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異世界へは夢の中から  作者: TKSZ
6/8

6.魔力暴走

話がうまくまとまらない。

「ふーん、そのような事が?」

「はい」

「魔力が検知されて目を付けられたかな?」

「そんなことが?」

「可能性がある。と、いうか間違いないだろう。能力を使うと魔力が漏れやすい。制御できる必要があるね」


その後、サリエンスと魔力制御の訓練をした。少し大変だったがより魔力制御がスムーズになり魔力の漏れがなくなった。

その後転移でクルボストンに戻った。

神聖国に行く前にダンジョンの攻略や魔物討伐をやっておきたい。

折角だから何かクエストでも受けるかな。素材の納品でハンターギルドに貢献しているがまだクエストは受けていない。

ということでハンターギルドへと行った。


「タカシさん、いい所にいらっしゃいました」

「どうかしましたか?」

「ギルドマスターの所へおいでください」


ギルドマスターの部屋にはギルドマスターと貴族と思われる父娘と貴族の護衛の騎士一名がいた。

貴族はヤマト大国の王弟ハスト公爵と長女のジュニ嬢だ。

父親のハスト公爵は端正な顔立ちのナイスミドルという感じだ。細身だが鍛えているのがわかる。

ジュニ嬢十代後半だが身長は160cmぐらい、スタイルがよく長い黒髪を持つ知的美人という感じだ。

彼らから私に依頼があるらしい。


「魔力暴走ですか?」

「娘の魔力は1年前から急激に増大して喜んでいたのだが本人の制御の範囲を超えてしまった」

「体内の魔力をコントロールできないという事ですか?」

「魔力を吸い出す魔道具で体内の魔力を減らしているのだがすでに30個の魔道具が多い魔力に耐え切れずに壊れてしまった」

「魔力暴走が起きるとどうなるのですか?命を失ったり魔人になったり?」

「それについては私が説明しよう」

「ギルドマスター」

「今までのケースでは魔力が増大して制御できないと魔物になってしまっているようだ」

「魔物ですか?魔人ではなく」

「魔人というのがどのようなものを言うのかわからないが魔物だ。人型の魔物だから魔人なのかな?我々は『鬼』と呼んでいる。自我を失い鬼となる。当然ハンターによる討伐対象となる」

「今までにも同じようなケースはあるのですか?」

「ああ、世界中で年に1、2件の報告がある」

「ゴブリンやオーガなどとは異なるのですよね」

「確かにゴブリンは小鬼、オーガは大鬼だが『鬼』はこれらと異なる魔物だ」

「しかし何故私にこの話を持ってきたのですか?」

「神託だよ。神聖国にジュニの魔力暴走を止められる人物がクルボストンで一級ハンターになると神託が下りた」

「そうですか。わかりました。ジュニ嬢の魔力の流れを調べます。少々静かにしていてくださいね」


ジュニ嬢の魔力の流れを魔力の可視化で調べることになった。

もちろん報酬はある。


公爵令嬢ジュニの魔力の発生源と流れはすぐに把握できた。それを紙に描いていく。

普通は呼吸を通して魔力が取り入られる事によって魔法に使える魔力を得ている。その一方で体中の細胞内でも魔力が少しずつ作られ体内を循環する。

体内に循環という形で蓄え操作できない余分な量の魔力は体外に排出される。魔力を発生する特定の器官と蓄える器官を人類は持っていない。

持っているのは魔物だ。心臓近くに魔石をもちそこで魔力を作り蓄える。そしてそこから魔力が全身に供給される。

魔力のことはサリエンスから教わった知識なのだが。


「彼女の場合、腹部に魔力の発生源があります」

「魔物ではないのだからそんなはずがない」

「いいえ事実です。彼女には魔石はありませんが特定の魔力の発生源は存在しています」

「そんな。で、なんとかならないのか?」

「ええ、まだ原因はわかりませんが私の魔力操作で応急処置はできそうです」

「魔力操作では他人の体の中の魔力まで干渉できないだろう」

「え、できますよ」

「え、」

「おかしい?のかな」

「「「「え、ええええええーえ」」」」


この世界の常識では魔力操作は自分の体内だけが対象らしい。体内に持つことのできる魔力の最大量が操作できる魔力量だ。

彼女の場合は体内に何故か操作できる魔力量を上回る魔力が存在してうまく体外に放出もできない。

しかし私は容易に周囲の魔力なら生物の体内外問わずに操作できた。それも体内にある魔力の10倍以上の魔力を操作できた。

だから私への魔法攻撃を無効化することも可能だ。まだ自動ではできないのだが。

体内に発生源があるためジュニ嬢の体内魔力はこの世界でも魔力の多いとされる大魔導士の10倍以上はありそうだ。

まあ私はジュニ嬢の20倍の魔力を体内に持ち制御・操作できている。更に空気中や地中や水中の魔力も体内に取り込まなくても利用できる。

さて、制御できない魔力を増やさないためにジュニ嬢の魔力の発生源をどうにかできないかということだが・・・。


結果としてジュニ嬢の魔力の発生源をどうにかできなかった。

仕方がないので急遽魔力がジュニ嬢の体内で暴走しないようにする腕輪型の魔道具を作った。

この魔道具は魔力をスムーズに体外には放出させるための物だ。

以前に壊れてしまった魔道具は魔力を吸う魔道具だった。しかし魔道具自体の魔力に対する強度が弱かったために壊れたらしい。

魔道具が吸った魔力をを魔道具内に蓄えて利用しようとしたのが裏目に出たようだ。悪い事に蓄えることのできる魔力の量が少なすぎた。

腕輪型の魔道具はすぐに装着して稼働させることができた。これで一安心だ。

ジュニ嬢の体内の魔力も私の操作で吸い出しておいた。

考えてみると私は彼女の体内の20倍以上の魔力を自由に制御している訳だ。

彼女にも大量の魔力を制御する能力を身につけさせれば問題が解決するのではないか?

ただ大量の魔力制御操作を身につけるという事は口で言うほど簡単ではない。他のこと同様に才能と訓練次第なのだが。

彼女の場合は才能に関しては現段階では不明だ。どちらにしろ元々操作できる魔力を増やすのは大変だ。さらにそれを制御するわけだから・・・・。

私は初めから魔力を制御できていた。地球では無意識に制御していたようだ。もしかして私は魔力制御の天才かな!?

サリエンスも初めての訓練で簡単に魔力を操作している私を見て固まっていた。

さらに問題はジュニ嬢の体内から発生する魔力が今も増えつつあるということだ。毎日増える量以上に制御できる魔力量を増やさなければならない。

これからも継続してジュニ嬢の状態を見て魔力を制御する訓練を行う必要がありそうだ。


「という事ならタカシさんの屋敷に彼女と護衛の騎士クズハに住んでもらおうと思うのだけどどうかな」

「ギルドマスター!それは無理ですよ」

「私は問題ありません」

「父親としてもタカシさんに頼みたい」

「いやいやいや、年頃の娘をよくわからない男性の家に住まわせるなんて問題ありでしょう」

「父親として認める」

「不束者ですがよろしくお願いします」

「お嬢様をお願いします。側近としてお世話になります」

「挨拶がおかしくなっていませんか?却下ですよ」

「いや、もうこれは決定事項だ」


年頃の女性が自宅を出て男性と一緒に住むってまずいよね。私の自由もなくなりそうだ。色々とばれそうだ。

因みに公爵令嬢の護衛は女騎士だった。鑑定をしていなかったので気がつかなった。

イケメンのリア充騎士だと思っていたよ。まさか『くっころ』の方とは・・・・。


決定事項は覆ることはなかった。今の屋敷はハンターギルドから無償貸与されている物だったしね。

ハンターギルドに出来上がっていた魔法の鞄を預けた。購入予約者への販売はギルドで手数料無料でやってくれることになった。

街の運営はハンターギルドが担っている。この街は街の運営のために消費税を取っているがこれも免除された。

これらのことは今回の公爵令嬢の問題解決に対してのギルドからの独自の報酬代わりという事だ。

何か騙されているような感じもするが計算を見せてもらったがかなり大きな報酬だった。

公爵からも謝礼として金貨1000枚をもらった。現金・・・・これは嬉しい。これだけあればこちらの世界でいろいろできそうだ。

因みに金貨1枚はこの世界の共通貨幣価値で1000エンだ。だから謝礼は100万エンという訳だ。

さらに令嬢らの滞在費として月に10万エンが私に支払われる。彼女たちの日用品代と食費と家賃だという。ギルドからは執事3名とメイド6名と料理人3名と庭師兼警備3名が派遣されることになった。

派遣する15名の給与はギルドが支払ってくれるらしい。屋敷は使用人付き無償貸与になったようだ。ギルドから派遣された15名は全員がハンターの資格を持ち戦闘も可能だった。

令嬢らが入ってくるのは明日の昼前だ。使用人は今日の夕方と明日の朝にやってくる。

夕方から様々な生活必需品が運び込まれてくるらしい。


時間を無駄にはしたくないので私はダンジョンに行って魔物討伐に精を出した。素材を少しでも集めておきたい。

色々と作ってみたいものがある。武器も含めた魔道具を作ってみたい。だから特に鉱石を手に入れたい。

7階層と8階層に様々な鉱石が採掘できる場所があるということでそこを目指した。

6階層ではギルドで得た情報通りオークとミノタウロスが出てきた。ミノタウロスは皮膚が堅かったが聖光剣で簡単に切ることができた。

6階層は洞窟だ。それもすごく幅30m高さ20mはある洞窟だった。20体ぐらいのミノタウロスなら聖光剣や聖光刀で難なく倒すことができた。

さらに聖光を纏った手刀でも倒すことができるようになった。これってすごく便利だなあ。


7階層にはオークとミノタウロスに加えてロックゴーレムが出現した。これもギルドからの情報通りだった。

魔物をサクサク倒しながら採掘場所へと行く・・・・はずだったが。

ロックゴーレムは固かった。聖光剣や聖光刀で切れるがそれだけでは倒せていない。

HLショットで穴は開くがまだ動いている。さらに時間が経つと再生する。ハンターギルドでの模擬戦の時に倒したゴーレムとは違うようだ。

ハンターギルドでの模擬戦の時のゴーレムやロボットは頭部に制御機能があり材質は硬質の樹脂だった。

改めてロックゴーレムを観察してみる。魔力の流れから魔石の位置を探る。魔石は体の中心に大きい物があるがそれ以外にもいくつかある。

こいつ節足動物か!全ての魔石を破壊しないと動きは止まらないという事か。通りでギルドで手に入れた資料にロックゴーレムは細かく叩き潰せと書いてあったわけだ。

聖光剣や聖光刀で微塵切りにするか?・・・・いやもしかしたら。


「収納」


腕輪の無限収納をゴーレムの内部の魔石に使ってみた。最近は訓練によって50m以内の物は収納できるようになった。

しかし魔物の中の魔石を収納できるのだろうか?とも考えたが・・・。

それは杞憂だった。ロックゴーレムは崩れ消えていった。数種類の金属や鉱物の塊を残して。

因みに収納に回収した魔石は消えていない。収納から外に出しても消えることはなかった。

後から知ったが収納魔法を使える他の人たちはロックゴーレムの中の魔石を収納できなかったらしい。

過去にも試した収納魔法使いがいたようだ。収納魔法が使える人自体は少ないので記録や論文もあまりないのが実態でらしい。

私は収納魔法でも腕輪の収納であっても魔物の体内から魔石を回収できた。ただロックゴーレムより強い魔物に対しても有効なのかはわからない。

私の収納魔法や腕輪の収納は特別なようだ。動物の体内から何かを取り出すのはまだこれから試すしかないようだ。


ロックゴーレムは良質の魔石や金属や鉱物の塊を得られる美味しい獲物だった。只得られる金属や鉱物の塊はランダムに出現した。

小さな金塊やダイヤモンドなどが出てくることもあった。しかし目的とする金属を得るには採掘場所に向かう方が効率がよさそうだ。


採掘には採掘道具が必要だ。

採掘のためにツルハシの魔道具をサリエンスからもらっている。これがないと採掘も大変らしい。

今回はチタンとニッケルとクロムと銅と鉄の鉱石を中心に採掘を行った。ここで採掘できる鉱石は特定の金属の含有率が80%以上というものがざらにあった。

チタン鉱石では最高87%、クロム鉱石最高82%、銅鉱石最高90%。

鉄鉱石には含有率96%というものもあった。ほとんど鉄のインゴットだよね。この場合残りの4%がケイ素だった。

どんな構造をしている鉱石なのか?ダンジョンは不思議世界だ。


今回のダンジョンでの採掘も無事に終わった。行ったのは7階層までだったけど結果として魔道具のお陰で難なく鉱石を採掘することができた。

採掘を行っているうちに能力に採掘が現れた。これからさらに採掘が楽になりそうだ。

さらに帰って錬金で鉱石から様々な金属のインゴットをつくり、そこから武器などを作ってみた。

錬金炉と呼ばれる魔道具はサリエンスからもらっている。この炉に鉱石を入れて魔力を注ぐと最も含有率の多い金属のインゴットが作られる。

当然金属を取り出した残りもでてくる。この残りを錬金炉に入れればその中で最も含有率の多い金属のインゴットが得られる。

最後は金属の含まない物質が残る。主にケイ素やゲルマニウムや硫黄の混合物が得られた。

この混合物も精製炉を使えば物質ごとに単体は得られるが今回はおこわなかった。

錬金炉は『炉』という名前が付いてはいるが近くにいても熱くもないし強い光を発する訳でもかった。

一方鍛冶の作業では魔力を注ぐと高温を発する鍛冶炉を使いインゴットを熱し、魔力を込めて鍛冶槌で打たないとできない。

ハンターギルドから貸与された屋敷の地下には何種類もの工房があり鍛冶ができる工房もあった。

私は使いそうにないが何種類かの剣や刀を作ってみた。ナイフは使うことがありそうだから用意しておこう。防具や鍋なども作ってみた。

今回作った鍋は錬金用の鍋だ。各種の薬などを作るために作ってみた。

作る薬によって使う金属が異なってくる。チタン鍋、鉄クロム鍋、銅鍋。合金は合成炉で作った。

剣や刀だと5回も鍛冶槌で打てばできるが鍋だと20回程度鍛冶槌で打たないとできなかった。

合成炉や鍛冶炉も鍛冶槌も金床も魔道具だ。

武器などを作ったことで能力の鍛冶適正が鍛冶になった。

能力に鍛冶を持つことによってより高品質の武器や防具や鍋なども作ることができるようになった。

鑑定をしたら能力に鍛冶を持つ前の製品は『普通』だったのに能力を得た後の製品は『超高品質』だった。

『普通』製品はどこかで売却するかな。

作った『超高品質』鍋で各種の薬などを作ったが本当にいい鍋を作ることができたようで作った薬も本来用意した素材からできる薬より高ランクの物になった。

『超高品質』っていう事はこういう事か。

勢いで作った『超高品質』の剣と刀と防具はどうしようかな?世間に出していいものか思案どころだ。

調理用の鍋も作ったので屋敷の料理人に使ってもらうつもりだ。調節したら『高品質』に品質を落とした鍋も作れた。

『超高品質』の製品を市場に出すのはまずいけど『高品質』や『普通』の製品ならいいだろう。安定した収入を得れそうな手段を確保して喜んでしまった。


夕方からは使用人が引っ越して来たり生活用品が運び込まれたりした。

夕食は今日引っ越してきてくれた料理人のニコが作ってくれるという。彼女は最近になって見習いから昇格したばかりだという。


「ご、ご主人様。なんですかこの鍋は!」

「こんな鍋じゃダメかな?私が作ったのだが」

「駄目ではありません。こんな高品質で高価な鍋を見たことがありません」

「そうなの?」

「王宮でもこのような高品質な鍋は使われていないと思います。私は料理器具と食材に関しては簡易鑑定が出来ますから確かです」


おおー、料理人独自の能力か。

ニコが持ってきていた鍋はギルドが用意してくれたものでそこそこの物だという話だったが『低品質(良)』だった。

一度この世界で使われている物を見てきた方がいいようだ。

私が提供した調理器具を使って夕食を作ってもらった。ニコの腕前はなかなかだ。美味しい夕食にありつけた。

ニコに言わせる調理器具がよかったらしい。調理器具でそんなに味が変わるのかな?

お読みいただきありがとうございました。


ご意見や感想をいただければ幸いです。


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次話は貴族との付き合いです。





自転車で行く異世界旅 https://ncode.syosetu.com/n9098fx/もよろしくお願いします。


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