5.現実世界の厄介ごと
うーん、話が暴走しています。
タブレットのバッテリーが!
「おはようございます」
昨日とは違う職場だ。月水木は昨日勤務していた研究機関、火土は知り合いの喫茶店に勤務している。
まあ、この喫茶店はかなり暇だ。ただ常連客はそれなりにいる。むしろ初めての客というのは滅多に来ない。
朝7時から9時まではモーニングタイム。自家製パンでのモーニングセット。
パン、卵焼き、野菜サラダ、焼いたハムかベーコン、カップスープと飲み物で350円。これでも人件費を入れて元が取れるのかかなり疑問だ。
9時から1時間休憩。11時から14時がランチタイム。
日替わりランチが500円。税込みだよ。パン・パスタ・スープ・ピザパイ・サラダ・一口ステーキ・デザート・飲み物。
ステーキは日によってチキン・ビーフ・ポーク・フィッシュ・ハンバーグ。ビーフの時は超ミニサイズの一口だ。
17時から20時までディナータイム。日替わりディナー800円。
前菜・パン・2種のパスタ・スープ・2種のピザパイ・サラダ・肉料理か魚料理の選択・デザート・飲み物。
そして21時に閉店。
ここの店はアルコール類は出さない。飲み物はオリジナルコーヒー・カフェオレ・ココア・紅茶・ハーブティー・抹茶ラテだけだ。
勿論ホットとアイスがある。モーニングタイム・ランチタイム・ディナータイム以外で出す食事はオリジナルサンドイッチだけしかない。
私は6時半から21時半まで働く。途中休憩もあるが客は少なく知っている人たちしかいないので暇だ。
「タカシさん若返りましたね」
「そうですか?」
「ええ。若々しいですよ」
「ありがとうございます」
「あ、包丁を研いでくれませんか。トマトがうまく切れなくなってきて・・・」
「わかりました」
刃物を研ぐのは得意だ。主にメスとハサミだが。
実験器具の手入れは大事だから昔からやっている。
最近は使い捨てが多くなったのはそれはそれでいいとは思うのだが・・・。
しゅっ、しゅっ、しゅっ、しゅっ・・・・。
包丁を研いでいく。10分ほどで店にある7本の包丁を全て研いだ。
本当は真夜中に研ぐ方が好きだしきれいに研げるのだが・・・・。
いつもより早いが出来はいつもよりいいぞ。これも能力の賜物?
鑑定解析をしたら上等な研ぎだとわかった。さらに包丁の材質が魔鉄鋼に変化している。
大丈夫なのか心配したらこの世界では分析してもステンレスというふうにしか結果が出ないらしいと鑑定が教えてくれた。安心したよ。
勿論店長や他のスタッフにも私の研いだ包丁はいつも以上に好評だった。
この店のオーナー店長は私の研究所での上司であるサオリお嬢さんの妹だ。彼女はカオリさん。サオリさんとは10歳も違う。
そして彼女も独身だ。見た目は20代後半というところで若々しいが姉の影響かアンチエイジングに嵌っている。
だからこの店のサラダは健康というよりアンチエイジングに重点を置いた食材を使っている。
カラン、カラン、カラン。
「いらっしぃませ」
珍しく常連でない客が入って来た。時刻は15時だ。
直前に私は厨房でランチの片付けとディナーの用意をすると言って裏に引っ込んだ。
この客がやって来ることが判ったからの行動だ。
以前、研究内容を狙った産業スパイに拉致されそうになったことの教訓だ。
客は二人。中年の男性と若い女性だ。
「コーヒーとカフェオレ、それとサンドウィッチを2つ」
「かしこまりました」
コーヒーとカフェオレはカウンターで作れる。
サンドウィッチは厨房で作る。つまり今は私が作るわけだ。
「このサンドウィッチを作った人に会いたいのだが」
「何か粗相がありましたか?」
「おいしいので会ってみたいのだが」
「申し訳ありません。作った者は先程帰りました」
以前の事件を知っている店長が客に答えてくれた。
しかし、物陰から様子を覗っていた私の体に何かが撃ち込まれたのを感じた。
慌てて裏口から出て転移で帰宅した。
咄嗟で二人の客の鑑定はできなかった。ただ何からしらの能力者だと感じた。
自宅についたところで自分の身体を確認するとマーカーのような物が付けられていた。
急いでマーカーのようなものを結界で覆い収納に入れておく。これで大丈夫かな?
しかし自宅の位置が知られてしまった可能性が高い。一回関係ない所に転移するべきだったと反省する。
しばらく経って店長から電話があった。二人の客は店を出て行ったという事だ。
私も気配察知でそのことは把握している。私はマーカーなどを撃ち込まなくても特定の対象物の追跡ができる。
二人の客はそのまま駅に向かい、そこから都心へと帰って行った。
まあ、一安心というところか。自宅・・・知られていないよね。
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私は魔法関係の国際組織の調査官だ。
地球にも魔法はある。日本では陰陽師が代表的な存在だ。
魔物はいる。妖がそれだ。鬼というものもいるね。
国際組織は各国の政府機関と繋がりを持っている。しかし各国ともこの組織の存在を一般国民には知らせていない。
数日前に高尾山付近で強い魔力を観測された。探知探索系の能力を持つ私が急遽派遣された。
しかし自然現象なのか強い魔力を持つ人物がいるのか原因はわからなかった。
そして翌日早朝、強い魔力が八王子市南部から富士山西麓へと移動していくのが観測された。
さらに富士山西麓で強力な魔法も使われたようだ。強い魔力は八王子市南部に戻って消えたようだ。
魔法が使われた現場を探して富士山西麓に行っているときに再び八王子市西麓で魔力が観測された。しかしそれは短時間だった。
そして、とある研究機関に魔力を帯びた物質があるのも判った。ただその研究機関には入ることが出来なそうだ。
翌日、つまり今日の早朝も魔力を観測した。移動して魔法を使って戻って。その後魔力の使用も観測されたが昨日の研究機関からは離れている。
八王子市南部に魔力の強い人物がいるのは確かなようだ。八王子市南部を歩いてみればその人物を探せるだろう。
そう考え、私より年上の部下と歩いていると魔剣の存在を感知した。
魔剣は魔力を帯びた剣だ。但し今回はえらく短い。そして複数ある。まるでキッチンにある包丁のような・・・・。
魔剣のあるのは・・・・そこの喫茶店だ。忙しくて昼食を食べ損ねたし何か食べるか。
そう思ったけどメニューが少ない。この時間食べられるのはサンドウィッチだけか。。
部下と二人で注文したのはコーヒーとカフェオレとサンドウィッチ2つ。
しかしこんな感じでこの喫茶店は大丈夫なのか?
そんな考えもサンドウィッチが運ばれてきたところで消し飛んだ。
このサンドウィッチを調理した人物が目的に人物だ。
調理した人物を呼んで欲しいと頼んだが帰ったと言われた。
厨房からこちらを覗っている人物だろうに。
ならばここは穏便にその人物にマーカーを撃ち込んでおこう。よし手ごたえあり。
あれいつの間にか店からいなくなった。1kmも離れた所にまた出現。ここを登録。あ、マーカーの反応が消えた。なぜ?
あのマーカーに気が付ける人間がいるはずがない。外せるはずがない。混乱しているが空腹に気がつきサンドウィッチを食べた。
ほっとする、サンドウィッチは美味しかった。凄く癒され体力が回復してきた。まるで回復の魔法薬のような、いやそれ以上だ・・・。
魔法薬なんて高価で手に入らない。私も飲んだのは1回だけ。作れる人がほとんどいないのだから当たり前だ。
混乱しながら喫茶店を後にした。まあいい。どこに行ったかは把握している。明日訪ねてみよう。訊ねるのはそれなりに準備をしてからの方がいいだろう。
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二人の客の動向を注視しながら喫茶店に戻った。
店長は何も訊ねない。厄介ごとに巻き込まれていることを把握してくれているようだ。
色々と最先端の研究をしているこのような事に巻き込まれることも理解してくれている。
仕事が終わって就寝して異世界へ。
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次話は魔力暴走です。
自転車で行く異世界旅 https://ncode.syosetu.com/n9098fx/もよろしくお願いします。