episode.001 巻き込まれ転生
平穏というのは、本当に突然として終わりを告げる。
ただ、親友と仲間と楽しく“VRMMORPG”を楽しんでいただけだった筈の日々は、突如として“リアルゲーム”へと変わった。
“ゲーム”の中に閉じ込められてしまってから、其処での生活が当たり前のようになっていた。
「んー、良い天気っ!これなら、秘境探索しやすいねっ!“ーーー”っ!」
「んー、確かに」
薄めの茶色の髪色をした腰下ぐらいの長さを青いリボンで低い位置に束ねたポニーテールに、少しツリ目のパッチリ目をしたオレンジ色の瞳をしている少女は背伸びをしながらも、後ろに立っていた赤い髪色のウルフカットに、少し細目のややツリ目をした翡翠色の瞳をした少年を見つめる。
「“ククル”も、来てくれるんだろ?」
「まぁ、回復程度とアイテム製作しか役に立てないけど」
「それでも、“ククル”の回復魔法や錬金術は有り難いよ」
「そう言ってくれるのは、“ーーー”だけだよ?」
ー“秘境探索”。
それは、この世界に存在している“12の秘境”を探索して世界の謎を解くのが目的である。
世界の謎を解き、“暁の天秤球”に行けば“願いが叶う”とされている。
だからこそ、私達は“目指していた”。
だが、それは長くは続かなかった。
元々、“ーーー”には大きな問題が存在していたからだ。
元々、“ゲーム”で迷惑行為を“ーーー”にやってきた“ストーカー”が居たからだ。
“ストーカー”の手によって、“秘境探索”は難しくなっていた。
「本当に、“ーーー”……大丈夫?」
「大丈夫、いざとなったら道連れにするからさ」
「何、それ」
だけど、それは本当に突如だった。
あの“ストーカー野郎”が、秘境の最奥にて邪魔をしてきた。
「あぁ、本当に此処まで来ちゃうなんて……これは、運命としか思えないっ」
青黒い髪色に左アシメの少し長めのショートに、銀色の眼鏡を掛けていて少し細目にややツリ目をした海色のような瞳をしている青年が、私達の目の前に立ち塞がり恍惚とした表情で見ていた。
いつも、あんな表情をしながら私達はさの目の前にやってきては意味の分からない事を話していく。
だが、今回は違った。
「キミを道連れに、僕は転生するんだ」
「はぁ?何をワケわからん事を……」
その“ストーカー野郎”は、“ーナー”へと大きなハルバードのようなものを振りかざしてきていた。
突然の事に、“ーナー”は直ぐには動けなかった。
だから、私は無意識の中で“ーナー”を横から突き飛ばして“ストーカー野郎”のハルバードのようなもので切り付けられた。
それと同時に、大きな地震が起きては“ストーカー野郎”と共に底の見えない大きな亀裂へと落ちた。
『其処から、何も覚えていない』
『ただ、聞こえたのは一緒に同行してくれていた“パートナー”の悲痛な呼び声と叫びだけだった』
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目を覚ませば、何処かの屋敷の一室にあるベッドの上だった。
誰かの手によって、助けられたのだろうか?
そう思って起き上がれば、身体中の痛み等を感じないのと少し軽いような感覚だけが残っていた。
周りを探索しようと、起き上がり側にあった大きめな鏡を見つけて自分の姿を確認してみる。
大きめな鏡に映っているのは、薄めの茶色の髪色をした腰下ぐらいの長さを青いリボンで低い位置に束ねたポニーテールに、少しツリ目のパッチリ目をしたオレンジ色よりの朱色の瞳をしている少女だった。
「変わったのは、赤み帯びたオレンジ色の瞳ぐらい?いや、少し身長が縮んだっ……?というか、此処って何処なの?」
とりあえず側にあった自分の武器でもある大きな鍵型の長杖を掴み、部屋の外に出てみると少し荒らされたかのような廊下の汚さとクモの巣が張られている。
何処か、古くさい。
「外に、出てみよう……」
屋敷らしき場所から外へと出たみれば、周りは森林と草むらで囲まれていて人が住んでいるとは思えない光景だった。
そんな場所に、何故自分一人が寝ていたのだろうか?
というより、此処は“ゲームの中”なのだろうか?
そんな疑問を感じながらも、なんとなくメニューが開けるのかと思って手を振ってみると、何故かメニューが開けた。
「回復職は、わかるけど……“開拓職”っ??」
“ゲーム”では、こんな職は存在していない。
なら、錬金術士の上位とでも言うのだろうか?だが、そんな情報などはなかった。
「どういう事??」
軽く首を傾げていると、メニューにある“パートナーアイコン”がある事に気付いて、あの時聞こえた声を思い出しては思わず触れてしまう。
もしも、通じているのであれば呼び出しが利くと思ったからである。
“パートナーアイコン”に触れて、パートナーリストを確認すれば五人のメンバーリストが展開される。
その中でも、あの時まで一緒に居た人物でもある“ヴェニタス”の文字に触れてみると文字が明るく点滅する。
「これは、通じたのかな……?」
そう思ってメニューを閉じると同時に、背中に暖かい温もりと懐かしく優しい匂いがしてくる。
「会いたかったでっ、マスターぁ……!!」
声を聞いて首を少し動かして後ろを振り向けば、其処には白寄りの灰色に内側だけ黒色の髪色に少し長めなショートで右耳だけに逆さの十字架のピアスをしていて、少しタレ目のツリ目をしたパステルピンクの瞳をして、黒と赤の中華風の軽剣士の服装をした青年が泣きそうな表情をしていた。
「ヴェニタス」
「なんで、一人で勝手に動くんや?こっちの心配も、気にせんで勝手にっ」
「ご、ごめん……なんか、無意識に動いていたみたいでっ」
「皆、心配しておったんやで?マスターが、あのクソ野郎と落ちたから……」
ヴェニタスの話を聞いていると、どうやら自分が落ちてから幾分か日が経っているのと、“あのゲームの中”のままだというのが分かった。
ヴェニタスは、ククルから離れるとククルの前に立ち片方の膝を地面につかせて頭を下げている。
「我らがマスター……マスターのご帰還、心よりお待ちしていました」
「ヴェニタス……」
「これからも、我らはマスターの為の剣にも盾にも知識ともなりましょう」
ヴェニタスが宣誓した言葉は、初めてパートナーとして選ばれた時にも言っていた言葉だ。
少し、懐かしさも感じていたのは内緒である。
「これからも、えっと……宜しくね、ヴェニタス?」
「おう、よろしゅーな?マスター」
ヴェニタスは、ククルの返答に嬉しそうに笑いながらもククルに抱きついている。
突然の別れかと思えば、こうやって再び逢えるとは思えなかった。
「ヴェニタス、これからどうしたらいいと思う?」
「んー、マスター次第なんやけど……“この土地”を“開拓”してみんか?」
「“開拓”??」
「この“土地”は、所有者が居らんのや!だから、マスターが此処に住むなら“開拓”が必要だと思うで」
なんとなく大体の事が、分かって来たかもしれない。
もしかして、自分はプレイヤーのようでプレイヤーではない存在となって“空中大陸”の一である此処の開拓をしないといけないという事である。
「まぁ、そうするしかないなら……それしか、ないよね」
ヴェニタスの提案を呑んで、メニューを開いて何か別のアイコンがある事に気づいたのだが、それは“開拓者アイコン”があったのだ。
其処に触れてみると、“開拓ポイント”と“開拓リスト”が書かれていた。
「“開拓ポイント”?」
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