こーーーーーん!
「……痛いなぁ」
イライラしてけっとばした空き缶が、だれかの頭にあたったようだ。
「あ、ご、ごめんなさい……ひぃ!?」
さいあくだぁ! とてもこわくて、みんなにおそれられている、クマのようにとても大きいおじさんだった。 顔にはドクロの仮面をつけている。
ドクロのおじさんは、どすんどすんと足音を立ててちかづいてくる! に、にげなきゃ!
「うわぁぁぁぁ!!」
ボクは、森にむかってにげだした! だけど、ドクロのおじさんは追っかけてくる。
………
……
…
「はぁ、はぁ、ここまでくれば……」
おっきな大木に手をつき、息をととのえていたが、頭のうえから声がした。
「こらぁ、たべちゃうぞぉぉぉぉぉ!!」
「うぎゃぁぁぁぁぁ!!!」
大木だと思ったのは、ドクロのおじさんだった! ボクは気を失った……。
………
……
…
「ご、ごめんなさい……」
「よし、ゆるしてあげよう。 ところできみは、こわがられないのを気にしているのかい?」
「え? なんでそれを?」
「私とトモダチにならないか? きみをとってもこわいおばけにしてあげよう」
「ホント? ドクロのおじさんみたいに、こわくなれる?」
「ああ、なれるよ、とても……こわいおばけにね」
………
……
…
ボクは、ドクロのおじさんとトモダチになった。
毎日ドクロのおじさんと会って、いろいろと教えてもらった。 いっぱい遊んでもらった、毎日がたのしくて、いつしか悩みなんて気にしなくなっていた……。
そして、何度目かの冬になった頃。
「そういえばさー、いつになったら、”とってもこわいおばけ”にしてくれるの?」
ふと、むかしのことを思い出す。
こわくなる方法なんて、一度も教えてもらってない。 むしろドクロのおじさんの方がこわいので、子供に見られるとキャーキャー言われて逃げられている。
「そうか、もうころあいだね……」
ドクロのおじさんは、ゆっくりと立ち上がり、ボクを見おろす。
「きみは、こわがられるおばけに、今でもなりたいかい?」
さいしょはこわかったドクロのおじさんも、今ではこわくない。 だって、こわいのはドクロの仮面と、体がとっても大きいからだとわかったからだ。
「そ、そりゃぁ、ドクロのおじさんみたいに、みんなに、こわがられればカッコいいけどさ!」
「こわがられたって、いいことなんてないよ?」
「そんなことないよ! だって、キャーキャーいわれてカッコいいじゃん!」
「そうか……じゃぁ、おわかれだね」
ドクロのおじさんはボクに背をむけた。 おわかれ? やだよ、何で急に?
「ちょっとまってよ! そうだ、ボクを、とってもこわいおばけにするって……約束は?」
おじさんは、いちどだけ考えこむように、空を見あげた。
「ああ、私にとって、今のきみは、とてもこわいおばけだよ」
「え? どうゆうこと? ボクをからかっているの?」
「いや、ほんとうさ、こわいと言われて、すべてのこわいことをしったはずの私でも、
きみとわかれることは……にどとあえないことは、とてもこわいんだ」
「え?」
ドクロのおじさんは、ドクロの仮面を外して、ゆっくりとふり向いた……。
「ボクとおなじ顔……」
ドクロのおじさん……いや、おじさんは、ボクとおなじ優しい顔をしていた。
「こわがられすぎて、さいごはひとりぼっちになった。 とてもこわいおばけをこわがらせたんだ、きみは、今いちばんとてもこわいおばけになったんだ……」
「まって、そんなのどうでもいいよ! いかないでよ! おじさ……」
おじさんは、きえてしまった……ドクロの仮面をそのばにのこして……。
今わかった、おじさんがひとりだったのは、みんなにこわがられて、だれもちかよらなくなったからなんだと……。
そして、それを教えるために、ボクとトモダチになったのだと……。
「おじさん、ありがとう」
ボクは、ドクロの仮面を手にとり、顔につけた。
「ボクは、とってもこわいおばけに……なったんだよね? ねぇ? おじさん……」
夢がかなったはずなのに、なんでだろう? 仮面の下を、あついなみだがながれていった……。
………
……
…
今日もしんしんと雪がふる。
ここは、おばけだらけの、おばけの国。
かつて、とってもこわいおばけになるため、毎日がんばるわかいおばけがいた。
けれど、そのおばけは……。
【おしまい】
kobitoさんが企画する【ほっこり童話集】に投稿2作目……1時間で書き切ろうと思ったですが、日が変わってしまったので無効かもしれません(;^_^A
「奇跡がおきたよ……(マ●ル調)」ハロウィーンの奇跡で参加できました♪